いよいよ2/5、日本バンタム級王座決定戦。
ボクシングファンにとって、この日行われる「日本バンタム級王座決定戦」については、「もはや多くの説明を必要としない」でしょう。
ということで、私は仕事を無理やり切り上げて帰宅、日テレG+でテレビ観戦。
↓プレビュー記事
2/5(土)ダイナミックグローブ
120lbs契約6回戦
山口臣馬(帝拳)1勝(1KO)1分
vs
小林廉(エスペランサ)4勝(2KO)1敗1分
元世界王者、山口圭司の息子、山口臣馬。白井・具志堅スポーツジムの閉館に伴い、帝拳ジムに移籍しての初戦は、2020年の西日本新人王、小林廉。
このキャリア初期において2年ものブランクが気になりますが、果たして。
初回、ともにキビキビした動きから中間距離での攻防からスタート。小林は山口の攻撃がしっかり見えています。近い距離でのボディは非常に印象が良いです。
山口はノーモーションのジャブ、右ストレートが良い、と思った瞬間、踏み込んだ小林に山口の非常にコンパクトな左フックがヒット!小林はダウン!
ダメージはなさそうですが、これは見えなかったでしょうね。
再開後、苛烈に攻める小林ですが、それを山口がいなしたところでゴング。
スローで見ると山口はジャブフックでダウンを奪取していました。これはため息が出るほど上手い。
2R、ビハインドの小林、プレスを強めてアグレッシブに行きます。ここでも左右のボディが良い。山口は近い距離でも距離を操り、ところどころでバックステップを使います。これも上手い。前手を多彩に繰り出す山口に対して、パワーは小林にありそうです。
見惚れるほど美しいジャブを打つ山口ですが、そのジャブの打ち終わりに攻め込む小林。幾度も山口のボディを叩き、これで下がった山口に対して追撃。このボクサーもまた非常に強いですね。
3R、近い距離での打撃戦からスタート。山口は前手のアッパー、小林は左ボディ。接近戦でのフィジカル、パンチの回転力、上下の打ち分けには小林に分があります。山口は距離をキープして戦った方が良い気もしますが、ジャブを突きながらも強気で、距離を獲るでもなくその場にとどまって迎え討ちます。
後半、山口は下がりながらの左フックを打ちますが、これを食らうと小林は危険、と思った矢先、その左フックがヒット!小林はダウン!!!
これは止めても良いんじゃないか、位のダウンでしたが、レフェリーは続行を指示、すぐさまゴング。
4R、ガンガンくる小林に対しては、やはり足を使っての戦法の方がしっくりくるでしょう。しかし小林は圧がものすごく、手数もよく出て、おまけにパンチの切れも申し分ないので、並のボクサーであれば潰されてしまいます。
調子の出てきた山口は、落ち着いて鋭いジャブを突き刺し、小林が攻めてくるとしっかりとブロッキング、そして重要な事は「下がりすぎない」ということ。
まっすぐ下がらずに上手くサークリング、時折しっかりと踏み込む山口は、ロープに詰まる事がありません。この辺りのリングの使い方、非常に上手い。感心するばかりです。
5R、このラウンドは山口もアグレッシブ。試合を決めようとして出てきたか。
しかしここで小林のカウンター、山口は少し効いたか、後退を余儀なくされます。
しかしその後持ち直した山口は、再度攻勢に転じ、ステップワークも織り交ぜながらカウンターも狙っています。
小林は攻めたくても攻められないか。
ラストラウンド、逆転を狙って前に出てくる小林!その小林の挑戦を受ける山口!接近戦です。
山口にとっては棄権な距離とも言えるこの距離ですが、山口はバックステップ、サイドステップを駆使して近い距離でもジャブを突き、コンビネーションを打ちます。
小林としては自分の距離、ボディを中心とした回転力のあるコンビネーション、大きな左フックをヒット!この猛烈なチャージを嫌がったのか、山口はステップでエスケープ。
そしてサークリングする山口を追っていった小林、右を浅くヒットするもここでまたも山口の左フックカウンター!!!
ここで倒れた小林をレフェリーが救い、山口の最終回TKO勝利!!!
いや〜、強かったです、山口臣馬。2年前の試合は会場でみたのですが、あの時よりも段違いに良いパフォーマンスを見せてくれました。
終始冷静、そしてタイミング抜群の左フック。これでわずか3戦で早々にA級昇格、まだ21歳という若さ。今回はスーパーバンタム級での契約ウェイトでしたが、あと2ポンド落とせばバンタム級。
今後はどの階級で戦っていくのか、非常に興味深いですね。
そして敗れた小林も、素晴らしいボクサーでした。フィジカルも強く、パンチもキレがあり、それを連打できるスタミナと反復練習の量。今後も楽しみなボクサーです。
セミファイナル スーパーライト級8回戦
湯場海樹(ワタナベ)7勝(5KO)1敗2分
vs
近藤哲哉(横田スポーツ)6勝(4KO)4敗
湯場の再起戦の相手は、強豪との対戦をこなし続ける近藤。勝たなければいけない湯場、勝てばアップセットとなる近藤。
初回、サウスポーの湯場とオーソドックスの近藤、まずは前手で距離の探り合い。近藤はステップインの隙を窺っています。
近藤はプレスを徐々に強めていきます。終盤に近藤の右が届く場面もありましたが、全体的に動きは少ないです。
2Rに入ってもアクションは非常に少ないですね。近藤はもう少し攻めたいところですが、湯場も手数が少なく、お互いにクリーンヒットはほぼありません。
しかし終盤、湯場が大きく踏み込んで左ストレートをクリーンヒット。
3R、ようやく動きが出てきた3R。近藤がややラフに攻めると、湯場もジャブを突き刺し、右フックで近藤をまわします。
後半、近藤は強い踏み込みでクリンチの距離、湯場がクリンチに行くも強引に打ち込みます。このラフな攻撃についてはかなり嫌がっているように見える湯場。その後は湯場はドンピシャの左ストレートをヒット、両者譲りません。
4R、湯場は大きく足を使い、近藤はジリジリとしたプレスから強引に攻撃に出ます。接近戦になれば近藤の連打、ラフな攻撃に手を焼く湯場ですが、離れた距離では湯場のジャブ、左ストレートが冴えます。
湯場はリズムが徐々に良くなってきて、手も出てきたしタイミングも良くなってきました。
それに伴い、近藤はなかなか手が出づらくなってきましたね。
5R、先程のラウンドでしてやられた近藤は、エンジンをふかして湯場に詰め寄ります。やはり近寄ってからの近藤の攻撃は、湯場としてはかなり嫌がっています。
しかし、その近藤に対しても冷静に足を使い対処した湯場、足をつかって移動したところからのノーモーションの左ストレートを幾度となくヒット、後半にダウンを奪取。
立ち上がった近藤を追撃して左を効かせますが、このラウンドは倒せず。
6R、この状況打破のためにサウスポーにスイッチした近藤ですが、すぐにオーソドックスに戻します。しかしオーソドックスに戻せば、湯場の左ストレートは天敵。
このラウンドもいくつかの左を決めた湯場、近藤もまだ諦めません。
7R、飛び跳ねて強引に攻め込む近藤ですが、湯場はステップでエスケープ。このラウンドは近藤のがんばりが目立ちますが、ダウンを奪われている分ここまでのポイントは湯場でしょう。
ラストラウンド、グイグイ攻めていく近藤、左ストレートで迎え撃つ湯場。近藤は湯場を捕まえきれず、ラウンドが終了。
3-0の判定で湯場海樹の勝利。
安全運転、という言葉が似合う試合だった、という感じです。佐々木尽(八王子中屋)戦からの再起戦ということで、慎重になったのと、負けるわけにはいかないというプレッシャーからでしょう。近藤がタフネスを持っていた、ということもあろうかと思います。
ともあれ、湯場は「勝利」という最低限の成果を上げました。
近藤も非常にがんばりましたね。
日本バンタム級王座決定戦
澤田京介(JBスポーツ)14勝(6KO)2敗2分
vs
大嶋剣心(帝拳)7勝(3KO)1敗1分
1年以上、空位が続く日本バンタム級王座。今日こそ、このバンタムの呪いが解ける日。
待たされ続けたトップコンテンダー、澤田京介。
待たされ続けた次期挑戦者、大嶋剣心。
ともにこのタイトルへの思いは強く、その思いは慮って余りがあります。
ただただ、我々はこの二人の戦いを刮目してみる、というだけです。
初回のゴング。
軽快に動く澤田、大嶋がややプレスをかけていきます。序盤の様子見もそこそこに、互いに踏み込んでコンビネーションを出していくという展開。ともにアグレッシブ、相手が出てくれば迎え討ち、ハナからの総力戦です。
終盤にはよりヒートアップ、ともに気持ちの出た立ち上がり、早くも好試合必至です。
2Rも非常に早いペースでの打ち合いからスタート!この近い距離での攻防のさなか、大嶋の左フックがカウンターでヒット!ぐらりと来た澤田に大嶋が追撃、しかしここは澤田が何とかエスケープ!
その後は澤田が右ストレートを大嶋にヒット、中盤には大嶋に対してラッシュを仕掛け、少し効いたようにも見えます!
早くもとてつもない盛り上がりを見せる2R、終盤に澤田が左フックを起点に右カウンターをヒット、ダウンを奪取!!!
3R、澤田は焦らず、速いステップで出入りのボクシング。入り際に大嶋のカウンターがヒット、本当に素晴らしいクリーンヒットを奪い合う展開!
そしてハイペースでもあり、この試合が10Rまで行く道程は全く見えません。
このラウンド、右の頭をバッティングでカットした澤田、ドクターがチェック。。。
これは嫌な雰囲気が漂います。
ただ、4R終了のゴングさえ聞けばこの試合は成立、負傷判定となろうとも試合自体は成立し、王者は決まります。
とりあえずこの試合は再開。
後半も澤田が左フックカウンターをヒットすれば、大嶋が右アッパーをヒット、どちらも譲りません!!
4R、接近戦では大嶋のアッパーが冴えます。ここで、もう一度澤田の額の傷をドクターがチェック。
澤田の左フックカウンターは素晴らしく、大嶋の右アッパーも素晴らしい。
が、とりあえず早くこのラウンドが終わってくれ、と心の中で願うばかり。
澤田のカットの流血はものすごいですが、とりあえずこのラウンド終了のゴングをもって試合は成立。もうこれは、ドクター、レフェリー等々がとりあえず試合を成立しようと持っていったようにも見えてしまいます。そして、この流血具合からいくとあまり長くはないかもしれません。
このラウンドで額だけでなく右まぶたもカットした澤田。
5R、ダウンを奪われている大嶋は早めにチャージしなければいけません。しかしこのラウンド開始30秒のところで3度目となるドクターチェック。
このドクターチェックにより、試合が終了。
判定は48-47、大嶋。48-46、澤田。48-47、澤田。
勝者は、澤田京介。
ついについに、念願叶って、澤田京介が日本バンタム級王者となりました。
全くの互角とも言える展開でしたが、あのダウンの存在は非常に大きかった。
素晴らしい戦いが約束された立ち上がりに対して、やや消化不良と言わざるをえない結末ではありますが、ともあれ、澤田京介は本物のチャンピオンです。本当に素晴らしい。
効かせ、効かされ、一瞬の隙をついてダウンを奪った、素晴らしい試合。
紆余曲折を経て、ベルトを巻いた澤田。
そして、望んでいた結果には終わらなかった大嶋。
この日は澤田京介の日だった、といえばそれまでですが、戦いとしては本当に互角でした。
2年以上ぶりの試合で、いきなりの日本タイトル。気負うな、という方が無理だったかもしれません。
この戦いを10R、本当に決着がつくまで見たかった。
それでも、やっぱりボクシングは最高だ。
呪いは完全に解けていないのかもしれない
澤田京介というボクサーは、ややバッティングをしやすいかもしれません。確かに近接戦闘となった時に頭が低い場面は多くあります。
今回の場合、両者とも気持ちが前に出すぎており、両者自然と頭も前に出てしまったのかもしれません。ただ、せっかく小刻みで素早いステップワークも持っているので、もう少し気をつけた方が良いかもしれませんね。
ともあれ、澤田の次戦は指名挑戦者となる堤聖也(角海老宝石)戦。
私は、今回澤田も大嶋も(どちらも王者になってもらいたい、との意味で)両方とも応援できませんでしたが、堤が挑戦となると今度は堤を応援します。
澤田が勝っても、大嶋が勝っても、それは決めていました。
この恵まれないボクサー堤は、中嶋一輝(大橋)戦を見て大ファンになりました。
ということで、今回の一戦で半分解けた呪いを、次戦で完全に拭い去って欲しい。
そしてもう二度と、「呪われたバンタム」なんていう変な異名で呼ばれる事のないことを願って。