素晴らしい試合だった、というよりも素晴らしいパフォーマンスだった。
非常にアクションが多く、ここまで階級最強の評価を得ていたファン・フランシス・エストラーダ(メキシコ)に対し、想像以上に上回ったというイメージのあるニューキング、ジェシー「バム」ロドリゲス(アメリカ)。
エストラーダの優遇ぶりは目に余るものがあったのは事実ではあるものの、長らくこの階級を牽引し、HBOが「SUPERFLY」なる興行を打って軽量級に注目させたことはこのエストラーダあってのこと。ローマン・ゴンサレスだけではそうはいかなかったはずです。
「レジェンドスレイヤー」という新たな称号を得たバムは、クアドラス、シーサケットに続いてエストラーダに完勝、続いての標的はタイトルホルダーではないチョコラティートではなく、井岡一翔でしょう。
このスーパーフライ級において、今最も評価が高いのは間違いなくこのジェシー・ロドリゲス。もともと評価の高かったロドリゲスは、アメリカ国籍であることも相まって軽量級ながらもP4Pキングになるポテンシャルを秘めていますし、現に2029年のP4Pランキング予想ではジャロン・エニスに次いで2位につけています。
▶︎▶︎2029年のP4Pランキング予想
そしてこのバムの快進撃を阻める者がいるとすれば、井岡一翔(志成)しかいないでしょう。
ということで今回のブログは、いよいよ週末に迫った井岡一翔vsフェルナンド・マルティネスの世界スーパーフライ級王座統一戦のプレビュー記事。
7/7(日)Life Time Boxing Fight
WBA・IBF世界スーパーフライ級王座統一戦
井岡一翔(志成)31勝(16KO)2敗1分
vs
フェルナンド・マルティネス(アルゼンチン)16勝(9KO)無敗
マスター、井岡一翔。
日本の大晦日ボクシングというのは世界的にも非常に有名であり、多くの軽量級ボクサーがその場に立ちたいと願う興行です。
その年を締めくくる興行のメインイベントを長く任されてきた井岡一翔は、まごうことなき日本のトップボクサーです。
長く第一線で活躍してきたそのボクシングは非常に緻密であり、ボクシング競技、体の使い方を本当によく理解しており、マスターと呼ぶに相応しい技巧を持っています。
井上尚弥がプロデビューする1年半以上前にはすでに世界王者となっている、このことを考えればいかに長く、このボクサーがトップ戦線で戦い続けているかを物語りますね。
4階級を制覇し、すでに手に入れられる全てを手にしているかと思う井岡にとって、最後に残るのは「階級最強」という称号であり、それを求めたが故の「エストラーダとやりたい」ということだったのでしょう。
前戦は昨年の大晦日、ホスベル・ペレス(ベネズエラ)を7RでKO。前々戦でジョシュア・フランコ(アメリカ)から奪った王座の初防衛に成功しています。
この勝利は井岡の久々のKO勝利であり、振り返ってみれば2020年の大晦日に田中恒成(畑中)を退けて以来のもので、実に3年ぶり。
格下相手とはいえこの快勝は、未だ力のあるところを見せつけてくれたから非常に心強い。
田中恒成との戦いの後、リアルタイムで見ている時は全くそうは思わなかったですが、比較的後手に回ることが多く、待ちのスタイルとなった井岡。田中戦での快勝がもたらした若干のスタイルチェンジは、おそらく井岡の性に合ったものではあったものの、見栄え的にはポイントを取りづらくし、それによりフランシスコ・ロドリゲスJr(メキシコ)戦での苦戦や、ジョシュア・フランコ第一戦のドローに繋がったと思われます。
このロドリゲスやフランコは、井岡としては相性の良い相手ではありませんでした。
しかしロドリゲスにはしっかりと勝利しているし、フランコにも再戦で完勝、この二人と似たタイプと言って良いマルティネスを相手にすれば、この経験は生きてくるはずです。
そんなマスター井岡の相手は、アルゼンチンの雄、フェルナンド「プーマ」マルティネス。
非常に獰猛なこのファイターは、アルゼンチンボクサーにありがちなタフネスと手数とアグレッシブネスを持つボクサーであり、ノーマークからあのジェルウィン・アンカハス(フィリピン)を2度に渡り破り、さらに2度目の防衛戦では非常に評価の高かった無敗のジェイド・ボルネア(フィリピン)を11RTKOで屠っています。
フィリピンのプロスペクト、ボルネアは世界王者を確実視されていたボクサーです。
タイトルを取っている、というだけでなく、紛れもない実力者であるプーマ・マルティネス。そのボクシングは非常に小気味よく、旺盛な手数とリズムを持っており、かつ、駆け引きがあまり通じないタイプであることから、井岡としては相性は良くない相手といえます。
今回、井岡は打ち合いを辞さず、とのこと。
ずっと打ち合うわけではないはずですが、効果的な打ち合いのポイントは確実に出てくるし、アウトボクシングというわけではない井岡が12Rに渡りプーマのプレッシャーを躱し続けるわけもありませんから、やはり要所では打ち勝たなければいけません。
マルティネスの踏み込みは鋭く、遠くから飛んでくるのは非常に厄介ですから、その強い踏み込みができない微妙な距離で戦いつつ、勢いづかせないところでの打ち合いが必要でしょう。
そして、パワーではなく技術で打ち勝つ、そんな戦いができれば井岡に勝機が見えてきそうですね。
逆にマルティネスの勢いに押されると井岡は危ないし、思いの外パワーに差があればこれまた危ない。打ち合いというプランも崩れてしまいます。
とはいえ、キャリアは大きく井岡が上。マルティネスの16戦を上回る世界戦を戦っている井岡、ここはキャリアの差を見せつけての勝利を願いたい。
その先にあるもの
井岡には絶対に勝って欲しい。
個人的にはいつも以上にその思いが強いかもしれません。
井岡は散々「エストラーダとやりたい」と発信してきましたし、例えば中谷潤人や田中恒成との再戦には目もくれませんでした。
そしてエストラーダが負けてしまった今、何を語ったか、というと、
「バムと3団体統一戦をやりたい」
です。
ここであくまでもエストラーダ戦、という選択肢もあったわけですが、井岡が目指すのは評価の高い選手を倒すこと、だということが明白となりました。
彼は、「エストラーダ」を求めていたのではなく、「世界的に最も評価の高いボクサー」を求めていた、当然のことながらもこのことが本当に素晴らしいことだと思います。
間違いなく、井岡一翔というボクサーはグローブの吊るし時を求めていると思います。
この日本ボクシング界に本当に大きな貢献をしてくれたボクサーの花道が、未来のP4Pであるのならば、こんなにも嬉しいことはありませんね。
そして冒頭に語ったように、「今の」バムの勢いを止められるとするならば、この井岡一翔以外には考えられません。
エストラーダは無理でしたし、無理だろう、と思っていました。
もしチョコラティートがこの階級に留まったとしても、バムを相手にするのは難しいでしょう。
しかし、井岡ならば可能性があります。
エストラーダもロマゴンも、近接戦闘型のファイタータイプであり、そうなるとバムは近い距離でのサイドステップ、それもあのサウスポースタンスから素晴らしいアングルでのフック、アッパーを決めてしまいます。
井岡のように間合いを作れるボクサーであれば、あのサイドステップは至近距離から少し空間が開くことで見えやすくなる、という利点があります。あのステップに対応できそうなのは、エストラーダでもロマゴンでも、ましてやフェルナンド・マルティネスでもありません。井岡一翔だけなのです。
ともあれ、ロドリゲスはエストラーダの再戦に進むかもしれないので、実現したとしても来年か。いずれにしろ、井岡はここに勝利して、バムとの統一戦に進んでもらいたいものです。
アンダーカードと配信情報
当初、アンダーカードには比嘉大吾(志成)の名前がありました。
このアンダーカードで、WBC(だったかな?)の世界挑戦者決定戦に出場、というのが確か噂レベルのニュースだったかと思います。
しかしその後の世界ランク発表において、比嘉はWBOのトップコンテンダーとなったことが知らされました。
この比嘉の試合の有無、というのは、WBO世界バンタム級王者、武居由樹(大橋)への挑戦有無に直結します。
しばらく経った後のアンダーカード情報では、比嘉の名前はなく、代わりに堤聖也(角海老宝石)の名前が。
比嘉はWBO世界挑戦に舵を切ったらしく、興行への助っ人として堤が名乗りをあげたようですね。
ということで、堤聖也は5戦しかしていないタイ人とのマッチアップ。急遽見つけてきた相手でしょうし、こればかりは致し方ありません。万が一がないようにだけして、良い勝ち方をしてもらいたいところです。
配信はABEMA、開始は15:45〜です。16:20の試合開始のようですので、全試合生配信ですね。これは是非見なければいけない戦い、楽しみにしましょう。
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