アフマダリエフvs岩佐のスーパーバンタム級タイトルマッチから数日、まだ悔しさが晴れません。
あくまでも感情論ですが、あのストップは早かった。。。異論も多いとは思いますが、これが未だにひっかかる私の気持ちです。岩佐の再起を心から望みます。
さて、スーパーバンタム級。
軽量級において、屈指の激戦区。
井上尚弥(大橋)が君臨するバンタム級と比べると、現在、明らかに強豪が多いという階級でもありますね。
本日は、先日のWBAスーパー・IBF世界スーパーバンタム級タイトルマッチを経て、更に評価を得たMJ=ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)を中心として、そのMJを倒せるボクサーがいるかどうかを検証していきたいと思います。(なるべく感情論抜きで)
まずはリングマガジンのスーパーバンタム級ランキングから。
WBAスーパー・IBF王者
ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)
まずはダニエル・ローマン(アメリカ)を降し初戴冠、先日の岩佐戦は初防衛戦。世界戦たった2戦でこの評価を獲得しているアフマダリエフ。
基本的技術の高さに加え、あのパワージャブは脅威でした。スタミナモンスターのダニエル・ローマンと12R打ち合うスタミナも、フィジカルの強さも持ち、おまけにパンチングパワーも強い。
「ローマンの強さ」は非常に分かりづらいものですが、このアフマダリエフの強さは分かりやすいです。全てのスキルが非常に高いボクサーです。
では、どのように攻略するか、と問われると、やはりこのアフマダリエフの勢いに巻き込まれず、且つカウンターを決められるボクサー、というふうに思います。
アフマダリエフに対し、技術で上回る、フィジカルで上回るというのはかなりキツい。
だからこそ、岩佐には期待していたのですが。。。その狙いすましたカウンターを打つ前にストップされてしまったのは、フィジカルの差、そして技術の差、とりわけジャブの差が大きかったように思っています。
前WBAスーパー・IBF王者
ダニエル・ローマン(アメリカ)
リングマガジンの評価は高いままのローマン。旺盛な手数とスタミナ、そのエネルギッシュなファイトは日本のファンも多いですね。私も大好きなボクサーです。
久保隼(真正)からタイトルを奪い、松本亮(大橋)を防衛戦で退けましたが、その頃はまさかこんなに活躍するボクサーだとは思っていませんでした。
ただ、松本戦を現地観戦した時には、「こんなに強いボクサーだったのか」と驚いたのを覚えています。
アフマダリエフ戦も、ローマン贔屓に見ていた私にとっては、ローマンの勝ちという内容ではありました。ただ、再戦すれば勝てるというほどの差はないと思います。
どちらかというと、アフマダリエフはまだ進化の途中(プロボクシングへのフィッティングという意味で)のようにも思え、ローマンは完成した状態での一戦で、アフマダリエフの僅差判定勝利。
再戦は、ともすれば差は開いているのかもしれません。
WBO王者
ステファン・フルトン(アメリカ)
手足の速いボクサータイプかと思っていたフルトン。しかし戴冠戦では近接戦闘のスペシャリストと思っていたアンジェロ・レオ(アメリカ)を接近戦で翻弄、なめらかなボディムーブから素晴らしいアッパーを何度もヒットし、結局レオは何もできず終い。
このボクサーはややパワーレスながらスピード、パンチをもらわないディフェンス、離れてもくっついても戦える万能型ではあります。
アフマダリエフと闘うとすれば、近接戦闘は挑まない方が良いと思いますが、あとはスピードでかきまわせるかが鍵となりそうです。
ただ、アマ300戦、ウズベキスタンの至宝と言われるアフマダリエフ。アマボクシングはプロボクシングよりも速く、それに適応していたはずのアフマダリエフは、負けづらい、捕まりにくいフルトンすらも捕まえてしまうのではないでしょうか。
前IBF暫定王者
岩佐亮佑(セレス)
対アフマダリエフと考えると、実際のところは全てにおいて上回られた印象が強いです。スピード、パワー、テクニック、ストラテジー。
後半勝負にかけた岩佐の戦法は間違っていなかったと思いますし、「前半をできれば互角で折り返したい」との戦前の言があるように、前半のアフマダリエフの強さはしっかりと研究していたはずでした。
しかし、終わってみれば5RTKO負けという結果。
初回、速いジャブで調子良く見えましたが、その後4Rにようやくカウンターを当てるまで、アフマダリエフのスピードについていけず、かなりの数のジャブをもらってしまいました。
ジャブで刺し負けないようにしなければ、もし再戦しなければ結果は見えている、のかもしれません。
WBAレギュラー王者
ブランドン・フィゲロア(アメリカ)
長身ファイター、フィゲロア。一時期、非常に評価の高かったフィゲロアですが、フリオ・セハ戦(体重超過したセハとドロー)、前戦のダミアン・バスケス戦では評価を落とす内容でした。
長身、スイッチヒッターのアグレッシブな王者ですが、ディフェンス面に大きな課題のある激闘型。まだ24歳と若いですが、このボクシングを続けていく限り、さほど選手生命は長くありません。
ハンサムなルックスと、エキサイティングなファイティングスタイルから、人気は出そうですが、対アフマダリエフとなると上回っている部分がない、と感じます。
前WBO王者
アンジェロ・レオ(アメリカ)
前戦、フルトンに良いところなく敗れてしまったレオ。ただ、このノンストップ連打はアフマダリエフを大いに苦しめたダニエル・ローマンに通じるところもあります。
戴冠戦のトラメイン・ウィリアムス戦では、レオの良いところばかりが出た試合だった分、強さが際立ちました。
しかし、フルトン戦では自分のボクシングが貫徹できず、ただただ手数を出すだけのボクサーというふうにも見えました。
ただ、対フルトンよりも対アフマダリエフの方が、レオにとっては闘いやすいかもしれません。
それでも、接近戦での技術的なところを磨き、よりパワーをつけなければ、アフマダリエフには敵わないでしょう。
勅使河原弘晶(三迫)
岩佐が敗れてしまった今、このスーパーバンタム級を背負って立つ日本人ボクサーはこの勅使河原しかいません。まだ世界王者になっていない段階で、リングマガジンランキング7位というのは、極東の国にいて評価が高くて個人的に嬉しいです。
次は世界、次は世界と言いつつもなかなかチャンスが巡ってこない状況ではあるものの、現在のランクはIBFで3位、うまくすれば挑戦者決定戦のチャンスが巡ってきそうです。
それでも、IBF王者であるアフマダリエフ相手には分が悪いのも事実。
基本的に距離とスウェーで相手のパンチを空振りさせる勅使河原ですが、アフマダリエフは強振することもコンパクトに連打することもできるボクサーであり、この全てをかわすのは不可能に近い。
アフマダリエフ相手には、どちらかというと「ガード」が大切になってくるように感じますので、この勅使河原では正直相性が悪い。
勅使河原がガードを覚え、そのガードが機能しさえすれば、距離をとる闘い方と変則的な動きで翻弄、近くなればガードを駆使し、後半勝負に持っていけるのかもしれません。遠い距離から大きなパンチで踏み込んでくるアフマダリエフ相手にカウンターが取れれば尚良い。ただ、言いたくはありませんが勝機は低く感じます。
WBA暫定王者
ライース・アリーム(アメリカ)
アフマダリエフについては、(今のところ)全てのボクサーが後半勝負、と思っても良いと思うのですが、このアリームだけは前半勝負の方が良いと思います。
アリームはとにかく速く、そしてワイルドにパンチを振っていきます。
そのアリームの動きに、アフマダリエフが慣れる前にこそ、勝負ができると思います。
逆に後半は、アリームの集中力が切れる可能性もあるので、後半に行けばストップされてしまうでしょう。
このアリームは運動神経の塊のようなボクシングをします。
その一点において、主観的にもしかするとアフマダリエフを上回れる可能性を秘めているボクサーのように思うのです。
可能性は少ないと思いますが、アフマダリエフの一瞬の気の緩みをついて、このアリームのスイング系のパンチがヒットすると、おもしろくなります。
アザト・ホバニシャン(アルメニア)
ロニー・リオス(アメリカ)
ともにピークを過ぎたかと思われますが、まだまだ元気。ただ、王座に届くかというとちょっと難しい気がします。
両者ともに当時のWBC王者、レイ・バルガス(メキシコ)に挑戦、判定負けを喫しています。
このふたりは2018年に直接対決もしており、ホバニシャンの6RTKO勝利。
その他、このリングマガジンのランキングには登場していませんが、無敗のコンテンダーの中で注目はカルロス・カストロ(アメリカ)とマイケル・コンラン(イギリス)。
ジェネシス・カシミ・セルバニア(カシミ)を完封、セサール・フアレス(メキシコ)の心を折ってのTKO勝利と、快進撃を続けるカストロ。
このボクサーは非常に距離感に優れ、鋭いジャブを持ちます。26勝11KOという戦績以上にパンチングパワーも感じます。
そしてコンランはロンドン五輪のメダリスト、こちらはまだプロで試されてはいません。アイザック・ドグボエ戦が決まりかけていましたが、流れてしまいましたね。次戦が4/30に決まっているようです。
コンランはタイトル戦にはまだ早い印象がありますが、カストロについてはWBC1位につけています。タイトル戦はそろそろでしょうか。
あとは、日本人ボクサーでは小國以載(角海老宝石)、和氣慎吾(FLARE山上)、赤穂亮(横浜光)が世界ランクを持っていますが、世界挑戦はまだ先でしょうね。突然、王者側から声がかかれば別ですが。
ちなみにアジアのボクサーでいうと、私が密かに期待しているのはマイク・プラニア(フィリピン)。粗さは目立つものの、このフィリピーノ・ファイターは素晴らしい左フックを持っています。地力で劣ろうとも、一発で試合をひっくり返せそうな何かを持っているボクサーです。
ということで、打倒・アフマダリエフの最右翼は、現在のところやはりダニエル・ローマン。ただ、もし再戦となっても差が開いているかもしれない、と思ってしまいます。おそらくこれから更にプロボクシングにフィットしていくアフマダリエフにとって、ローマン戦の12Rは大きく、その一戦によってより完成度を増したとも言えます。
ローマンを除いて、馬力勝負でアフマダリエフに勝てる、どころか勝負できるボクサーがいるのか、というのが一つの疑問ですが、現時点で証明されている中ではいなさそう。
そうなると、やはり打倒アフマダリエフを叶えられるのは、アフマダリエフが強振してくるところを狙ってカウンターが取れるボクサーではないか、と思います。
ということは井上尚。。。
いや、それにはまだ早い。
そうすると、やはり防御勘にすぐれるてっしーに(ここは感情的に)期待したい思いです。
ともあれ、アフマダリエフの天下はまだまだ続きそう。ただ、他の王者との統一戦が進むか、というと対戦したいという王者はいないのかもしれません。
あ、ここにきて思い出しましたが、WBC王者のルイス・ネリ(メキシコ)。
リングマガジンのランキングに入っていなかったのでうっかりしていました。
このネリは、スーパーバンタムに上げていきなり世界タイトルマッチのチャンスを掴みましたが、前戦のアーロン・アラメダ(メキシコ)戦で評価を落としています。かつての竜巻のような連打、パワーはナリを潜めていました。
次戦でブランドン・フィゲロアに負ける予定です。がんばれフィゲロア。
とはいえ、ここ数戦のフィゲロアもパッとしません。ネリもフィゲロアも、今は戦い時ではないような気もしますが、とはいえこれは興味深い一戦です。
日本人ボクシングファンの多くは、(よほどひねくれていない限り)フィゲロアを応援する、というか「ネリ負けろ」でしょう。
ともかく、この一戦に勝利すれば実質ふたつのタイトルを統一することとなり(結局WBAタイトルがどうなるのかはわかりませんが)、両者のキャリアにとって大きいですね。
大事なことなのでもう一度いいます。
がんばれ、フィゲロア。