10/24、井上尚弥の次戦発表。
12/24(火)とされるこの「今年最後の井上尚弥」は、その対戦相手、試合内容よりも、もしかすると勝利者インタビュー、そこに至る道程での発言にこそ、注目されるのかもしれません。
10/21のニュースで、井上尚弥は中谷潤人に言及。
これはWOWOW収録後のインタビューであり、11/4(月)に放映される自身の試合での本人解説をした後の取材のようです。
井上尚弥vs中谷潤人、この夢のような一戦は、もう現実的なところまで迫っています。
ということで今回のブログはこのドリームマッチについて。
井上尚弥
常に圧倒的なパフォーマンスで相手を倒してきた井上尚弥、改めて28勝(25KO)無敗、しかもその28戦のうち23戦が世界タイトルマッチで、つまりは世界タイトルマッチ23連勝です。
デビューわずか6戦目で世界タイトルを獲得、初防衛戦は手こずりながらも11RTKO。もし時代が時代なら、このまま無理な減量を続けて疲弊しながらもタイトルを防衛していたかと思うと、日本史上最強のボクサーにとっては生まれる時代も重要だったのかもしれません。
まさかの2階級を上げて、さらに初戦が世界戦というマッチメイク、そして相手はオマール・ナルバエス。この戦いは井上尚弥が世界に衝撃を与えた初めての戦いであり、今もまだ、語り草です。
鮮烈なスーパーフライ級デビューを飾った井上でしたが、故障と戦いながらのスーパーフライ級の戦いは、好敵手に恵まれず。一時期ローマン・ゴンサレスとの対戦が噂されるも、ロマゴンは破れてしまい実現せず。故障することがなくなると今度はライバルが不在、減量の限界もありバンタム級へ。
バンタム級ではジェイミー・マクドネルから王座を奪い、初防衛戦がWBSSトーナメント初戦となり、神がかり的なワンツーでファン・カルロス・パヤノを秒殺。
続くエマニュエル・ロドリゲス戦での鮮烈KO、タフネス、インテリジェンス、ハートの強さ等諸々を世界に見せつけたノニト・ドネア戦を経て、いよいよ世界のスターダムにのしあがりました。
その後、バンタム級で世界初の4団体統一を果たした井上は、スーパーバンタム級へ転級。当時階級最強と謳われたスティーブン・フルトンに何もさせずに8RTKO勝利、その後ユニファイド王者、マーロン・タパレスを10RTKOで降して4つのタイトルをこれまでに2度防衛、今に至ります。
中谷潤人
B級でプロデビューし、たった6戦目で世界タイトルに挑戦。階段を3段飛ばし、4段飛ばしでキャリアを築いた井上とは異なり、中谷はC級デビューです。
中学時代にU-15で実績を残した中谷は、中学卒業後、プロボクサーになるためにアメリカでトレーニング。2015年、17歳で日本でプロデビュー、翌年の新人王トーナメントにエントリーしてこれに優勝。この時の西軍代表が矢吹正道であり、この全日本新人王決勝は非常に注目度が高いものでした。
全日本新人王を獲得した中谷潤人は、翌年に新設された日本ユース王座のトーナメントに参加、決勝でユーリ阿久井政悟を破って優勝。この時、中谷はオッズで若干のアンダードッグではなかったか。
その翌年には日本フライ級挑戦者決定戦で勝利して挑戦権を獲得すると、翌年の王座決定戦に勝利して日本タイトルを戴冠。このタイトルはすぐさま返上し、元世界王者であるミラン・メリンドを降してWBO世界フライ級王座決定戦へと出場します。
1段ずつ、階段を駆け上がるようなマッチメイクです。
コロナ禍が降りかかる中でも、彼のキャリアが思った以上には停滞しなかったことは素晴らしい。日本のボクシング界がこの頃から中谷に期待していたことは十分にわかります。
このフライ級王座はアンヘル・アコスタを相手にアメリカでも防衛、返上後は一戦挟んでからアメリカのリングでアンドリュー・マロニーを衝撃的なノックアウトで破り、WBO世界スーパーフライ級王座を戴冠。
このマロニー戦こそが中谷の転機であり、広く世界中に「Nakatani」の名を知らしめることになりました。
最終12R、中谷の放った左のオーバーハンドは、カウンターとなりマロニーに着弾。崩れ落ちるマロニー、このBrutalと呼ばれるノックアウトパンチは、各媒体でその年のKOオブザイヤーに選出されています。
このスーパーフライ級のタイトルを1度防衛した後に返上、3階級目はダイレクトで世界タイトルマッチ。ノニト・ドネアを攻略して名をあげたアレハンドロ・サンティアゴをノックアウトしてこのタイトルを獲得すると、初防衛戦ではギジェルモ・リゴンドーに勝利した経験のあるビンセント・アストロラビオをまたも衝撃的なワンパンチKO。前戦ではペッチ・ソー・チットパッタナをまたも印象的なノックアウトで退けています。
物語の主人公は
井上尚弥は、「日本のボクシング」という歴史の主人公なのかもしれません。
彼の父、井上慎吾のボクシングは、基本を非常に大切にし、それを高い領域までブラッシュアップしたものだと感じます。井上尚弥がやっていることは、フェイントをかけてジャブを突いて、ジャブが当たったら右ストレートを当てて倒す、至極真っ当でオーセンティックなボクシングです。
その基本に忠実な中でも(当時)「最速で世界タイトルを獲得」、日本人初の「4団体統一王者」などといった日本人が好む「記録」も手にしています。
日本のボクシング界が脈々と受け継いできたボクシングの美しさ、そしてファンが誇れることがそこにあると思います。
フェイントで崩し、ジャブで当て(距離を測り)、大砲で倒す。基本の中の基本を徹底してやり抜く中で愕然とするパフォーマンスをするこのボクシングは、非常に几帳面で、段階を追って教えていく日本のボクシングそのものである、と言えるかもしれません。
そして中谷潤人は、「ボクシング」というドラマの主人公なのかもしれません。
4回戦でデビュー、新人王からユースタイトルを取って日本王者、元世界王者を倒して世界タイトルを獲得する、そして世界にインパクトを与える。中谷の道のりは、一つ一つ階段を登り、強い敵を倒したらさらに強い敵が現れる、という、ジャンプ漫画のような世界観。
この構図こそが日本が世界に誇る「Manga」の構図そのものであり、そこにかつて少年だったオジサンたちも夢を見れる。
彼が頻繁にアメリカで学んでくるように、世界は以前よりも物理的に近くにあります。そのエッセンスを取り入れ、「自分にしかできないボクシング」を己のために磨き続ける中谷潤人というボクサーは、ある意味でマイペースであり、「個」を尊重したボクシングと言えるのではないでしょうか。
覚悟を決める
この2人の主人公が戦うのは、悟空とルフィが戦うようなものです。
どちらもその物語を背負っており、間違いなく私たちに夢を見せてくれる主人公。
本来交わるはずのない二つの世界が交わる、そして勝敗がついてしまう、そんな戦いです。
そしてこの戦いが世界的に注目を集めるほど、今の中谷潤人の活躍は目覚ましい。
待ちに待って現れた井上尚弥のライバルは、あろうことかいつしか「ネクストモンスター」と呼ばれるようになった日本人です。
この戦いを「見たいような見たくないような」と思ってしまう私は、まだボクシングの本質を理解していないのでしょう。ボクシングは、夢の潰し合いです。
だからこそ、この試合が決まるのを期待すること、この試合を楽しみにすること、この試合自体を楽しんでみること、これには覚悟が必要です。
戦えば、決着がつきます。
どちらにも、絶対王者でいてほしい。それでもおそらく、この戦いは避けられません。そして、この戦いを阻むものは今のところ、ありません。
2025年
この戦いがスーパーバンタムで起こるのか、フェザーで起こるのか、それはわかりません。ただ、2025年の後半、スーパーバンタム級での戦いということが、おそらく最も早く、そして最も納得性の高いものでしょう。
2025年、井上尚弥がラスベガスで防衛をしたのち。
2025年、中谷潤人がバンタム級で王座統一を成し遂げたのち。
個人的には9月ではやや早い、と思っているから、年末が良いと思う。
少なくとも、この試合が締結する可能性がある、その事実だけで、2025年は生きられそうです。
そしてこの試合は、おそらく2025年、世界で最大の注目を集めるスーパーファイトとなり得、その先にこそP4Pキングはいるべきだと思うのです。
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