フェザー級。
井上尚弥が最後に狙う階級として注目のこの階級は、ここ最近で大きく動いていることもあり、世界的に注目です。
ルイス・アルベルト・ロペス、ニック・ボール、レイ・バルガスというよりもブランドン・フィゲロア、そしてラファエル・エスピノサ。
こうして揃った王者たちはどれも非常に個性的で、王者たち同士の絡みも非常に楽しみなものです。
そんな中、今回のトップランク興行で登場するのは身長185cmのフェザー級、ラファエル・エスピノサ。フェザー級王者の中には身長157cmの王者、ニック・ボールもいるだけに、この30cm近い身長差のマッチアップが可能、というのは常識の範囲の中に収まることではありません。このことでも、現在のフェザー級の個性が透けて見えるようですね。
ということで、非常に面白い階級であるフェザー級。
今回のブログは、ラファエル・エスピノサvsセルヒオ・サンチェスをメインに据え、ESPNで放映されたトップランク興行の観戦記。
↓プレビュー記事
6/21(日本時間6/22)アメリカ・ラスベガス
アンドレス・コルテス(アメリカ)21勝(12KO)無敗
vs
エイブラハム・ノバ(アメリカ)23勝(16KO)2敗
今回はセミファイナルから視聴です。無敗のプロスペクト、アンドレス・コルテスはタイトルチャレンジャー、エイブラハム・ノバとの戦いです。
まず初回は両者共に慎重な立ち上がり。ジリジリとプレスをかけるコルテス、ゆっくりと下がりながら対応するノバ。互いに攻め時を掴めない中、中間距離での睨み合いで時間が過ぎていきます。
コルテスは幾度か手数で攻め込む場面を作りますが山場を作ることはできず、ノバは鋭いジャブを持っていますが右へつなげる場面を作れてはいません。
2R、様子見のラウンドだった初回を終え、ノバが上下のコンビネーション。パワーでは負けないコルテスは近い距離でアッパーを振るい、押し込んでいきます。
体と体がぶつかり合う距離ではコルテスのパンチのアングルが非常によく、回転力もある。ノバはこの距離で戦うべきではないのではないか、ちょっと手が出ず、フィジカルでも押し負けているように見えます。
ガードの間隙を縫ってコルテスのアッパーで若干顔面があがるノバ、ここは明らかなコルテスのラウンドです。
3R、ノバが距離を修正、無理な接近戦をやめています。こうなるとノバのスピードが活きてきます。しかしコルテスも強引に距離を詰める場面もあり、互いの良いところが出始めたイメージ。
非常に手数が多いエイブラハム・ノバ、後半はコルテスを押し込んでいく場面も。
4R、ノバはコルテスのアッパー対策でよく頭の位置を動かし、再度接近戦を挑みます。この対応力はさすがですが、やはりこの距離ではコルテスではないでしょうか。
後半はコルテスがプレスを弱めたからか距離が空き、ここでノバは良いコンビネーションを見せています。
5R、ここまでのESPNの非公式採点はイーブンです。競っているラウンドは1、4で、これはどちらに振られていてもおかしくはありません。
このラウンドも打撃戦、接近戦でもノバが対応してきているようなイメージであり、このラウンドは特にノバのアッパーカットのいくつかがヒットしています。
6R、距離が開き、コルテスはグイグイ攻めるわけではありません。中間距離での差し合いはノバに分がある中で、ノバの打ち終わりにインサイドに入ろうとしています。ただ、この戦い方だと多くの時間がノバに流れてしまい、コルテスとしてはインサイドに入れた少ない時間で効果的なパンチを見舞わなければならず、もっと強くプレスをかけるべきではないでしょうか。
接近戦になってもノバは良く、頭の位置を変えながらボディを打ち、コルテスの回転力を封じているように見えます。
このラウンド後の「NEWS & NOTES」でタンクvsロマの交渉が開始されていることが伝えられています。
↓このことですね。
そしてもう一つ、ナバレッテvsバルデス2というのがWBOから指令された、とのことですが、この試合はもういいかな。。。
7R、ノバのパンチは非常にスムーズに出て、タイミングが良い。コルテスが出ようというところにしっかりとジャブを出すし、距離が良ければそこから繋げられてもいます。
コルテスは若干強引めに、頭から突っ込む場面も多くなってきていますが、こういう強引さは今、おそらく必要です。逆にバックステップはいらないのではないか。
8R、ここまでのパンチスタッツは、コルテス114/346、ノバが125/470。コルテスはノバに手数で負けてはいけないように思います。
ノバはどのタイミングでもスッと速いジャブを出すし、近づいたら数発のボディを打ち、序盤のラウンドと違いフィジカルでも負けません。コルテスを押し込んでいくノバ、もうコルテスに倒されるイメージは持っていなさそう、非常に好戦的に攻め入ります。
9R、ここもプレスをかけて前に出るのはエイブラハム・ノバ。上下の打ち分け、アングルは見事で、コルテスは疲れているのかもはやワンパターン、ちょっとノバに対応されている感じです。
後半にノバは強い右をヒットからのチャージ。コルテスも打ち返し、これもヒットしているもののノバの突進は止まらず。
ラストラウンド、おそらく勝負をかけなければいけないのはアンドレス・コルテス。
しかし微妙に行ききれないのは、入ろうとしたところで飛んでくるノバのジャブ、そしてインサイドに入ったとしてもノバの強さがあるからかと思われます。
中盤、頭を下げて入ったコルテスに対して見事な右アッパーを決めて見せたノバは、その後プレスをかけて攻めきり、試合終了のゴングを聞いています。
ノバのマスコットキャラまでリングに上がって判定を聞きます。この「中の人」はいつもなかなか良い動きをしていますが、誰なんでしょうかね。間違いなくボクサーだとは思います。
さて、判定は97-93×2、96-94でアンドレス・コルテス。
おっと、これは。。。!
完全にわかりやすい、ホームタウンデシジョンだと思います。
ベガス出身のコルテス、プエルトリコ生まれのニューヨーカー、ノバ。
前半はクロスファイトであったことは事実であり、後半にはノバが抜け出したはず。
これは疑惑の判定と言われても仕方のない内容かとは思いますが、地域タイトルではさほど話題にならないのかもしれません。
WBO世界フェザー級タイトルマッチ
ラファエル・エスピノサ(メキシコ)24勝(20KO)無敗
vs
セルヒオ・チリーノ・サンチェス(メキシコ)22勝(13KO)無敗
セルヒオ・チリーノ・サンチェス。チリーノが父方の苗字で、サンチェスは母方の苗字のようです。なので表記としてはセルヒオ・チリーノが正しいですね。プレビューではセルヒオ・サンチェスと表記していました。
はてさて、ということでメキシカン対決のWBO世界フェザー級タイトルマッチ。
この階級では長身の部類に入るであろうセルヒオ・チリーノ、ですがこの階級で圧倒的高身長であるラファエル・エスピノサ。エスピノサは前戦でロベイシー・ラミレスを破る大殊勲をあげていますが、これがフロックでなかったことを証明する初防衛戦です。
初回、まずプレスをかけていくのはラファエル・エスピノサ。長い距離から長いジャブで攻め入り、そのまま左フックを繋げます。
チリーノはステップワークが素晴らしく、エスピノサの打ち終わりに右カウンター、サイドに回りながらの左フックをヒット。チリーノ、初回の動きからすでにただものではありません。強者の予感。
しかし!!2分が経つ頃、プレスを受けて下がったチリーノ、右オーバーハンドで押し返そうとしたところにエスピノサがインサイドからの左ショートアッパーカウンター!!!!なんという!!カウンター!一瞬何が起こったかわからなかったので、巻き戻して見てしまいました。。。!
これでダウンを喫したチリーノ、すぐに立ちあがろうとしてよろめき、かなりのダメージを感じさせます!
ここで強気にパンチを振るえるのは素晴らしいチリーノ、攻めることでエスピノサの追撃をストップ、なんとかこのラウンドをエスケープしています。
この素晴らしいダウンシーンは、インターバル中に何度も流れています。そしてエスピノサのセコンドには田中繊大氏!
2R、ジリジリとプレスをかけ、チリーノを追い詰めていこうというエスピノサ。しかしこのチリーノも良いボクサーですね。右のオーバーハンド、左のフックはどちらも常にカウンターの準備ができており、この身長、そしてスムーズなフットワークと合わせてかなり実力のあるボクサーだとありありとわかります。
タイミングもよく、追い詰められてもエスピノサが攻めようというタイミングでボディジャブ(パンチセレクトも良い)を放って攻めさせず、非常にうまい。
それでもやはり遠隔から攻撃できるエスピノサのジャブは有効で、ヒョロ長い体躯ながらもタフネスとフィジカルを持つエスピノサにダメージを与えるのは難しく、ポイントは取りきれないか。
3R、常にパンチを準備しているのはエスピノサも一緒で、ラミレス戦でもわかるようにこのエスピノサはボリュームパンチャーの部類。チリーノのタイミングとフットワークにより、ラミレス戦ほどのパンチ数ではないものの、エスピノサはどんどんチリーノを追い詰めており、チリーノはロープからロープへとエスケープする苦しい展開。
その中で振り回す外からのパンチは脅威ですが、それを内側から撃ち抜くエスピノサ、長いリーチを効果的に活かせるストレートをよく穿つ、自らのストロングポイントを本当によくわかっています。
いくつかのストレートをヒットしたエスピノサは、プレスをかけ続けた後半、今度は右からの左ボディでダウンを奪取。チリーノが立ち上がったところでラウンドが終了しています。
4R、ここもプレスをかけるのはエスピノサ。というか、もう決めに行ってるのかもしれません。
チリーノの打ち終わりに長い右で顔を弾き、近い距離ではボディ。止まらない前進と止まらない左右のパンチ、チリーノが距離を取ろうとしてもエスピノサのパンチは届くので、チリーノがどんなに良いステップワークを持っていても逃れることはできません。
後半、ボディからアッパーをヒットされたチリーノ、少々の時間を置いてダウン。ここで効いたパンチはボディかもしれません。
ここでレフェリーは試合をストップ、ラファエル・エスピノサ、初防衛戦を4RTKOで快勝!!!
これはまあ、フェザー級というのは化け物揃いです。
リーチがありすぎて速くは見えないこのエスピノサのパンチは、射程距離が長く、生半可なステップワークでは躱すことはできません。さらにチリーノの鋭い左右のフックは、ほんの少しのスウェーで躱されており、完全に無効化されていましたね。チリーノも素晴らしいボクサーでしたが、ちょっと相性的には難しい相手でした。
ともあれ、しっかりと王者の証明を果たしたラファエル・エスピノサ。ラミレス戦の後、ニュースター誕生か、と思いましたが、これは全く間違いではありませんでした。
今後も非常に楽しみなボクサーですね。
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