2023年のはじまり、世界王者は4名。
OPBF東洋太平洋王者は9名。
そして、今回話題にするWBOアジアパシフィック王者も9名となっています。
前回のブログで触れたOPBF王座、そして今回触れるWBOアジアパシフィック王座、ともにアジアタイトルとなってはいるものの、現在のところそのほとんどが日本国内でまわってしまっている王座。しかも、OPBFとWBOアジアパシフィックのタイトル戦が同時に王座決定戦として行われる試合もあり、本来は日本王座の上に位置するタイトルにもかかわらず、その価値の下落は甚だしくも思います。
昔(二昔ほど前)なんかは、日本→東洋→世界という流れが一般的だったような気もしますが、いつの間にか東洋太平洋の王座は日本タイトルに比べて(段階を踏まなくて良い分)挑戦しやすい王座となってしまっています。
この辺りは他国のこともあるので、何とも言えないところはありますね。
この二つのタイトルに意義を感じているのは日本ボクシング界くらいのもので、その他の加盟国はあまり意味を感じていないふうに思います。だったら、○○○インターナショナル、というタイトルを獲る方がずっと価値がある、と感じているのだと思います。
ともあれ、WBOの下部組織であるWBOアジアパシフィックタイトルの獲得は、WBOへの世界ランクに入りやすくなるという点においてはメリットがあるとも言え、こと軽量級においてはそれは顕著。
ということで、前置きが長くなりましたが、今回のブログでは2023年初頭にタイトルホルダーである、WBOアジアパシフィック王者たちを見ていきます。
ミニマム級王者 小林豪己(真正)
2021年6月にプロデビュー、デビューからわずか1年半の2022年12月、わずか5戦目でWBOアジアパシフィックタイトルを射止めた小林豪己。
関西のライジングスターである小林は、今後の活躍が期待されるボクサーの一人です。
しかもミニマム級といえば、ほぼ日本とタイ、フィリピン、まれにメキシコ、あたりでまわっている階級ですので、これはあまり期待してはいけない話ではありますが、もしかすると今年中にチャンスが回ってくる可能性だってあります。
真正ジムのバックアップは素晴らしく、関西圏では世界戦のチャンスを一番多くつくっている印象。それも含めて、この小林は非常に恵まれたボクサーとも言えます。
当然、本人の資質は素晴らしい事この上なく、あとはやはりキャリア。12月のWBOアジアパシフィック王座決定戦は10回戦で行われており、12ラウンズを戦っていない、というのはやや不安の残るところ。
2023年はこの部分を払拭し、さらなる強さの証明をした上で、来年以降の勝負に期待です。
フライ級王者 加納陸(大成)
2021年、WBOアジアパシフィックのライトフライ級王者だった加納はこのタイトルを返上、2022年9月に決定戦でフライ級王座を獲得しています。
王座決定戦で当たった井上夕雅(真正)は好ボクサーではありますが、2021年11月に日本ユース・フライ級王座決定戦で森青葉(泉北)に敗北しており、突然のアジアタイトルの決定戦というのはちょっと納得性に欠けてもいました。ここは圧倒しなければならないところではありましたが、試合は一進一退の攻防が繰り広げられた末の大接戦。井上の頑張りで素晴らしい試合になってしまったものの、個人的には「アジア王者」という肩書にはまだまだ疑問符がつく存在でもあります。
WBOフライ級3位という上位ランカーである加納ですが、まだまだ証明しなければならないことは多いと思います。このタイトルをじっくりと防衛しながら、地力を養ってもらいたいところですね。
フライ級、という日本人の多い階級でもあるので、ここはトップコンテンダーの畑中建人(畑中)との防衛戦や、評価の高い2020年度の全日本新人王宝珠山晃(三迫)等の日本人の強豪ボクサーを迎えての防衛戦に期待。
バンタム級王者 西田凌佑(六島)
2020年12月に大森将平(当時Woz)、2021年4月に比嘉大吾(志成)を退けて大きく名を上げた西田は、その後大橋哲朗(真正)、アルジュム・ペレシオ(フィリピン)を相手にしっかりと防衛。
現在6勝(1KO)無敗、そのボクシングは安定感抜群で、ほぼ相手にポイントを与えないボクシングを展開しています。
たった6戦ながらも、すでに強さを証明している感じもある西田ですが、やはり世界となるとややまだ強豪との対戦が足りないイメージで、もう一つ二つ、インパクトのある勝利がほしいところ。
対抗王者であるOPBF王者、千葉開(横浜光)との統一戦は、西田のキャリアにとって良い戦いとなりそうですし、日本王者堤聖也(角海老宝石)との戦いも興味深い。
2023年、大きく動く世界のバンタム級の次点となり得るかは、このアジアクラスの最強決定戦を勝ち抜く戦いを見てみたい。
2023年の西田には、是非とも後楽園ホールのリングに立って、対抗王者との統一戦を期待したい。
フェザー級王者 阿部麗也(KG大和)
2022年、大きな飛躍の年となった阿部麗也。5月に世界を窺う丸田陽七太(森岡)を撃破して日本&WBOアジアパシフィック王座を戴冠、12月に関西ホープの前田稔輝(グリーンツダ)の顎を割っての判定勝利。
丸田戦でも、前田戦でも「付け入る隙なし」という戦いでこそなかったものの、この強豪相手に完勝というのは十分に世界戦の資格あり、と感じます。
4団体でランクインしていますが、最高ランクはIBFの5位、次期挑戦者決定戦の話も来ているようなので、これは期待して良いでしょう。
2022年、たとえこのタイトルを返上することになろうとも、挑戦者決定戦の声がかかればそれを優先するのは当然のことですので、吉報を待ちたい。
もし、この挑戦者決定戦の話がなくなったとしても、指名挑戦者佐川遼(三迫)との指名試合であり再戦に進む予定であり、もしこうなった場合も目が離せません。
魂を削られるような、ヒリヒリとしたマッチアップが続く阿部は、今年、来年中くらいが勝負の年となるでしょう。群雄割拠の世界のフェザー級戦線、できれば今年中にそこに食い込んでもらいたい。
スーパーフェザー級王者 木村吉光(志成)
2021年12月にOPBF東洋太平洋の王座決定戦に勝利し、OPBF王者となりましたがそのタイトルは返上。フランスでの世界ランカー戦が決まりましたが、相手の都合でキャンセル、改めて2022年8月に中川兼玄(角海老宝石)とのWBOアジアパシフィック王座決定戦で12RTKO勝利、見事ふたつめのタイトルを戴冠した木村吉光。
現日本王者、坂晃典(仲里)、アップセットを繰り返してきた中川兼玄を立て続けに倒した木村は、現在の日本スーパーフェザー級戦線で輝きを放っています。
この階級の日本のトップは、すでに1度、世界タイトルを獲得している尾川堅一(帝拳)で良いと思いますが、その二番手を決める戦いが2023年1月に行われる見通しで、これは勝った方が一気に世界へ近づく一戦となりそうです。
先日OPBF王座を返上したばかりの力石政法(緑)との防衛戦は、メイン、セミファイナルの世界戦を差し置いて、最も楽しみにしているファンも多いかもしれません。
この結果次第ではありますが、この試合の後は国内で証明することはもうありません。
すぐさま世界挑戦、というのはランキング的にちょっと難しいかもしれませんが、ここは是非海外まででかけ、強豪相手とのチャレンジマッチに進んでもらいたいところ。
2023年、力石戦に勝って、もう一試合くらい格上とできれば、非常に大きな飛躍の年になるかもしれません。
ライト級王者 吉野修一郎(三迫)
2022年、大きく飛躍したアジア王者といえば吉野修一郎。伊藤雅雪(横浜光)との一戦を制し、続いて中谷正義(帝拳)を撃破、日本のライト級で飛び抜けた存在となった、ということで良いと思います。
2022年にライバル、三代大訓(ワタナベ)との対戦が実現しなかったことは非常に残念ではありますが、伊藤、中t内の2タテは素晴らしいレジュメ。
さて、2023年は国内にはほぼ用がなく、世界に打ってでてほしい年。
極東の国でコツコツと防衛を重ねるこのアジア王者は、少しずつランキングを上げてきたこともあり、世界戦がちょっと見えてきました。
ここでは、やはりアメリカでインパクトを与える一戦がほしいところです。
そして、2022年末に飛び込んできたニュースは、対戦相手に困っているシャクール・スティーブンソン(アメリカ)の相手を務める可能性がある、というニュース。
シャクールvs吉野、吉野にチャンスは少なそうではありますが、是非チャレンジしてもらいたい試合ですね。
2023年、シャクールとのWBC世界ライト級挑戦者決定戦が組まれれば、ファン側としてはそれだけで満足してしまうかもしれません。もし、吉野がその試合で(中谷正義のように)アメリカでの評価をあげ、もしくはシャクールに勝ってしまうようなことがあれば、一気に本場での評価も需要も高まります。
いずれにしろ、アメリカで戦うのであれば、このアジア王座はもういらないでしょう。
返上して、次の戦いに備えてもらいたい。
スーパーライト級王者 平岡アンディ(大橋)
2022年、4試合を戦った平岡アンディ。この階級で、日本人挑戦者を探すのが難しい平岡としては、非常に恵まれた年となったのではないでしょうか。
うち2名は日本人で、残りの2名は海外からの挑戦者。
とはいえ、やはり実力差があるマッチメイクであり、平岡もやや危うさを見せながらも結果的には4勝(4KO)で2022年を終えています。
日本、アジアのレベルではもう測れない平岡、これ以上はキャリアの足しにもならないかもしれません。
やはり期待されるのは、アメリカでそれなりの相手と戦ってもらう事。例えば欧米の世界ランカー、もしくはプロスペクト。日本で、ではなく、海外に出て戦ってもらいたい、というのも希望です。
日本で戦っていると、この階級ではなかなか影響力は生まれません。
果たして平岡アンディは、世界の強豪とどの程度渡り合えるのか、も結局は謎のままです。
個人的には、やや脆さもあるようにみえるアンディは、現時点では世界の強豪には何もできずに終わってしまうのではないか、と思ってしまいます。
そこを払拭するためにも、世界で活躍する強豪との一戦が見てみたい。
2023年、平岡アンディの世界進出に期待。
ウェルター級王者 豊嶋亮太(帝拳)
WBOアジアパシフィック、OPBF王座を持つ豊嶋亮太は、この階級で小原佳太(三迫)と双璧をなす存在。
次戦は大注目の佐々木尽(八王子中屋)戦、当然地力では豊嶋優位ながらも、なにかを起こす可能性のある佐々木尽というボクサーは怖い存在でもあります。これは豊嶋にとってはハイリスク、ローリターンな一戦にも見えますが、ファンにとっては喜ばしい一戦です。
小原は日本王座を返上、世界へ打って出る準備をはじめてはいますが、豊嶋はまだ20代で若いということもあり、もう少しじっくりとキャリアを積んでも良さそうです。
今年、というよりも、2024年とか2025年あたりを勝負の年と定め、徐々に世界ランクを上げていって挑戦者決定戦からの世界挑戦、というのがウェルター級では現実的な道ではないか、と思います。
2021年、一気に飛躍した豊嶋でしたが、2022年は1試合のみ。それも、やや実力に劣る相手でもありました。
2023年はコンスタントに、年間3試合くらいこなしてもらいたいものですね。
スーパーウェルター級王者 井上岳志(ワールドスポーツ)
確実に対戦相手を見つけるのに苦労するはずの井上岳志ですが、以外にも試合はコンスタントにこなせています。
2022年はワチュク・ナァツ(マーベラス)との再戦で判定勝利、そして天熊丸木凌介(天熊丸木)とのOPBF・WBOアジアの2冠王座決定戦では6RTKO勝利と2戦して2勝。やはり国内では敵なしを証明して見せています。
この井上が国内最強を証明して幾年かが経過し、海外でのチャンスをつかむもハイメ・ムンギア(メキシコ)、ティム・チュー(オーストラリア)に跳ね返されています。
スーパーウェルター級という階級は、ウェルター級、ミドル級にはさまれた階級であるだけにやはり欧米のボクサーが幅を利かせているのが現実。井上がここに割って入るためには、やはりオーストラリアの強豪ボクサーを打ち負かすか、アメリカ本土で勝負をかけなければいけません。
このタイトルに如何ほどの価値があるのかわかりませんが、井上はこのタイトルをオーストラリア人相手に防衛戦ができないのであれば、即刻返上し、竹迫とともにアメリカでチャンスを求めた方が良いようにも思います。
なので、2023年、竹迫とともにアメリカのリング登場に期待です。
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