先週のロマチェンコvsロペスというビッグマッチを経て、この秋のボクシング興行は盛り上がりを見せています。
↓ロマチェンコvsロペスの観戦記!
そして今週末は、あの「スーパーフライ」興行の系譜といってもいい、DAZN興行です。
今回のブログでは、今週末の注目試合を書いていきたいと思います。
まずは海外編です。
10/23(日本時間10/24)メキシコ
WBC世界スーパーフライ級タイトルマッチ
ファン・フランシス・エストラーダ(メキシコ)43戦40勝(27KO)3敗
vs
カルロス・クアドラス(メキシコ)43戦39勝(27KO)3敗1分
エストラーダとクアドラスは再戦となります。前回は2017年9月9日で、このWBC王座をローマン・ゴンサレスに追われたクアドラスと、フライ級を制したのちに階級を上げてきたエストラーダのサバイバルマッチでした。
ここは僅差の判定でエストラーダに凱歌が上がりますが、これはどちらが勝っていてもおかしくはありませんでした。
メキシコ出身の両者の経歴は似ており、デビューはともに2008年。
エストラーダはデビュー19戦目でのちの世界王者であるファン・カルロス・サンチェス(メキシコ)に初黒星を喫しますが、その後は連勝して2012年にローマン・ゴンサレスの持つWBA世界ライトフライ級王座へアタック。ここでは当時無敵のロマゴンに敵わず、判定負けを喫します。
しかし次戦では1階級上のWBAスーパー・WBO世界統一フライ級王者、ブライアン・ビロリア(アメリカ)に挑戦し、殊勲の勝利を上げて初戴冠。初めての世界王座で、いきなり2冠王者となりました。
その後この王座を5度防衛後に返上、スーパーフライ級で数戦したのち、先に述べたクアドラス戦をクリアし、WBC世界スーパーフライ級王者、シーサケット・ソールンビサイに挑戦しますが敗退。このシーサケットは、ロマゴンから同タイトルを奪い(ロマゴンは初黒星)、再戦では痛烈なKO勝利を上げていました。
エストラーダはロマゴン、ビロリア、シーサケットと本当に評価が高く、実力のある王者たちに挑んでいる、非常に侠気のあるボクサーです。
シーサケットにはフェリペ・オルクタ(メキシコ)との挑戦者決定戦を経て再挑戦して雪辱、見事WBC世界スーパーフライ級王者となって2階級制覇。
初防衛戦は2019年8月のことで、1年以上試合から遠ざかっており、確か夏頃にはコロナで陽性になっていたかと思います。ブランク明けの一戦となる、今回のパフォーマンスはどうか。
そしてカルロス・クアドラスは、帝拳が共同プロモーターだったで、日本でもおなじみ。アマで結果を残し、エストラーダと同じく2008年にプロデビュー。
地域タイトルをコレクトし、2014年に世界初挑戦。争ったのは今回挑戦するこのWBCのスーパーフライ級王座、そして相手はシーサケット・ソールンビサイでした。
ここで8R負傷判定ながら王座を獲得、暫定王者の江藤光喜(白井・具志堅スポーツ=当時)との団体内統一戦を含め、6度の防衛に成功しました。
そして7度目の防衛戦の相手は、当時PFP最強と目されていたローマン・ゴンサレス。ロマゴンの4階級制覇を阻む事ができず、惜しくも判定負け。
その後ダビ・カルモナ(メキシコ)に勝利して再起しましたが、エストラーダ、マクウィリアムズ・アローヨ(プエルトリコ)相手に連敗。
その後は3連勝で今回のチャンスを掴みましたが、この3戦は調整試合の域を出ません。
前戦は2019年9月ということで、やはり1年以上のブランクがあります。
今回クアドラスは一度目のPCR検査でコロナ陽性と出てしまいましたが、何かの間違いだということで再検査を要請、2度目の検査では陰性となり無事に興行に出場できそうです。
これは絶対に良い試合になるマッチメイク。もう3年前になりますか、両者が戦った時はクアドラスがエストラーダをアウトボックスしそうな展開でしたが、エストラーダは中盤から終盤にかけて追い上げ、10Rにはダウンを奪います。
チャンピオンシップラウンドはともに打ち合い、甲乙つけがたいラウンドで、結局はダウンポイントが響いて三者ともに114-113という僅差判定でエストラーダに凱歌があがりました。
ここ数戦の出来をみればエストラーダ優位でしょう。エストラーダはシーサケットに勝ったことでPFPランクのトップ10にも入っており、このスーパーフライ級最強の称号を得ています。
対するクアドラス、復活なるか。
そして勝者はセミファイナルに登場するロマゴンと再戦か??大変に興味深い一戦です。
セミファイナル
WBAスーパー世界スーパーフライ級タイトルマッチ
ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)51戦49勝(41KO)2敗
vs
イスラエル・ゴンサレス(メキシコ)28戦25勝(11KO)3敗
皆大好き、ローマン・ゴンサレス。ニックネームは「チョコラティート」ですが、日本では「ロマゴン」と略される事が多いです。
前戦は2020年の2月、WBA王者カリド・ヤファイ(イギリス)相手に素晴らしいボクシングを披露してくれました。
↓ヤファイ戦の観戦記です。
こちらも帝拳プロモーション所属、日本に愛着を持ってくれている、品行方正なロマゴンは日本でも本当に大人気。
2005年にプロデビューし、日本の誇る天才・新井田豊(横浜光)からWBA世界ミニマム級王座を奪ったのが2008年のこと。
2010年にはWBA世界ライトフライ級王座を奪取し、5度の防衛を経て返上。(5度目の防衛戦がエストラーダ戦。)
2014年に八重樫東(大橋)の持つWBC世界フライ級タイトルに挑戦し、これを奪取。
↓激闘王・八重樫東のキャリアを振り返っている記事です。
このタイトルは4度防衛のあと返上し、先に述べたカルロス・クアドラスからWBC世界スーパーフライ級王座を奪取して4階級制覇を成し遂げました。
しかし、スーパーフライ級ではサイズの不利が否めません。
初防衛戦で強打のシーサケット・ソールンビサイに物議を醸す判定敗けを喫した後、再戦では何と4RKO敗けを喫してしまいます。
王座陥落、初黒星、PFPキングからも陥落。
しかも、再起を志すも母国ニカラグアの情勢不安から、再起戦が流れたり等して2018年と2019年はそれぞれ1試合ずつしかできませんでした。
それまで、ハイペースで試合をこなしてきたロマゴンにとって、このブランクはきっと痛かったに違いありません。
それでも2020年2月、無敗の王者カリド・ヤファイに挑戦した時のロマゴンは、クアドラス戦、シーサケット戦よりもスーパーフライにフィットし、良く見えました。
試合がなくても、きっと勤勉にトレーニングを怠らなかったのでしょう。
一方のイスラエル・ゴンサレスは、前戦で来日、日本の石田匠(井岡)を破った実績のあるボクサー。世界タイトルへは3度目の挑戦です。
初挑戦はIBF王者のジェルウィン・アンカハス(フィリピン)に挑戦して10RTKO敗け。そして2度目はWBA王者のカリド・ヤファイに挑戦して判定負け。
3度目の正直なるか、というところではありますが、ここはロマゴンに力の差を見せつけて勝って貰いたいですね。
そして、エストラーダなのか、クアドラスなのか、統一戦に臨んでもらいたいです。
エストラーダ、そしてクアドラスは、全盛期と思われる頃のロマゴンと互角に渡り合った数少ないボクサーでもあります。
ロマゴンは、どちらにも苦戦していると言えます。
エストラーダにしろ、クアドラスにしろ、ここに勝てば自信を持ってロマゴンと戦えるでしょう。そしてその自信を持った状態のどちらか(どちらにしても)のボクサーを倒せば、ロマゴンの完全復活となります。
正直、恐怖を植え付けられたかもしれないシーサケットよりは相性が良い。と思っています。
「Super Fly」
ローマン・ゴンサレスをはじめ、ファン・フランシス・エストラーダ、カルロス・クアドラス、そしてシーサケット・ソールンビサイ。
この4人のライバル対決は、「ボクシングに三段論法は通用しない」ということを如実にあらわしています。
かつて80年代、「黄金の中量級」と言われ、レナード、ハーンズ、デュラン、ハグラーがしのぎを削ったあの時代のように、現代では軽量級でまさにリーグ戦さながらのライバル対決が実現しています。
軽量級であり、勿論当時の盛り上がりとは一線を画すものではありますが、我々日本人にとっては非常に馴染みのある階級であり、より身近に感じるものです。
そしてこのスーパーフライ級戦線に、井岡一翔(Ambition)、そしてその井岡と年末に対戦の噂がある田中恒成(畑中)が絡み、我が道を行くジェルウィン・アンカハス(フィリピン)やスーパーフライ級でロマゴンと対戦を希望しているというニュースの流れたノニト・ドネア(フィリピン)が更に絡んでくれると、以前から続くこのスーパーフライ級の盛り上がりがより一層輝きを増します。
これからもこの階級の行く末に目が離せません。
↓80年代中量級ウォーズについて書いた記事です。
そしてこの興行には更にもう一つの世界タイトルマッチ。
WBC世界フライ級タイトルマッチ
フリオ・セサール・マルチネス(メキシコ)18戦16勝(12KO)1敗1NC
vs
モイセス・カジェロス(メキシコ)42戦32勝(17KO)9敗1分
その攻撃力に定評のある王者、マルチネス。連打型の猛烈ファイターで、メキシコ人に非常に人気のありそうなスタイルです。
反面、ディフェンス面は甘く、対戦相手とは激闘になりつつも、最後は打ち勝ってしまう、非常にエキサイティングな王者です。
デビュー戦で黒星を喫しますが、その後は連勝。世界初挑戦ではチャーリー・エドワーズ(イギリス)相手にゴング後の加撃で無効試合となりましたが、次戦でクリストファー・ロサレス(ニカラグア)との決定戦で見事戴冠。
その後ジェイ・ハリス(イギリス)を退け、今回は二度目の防衛戦です。
本来であれば、ランキング下位のマキシミノ・フローレス(メキシコ)相手の防衛戦でしたが、フローレスのコロナ陽性反応を受け、代役であるカジェロスが出場の機会を得ました。
カジェロスは日本でもおなじみのボクサーで、2017年にWBO世界ミニマム級暫定王座を福原辰弥(本田フィットネス)と争い判定負け、2018年には同王座のチャンピオン・山中竜也(真正)に挑み8R終了TKO敗け。
前戦ではNABOフライ級王座を決定戦で獲得しているようです。
正直、マルチネスの圧勝というのが大方の予想でしょう。逆に言うと、ミニマム上がりのカジェロス相手であれば、マルチネスはストップ勝ちしなければ評価を下げてしまうくらいではないでしょうか。
マルチネスの攻撃的ボクシングのプレッシャーがカジェロスを飲み込んでいくような展開になると思います。
いよいよ盛り上がってきたDAZN!
いよいよDAZNが本格的に復活してきた感じがします。
コロナ禍に入り、なかなか目玉のカードが出なかったDAZNを解約してしまった、もしくは休会しているというボクシングファンも多いのかもしれません。
しかし、今後のDAZNは注目カード目白押しです!
10/31にはハイメ・ムンギアが登場。そして日付が変わって日本時間11/1にはオレクサンデル・ウシクvsデレック・チゾラという注目のヘビー級戦が。
更に日本時間11/8にデビン・ヘイニーvsユリオルキス・ガンボア。
他にもポヴェトキンvsホワイトの再戦や、アンソニー・ジョシュア、ダニエル・ジェイコブス等が控えるマッチルーム興行。これからのボクシング配信再燃に期待です。
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ともあれ今週末、スーパーフライ級とフライ級のタイトルマッチ!
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