週末のビッグファイトは何でしょう。
6月の終わり、ジェシー・ロドリゲスがとてつもないパフォーマンスでファン・フランシス・エストラーダをノックアウト。
ガジョと呼ばれたメキシコの雄鶏は、かつてほどのタフネスを見せられず、ライジングスターに撃沈されました。
クアドラス、シーサケット、そしてエストラーダ。かつてスーパーフライ級を牛耳った4強のうち、残るはローマン・ゴンサレスのみですが、バムがロマゴンと対戦する可能性は高くはないでしょう。
というような記事が出ているわけですが、海の向こうで井岡に言及する記事はほとんど見当たりません。これは思いの外寂しいもので、是非ともマルティネスとの統一戦に勝利し、世界を注目させてほしいものです。
↓井岡vsマルティネスのプレビュー
そんなわけで国内の注目といえば井岡vsマルティネスですが、海外でもたくさんの興行が行われる7/7(日)。
その中から、「最も楽しみ」というわけではないが、一応注目度としては最も高いであろうシャクールvsハルチュニャンをプレビュー。
7/6(日本時間7/7)アメリカ・ニューアーク
WBC世界ライト級タイトルマッチ
シャクール・スティーブンソン(アメリカ)21勝(10KO)無敗
vs
アルテム・ハルチュニャン(ドイツ)12勝(7KO)1敗
ニュージャージー州、ニューアーク。
この都市は、シャクールの生まれ故郷です。
プルデンシャル・センターというこのニューアークにある会場は、シャクールが吉野修一郎と戦った会場であり、ここでロブソン・コンセイサンとも戦っているので、もはやシャクールのための会場といえます。
たまの凱旋防衛ではなく、ここ4戦中3試合を地元で戦うというのはなかなかすごい。地元以外で人気がないのか何なのか。
あっという間に3階級を制覇したシャクールは、ライト級に上がっての初戦が吉野戦であり、この試合では力強さを見せていました。
3階級目は一味違うのか、とも思いましたが、王座決定戦となったエドウィン・デ・ロス・サントス戦ではいつも以上の塩試合。シャクールはやはりシャクールでした。
今回の対戦相手、アルテム・ハルチュニャンというボクサーは圧倒的なパワーを持っているわけではありませんが、旺盛な手数を持つボクサーです。
この手数というと荒っぽく聞こえるかもしれませんが、ヨーロピアンスタイルともいうべき綺麗なボクシングをするし、流れるようなコンビネーションもいちいち角度が決まっており、非常に質の高いボクサーです。
逆にいうと意外性は少ないように思え、果たしてシャクールを崩せるか、というと難しいような気がします。
この手数が多く、接近戦に強いハルチュニャンに対し、シャクールが接近戦を挑むとは考えづらい。普通に考えれば触れさせないアウトボクシングで塩漬けにするのが最も容易に勝利を収める方法でしょう。
しかし、今戦はシャクールにとっても大きな大きな分岐点となりえます。
もし、シャクールが完全な安全策をとり、サントス戦と同様に36分間に65発しかパンチを当てなかったとするならば(ちなみにサントスのヒットはたった40発、これはCompuBox始まって以来の最低数値)、シャクールにはもはや未来はありません。
シャクールはこの試合を最後にトップランクとの契約を解消、フリーエージェントになります。
そうなると待っているのは試合枯れ、どんなにシャクールが「自分がNo.1」と捲し立てても戦ってくれるボクサーはいなくなってしまうのではないでしょうか。
なのでこの試合、シャクールは「スーパースターだということをわからせる」戦いをしなければなりません。それは、フランク・マーティンが倒せなかったハルチュニャンをノックアウトすることです。
シャクールがどんなパフォーマンスを見せ、どのような未来に繋げるのか。この試合は、このことに注目して見たいと思います。
WBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチ
オシャーキー・フォスター(アメリカ)22勝(12KO)2敗
vs
ロブソン・コンセイサン(ブラジル)18勝(9KO)2敗1分
とかなんとか言いつつ、実はメインよりも本当に楽しみなのはこのセミファイナル。
憎きレイ・バルガス(メキシコ)をアップセットで降して王者となったフォスターは、初防衛戦で敵地に乗り込み、自分のボクシングをかなぐり捨てて最終回TKOでエドゥアルド「ロッキー」エルナンデス(メキシコ)に大逆転勝利。
2度目の防衛戦ではエイブラハム・ノバ(アメリカ)から最終回にダウンを奪っての判定勝利、スタイル的にはエキサイティングではないはずですが何やらジェットコースター的な面白さを持ったボクサーです。
プロモーターに守られるプロスペクトの道を外れてしまったフォスターですが、自力で見事に復活した様は非常に応援したくなる道程であり、ジョー・コルディナ(イギリス)が負けてしまった今となってはこの階級で一番の推しです。
↓フォスターのキャリアはこちら
しかし、なんと言っても相手がロブソン・コンセイサン。
ブラジル人として初めてオリンピックのゴールドメダリストとなったロブソン・コンセイサン。日本でいえば桜井孝雄。
そのキャリアは悲劇的で、初のタイトル挑戦ではオスカル・バルデス(メキシコ)を相手に判定勝利、かと思いきやのメキシカン判定による敗北。
2度目の挑戦では、挑んだ王者シャクールがウェイトオーバー、変則タイトル戦となった上に敗北。
3度目の挑戦では、多くのラウンドを支配するも2どのダウンを奪われてのマジョリティドロー、ここでも戴冠はならず。
シャクールに負けたのは仕方がないとしても、バルデス、ナバレッテには勝利していたともみえる戦いだったので、なぜ、このボクサーがまだ戴冠を果たせないでいるのかは非常に不思議なところです。
なので今度こそは、とも願うものの、この戦いはどちらにも勝って欲しい戦いであり、個人的にはやはりどちらも応援できない戦いです。
だからこそ楽しみであり、どちらが勝っても負けても嬉しさも切なさもある、これぞボクシングの奥深さが残る試合になるのでしょう。
両者共に中間距離で戦うボクサーで、高い技術を誇るだけに予想としては技術戦。
ただし、フォスターはここ数戦でその気持ちの強さを存分に見せています。劣勢になっても盛り返す力のあるボクサーは需要があり、つまらなくなってしまうメインイベントを補う形でこの興行に組み込まれたのではないか、と推察しています。
対するコンセイサンも、ナバレッテ戦で勝利への執念をみせ、自分のボクシングをかなぐり捨ててナバレッテへと迫っていました。あの戦いは、3度目の正直、タイトルへの執念を大いに見た気がします。
そこで実らなかったコンセイサンの執念は、4度目のタイトル挑戦となり、もっと燃え上がっているのではないでしょうか。
つまり、この試合は熱くなります。
スタイル・メイクス・ファイト、と言いますが、この戦いはスタイルの外でファイトが作られるかもしれません。
お互いがこれまで培ったものをかなぐり捨てて、勝利への執念を燃やす、そんな戦いが見られるのではないでしょうか。
次期挑戦者は?
この戦いの行方が気になるのは、ただ二人の素晴らしいボクサーが戦うから、というだけではありません。
WBCスーパーフェザー級の次期挑戦者は、力石政法です。
この力石は、このほど大橋ジムへの移籍を発表しています。
これは素晴らしいことだと思います。
3150FIGHTとの契約解消、そしてマッチメイクに定評のある大橋ジムへの移籍。
力石は先日までWBC2位でしたが、最新ランキングでは3位に交代。2位にはエドゥアルド・エルナンデスが入っています。(1位にコンセイサン)
謎すぎるメキシカン贔屓が炸裂しているわけですが、多少強引にでも世界戦を組むことができる大橋ジムのバックアップを受けられるなら安心です。
力石は10月に移籍初戦を戦い、その次が世界戦という予定だそうです。
その相手がフォスターなのか、コンセイサンなのか、はたまた別の団体の王者なのか。
いずれにしろ、日本人としてはこの階級で頭一つ二つ飛び抜けているのは間違いありません。
今後のスーパーフェザー級の動向に注目していきましょう。
アンダーカードと配信情報
この興行はトップランク興行であり、アメリカではESPNが生中継です。
メインカードは3試合で、上記ダブルヘッダーの他、キーショーン・デービス(アメリカ)がミゲル・マドゥエノ(メキシコ)と対戦。
マドゥエノというボクサーは、31勝(28KO)2敗という素晴らしいキャリアを持つボクサーで、2つの敗戦は元王者のジェスレル・コラレス(パナマ/内山高志からタイトルを奪う)、タイトルチャレンジャーのスティーブ・クラゲット(カナダ/つい先日テオフィモに挑戦)の2敗のみ。そして素晴らしいKO率を誇っています。
WBC、IBF、WBOのランキングで3位というキーショーン。ここに勝てばシャクール挑戦もあり得るのでしょうか。ライト級の新星は、遅くとも来年のうちにはタイトルショットを迎えるのでしょう。これもまた楽しみです。
【宣伝】
ストック品(在庫があるもので即納できるもの)のセールやってます!
珍しいボクシンググローブが揃うBoxingCafe、ぜひ見てみてください。
▼【注目】RIVAL社のウシクグラフィックTシャツも取り扱い開始!(残りはMのみ)