世界のフェザー級は群雄割拠。
そして、国内のフェザー級もいつの間にやら群雄割拠です。
いっときは国内フェザー級No.1だった阿部ですが、いつの間にか新鋭が一気に台頭、日本、アジアの2冠には日本人3人の王者たちが君臨しています。
彼らが阿部麗也と比べてどうなのか、彼ら3人の序列がどうなのか、これは戦ってみなければわからないことです。
ということで今回のブログは、10/18(金)に行われたダイナミックグローブ、そして今後の国内フェザー級戦線を見ていきます。
10/18(金)ダイナミックグローブ
阿部麗也(KG大和)25勝(10KO)4敗1分
vs
川本響生(吉祥寺鉄拳8)7勝(3KO)1敗1分
ルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ)に敗れ、いよいよ再起戦を迎える阿部麗也。
また世界の舞台に行くには、この国内のトップレベルとは言えない戦いで格の違いを見せて勝利することが必須。「先を見据えすぎて足元が疎かになる」という結果も考えられることもまた、事実。
阿部は勝って当然、勝ち方が問われる、という試合に対して、川本は「対世界ランカー」という大きく格上の、失うものは何もない試合。こういう時、タイトルこそかかってはいないものの、おそらく王者と挑戦者のようなモチベーションであり、いわゆる挑戦者の実力は3割り増しと捉えて良いでしょう。
阿部はその状態の川本、おそらく彼のボクシングキャリアで最も強い川本響生に、快勝することができるか。
注目の一戦のゴング。
初回、積極的に仕掛けるのは川本。阿部はゆったりとしたリズムから素早く左。
川本はかなりサイズがデカく、阿部が一回り小さく見えます。
中盤、川本がサイドに周り攻撃を仕掛けます。この川本、手も足もかなり速い。しかもステップも両手もかなりトリッキーな動きをしており、慣れるまでに少し時間がかかりそうなボクサーです。
2R、右リードをポンポンと出して距離をはかる阿部。阿部も変則的な動きでは負けていません、ノーモーションのダブルの左をヒット。
阿部は上体を大きく動かす分、バランスが崩れているのがちょっと気になるところです。ただ、やはり阿部が川本の動きが理解してきたように見えます。
3R、阿部の左が当たります。差し出すような左、あまりパワーは乗っていないように見えますが、コツンコツンとよく当てています。
川本も右カウンターを狙う展開、後半に入ろうかというところで阿部の左と川本の左フックが相打ち。これはどちらにも危険なタイミングです。
4R、すっと伸びる阿部の左ストレート。この左が川本のボディに刺さります。近づいたところの立ち振る舞い、パンチの出し方もやはり阿部が素晴らしい。
中盤、阿部は左のボディストレートをしっかりと打ち込んで、連打に繋げていきます。
川本も非常に気持ちが強く、反撃、お返しとばかりにボディを叩きます。
後半、阿部は川本にボディを意識させ、そこから左のストレートで川本の顔面を弾きます。いやこれは流石の駆け引き。
ちょっと川本は余裕がなくなってきたか。
5R、川本は左を伸ばして阿部のパンチを止めようとしますが、お構いなしに阿部は左をヒット。大きく弾け飛んだ川本も一気にそこから距離を詰めて強いワンツー、この辺りの嗅覚は素晴らしいですね。
阿部はプレスをかけて試合を優勢に進め、後半、またも左のダブルをヒット。川本は一瞬のスピードが非常に速いですが、ちょっとタイミングを読まれているイメージ。
6R、川本の攻撃、阿部はギリギリの距離で外し、プレス。阿部はスムーズなボディムーブで川本を空転させ、川本がコンビネーションで攻め入るとステップでかわします。
阿部の左が上に来るのか下に来るのか、その判断がつかないような川本。
後半、阿部が右のアッパーから左のストレート、そこからチャージ。川本はかなりきついか、ステップワークでエスケープ。
7R、川本のパンチはまだ非常にキレています。ステップワークも良い。それでも、空間を自在に操っているのは阿部、小さなフェイントで川本にパンチを出させて空転させています。
川本も非常に力強いパンチを放って気持ちを見せます。ただ、両方の鼻から出血もある川本、ここで気持ちを切らさず、また、単純にならずに戦えるか。
阿部が大きく入ってややバランスを崩したか、と思えば川本は一気に距離を詰めます。このタイミングは素晴らしいですが、それでも阿部を捉えきれません。
8R、川本が良い左フック。この左フックは非常にキレがあって速く、アングルも良い。
それをもらっても一切動じない阿部、川本の右がヒットしてもすぐさま左を返す、やはりボクシングのキャリアは圧倒的に阿部が上。
9R、川本が積極的にストレートを振ってきます。これまでの最長が6ラウンズのようですが、スタミナ、気持ち、集中力、どれも素晴らしい。
中盤、阿部は左アッパーをヒット、川本が上体を大きく動かした後にアッパーを狙っているようです。
川本はかなり苦しいか、それでもまだパンチにキレはあります。
ラストラウンド、少し距離が詰まります。この距離では川本のパンチも当たります。グイグイと行く川本、阿部の右フックも入りますが、川本は止まりません。
阿部のコンパクトな右フックが川本を襲い、やはりこのラウンドも阿部か、と思ったところで、阿部は気を抜いてしまったのか、左ストレートに対する川本の右のリターンを被弾!
動きが止まった阿部、若干足元がおぼつかなくなり、クリンチ!
リードを伸ばして牽制、左で飛び込んでクリンチに逃げる阿部、このチャンスに川本はチャージできず。。。!
ラスト、ヒヤヒヤしましたね。。
川本響生、素晴らしいボクサーです。本当によく見せ場をつくりました。
判定は、96-94、97-93、98-92、阿部麗也。
快勝、とはいかなかった阿部ですが、川本は強かった。21歳、まだまだこれから強くなるボクサーですね。
阿部は阿部でベテランらしく、やはりボクシングでは一回り以上、上回っているように見えました。そして今戦は攻撃的で、その分危険なところもありましたが、やはり魅力的なボクサーですね。
世界のフェザー級
これまで何度も書いてきたことですが、世界のフェザー級は大混戦です。
個人的にはラファエル・エスピノサ(メキシコ)に期待したいところではありますが、次戦はロベイシー・ラミレス(キューバ)との再戦です。
2大会連続金メダリストの肩書きは伊達ではないでしょうから、エスピノサにとって厳しい戦いになりそうです。
最近の動きではWBCがレイ・バルガス(メキシコ)を休養王者に認定しよう、という動きがあるらしく(正式な発表は10/18時点ではありません)、バルガスvsブランドン・フィゲロア(アメリカ)の団体内王座統一戦の話は立ち消えとなるようです。
9月発表のランキングでは1位がラミレス、2位にブルース・カリントン(アメリカ)、3位にスレイマン・セガワ(ウガンダ)なのですが、おそらくセガワはもう少しランキングが落ちるでしょう。そして4位にフルトン。この辺りの争いになってきそうですね。
日本のフェザー級
日本王者、松本圭佑(大橋)は昨日、タイトルマッチで初のKO勝利を挙げました。とはいえ、彼がタイトルマッチで戦ってきたボクサーは、佐川遼(三迫)との王座決定戦、リドワン・オイコラ(まだ日本にいるのでしょうか)、前田稔輝(グリーンツダ)、藤田裕史(井岡)と錚々たる面々。
アマ時代からのライバル、堤駿斗(志成)がウェイトオーバーによりフェザー級戦線から離脱してしまったのは残念ですが、堤がいなくともライバルには事欠きません。
OPBF王者、中野幹士(帝拳)は先月、王座決定戦を4RKO勝利で飾り、見事なタイトル初戴冠。日本人からは大戦を避けられているのか、それとも帝拳本来の育て方なのか、日本人との対決が少ないのは残念。やはり、その力を測るには日本人のボクサーと戦ってほしいのが本音です。
ただ、この破格のパワーを持ち、さらに技術に優れる鉄の拳は、誰とやっても期待を持てるというボクサーでもありますね。
ゴールデンエイジと呼ばれる95年世代、その最終兵器。
本当はここにWBOアジアパシフィック王座を加えての三つ巴、という戦いを見たいところですが、このタイトルの王者は中野と同門の藤田健児(帝拳)です。
「技術」と一括りにして良いものかは迷う藤田のボクシングは、「フジチェンコ」と呼ばれていることで想像がつくような多角的なアングルからパンチを打ち込む、足を使ったボクシングです。
強打とオーセンティックさを兼ね備えた松本、スーパー強打と技術を備えた中野、そして運動量と多彩な技術を持つ藤田。三者三様、それぞれがそれぞれの強さを持った王者たちが今、日本・アジア王座に君臨しています。
そして今回勝利を手にした阿部麗也もまだ世界ランキングに入っています。
このフェザー級という階級で、世界挑戦できるだけでも大したもの。しかも、大手ジムの後ろ盾のない阿部は、アマ経験はあれども叩き上げという言葉がよく似合います。
大橋ジムにしても、帝拳ジムにしても、ある一定のランキングと期待があれば世界戦を組むことは難しくはないはず。やはりこの日本トップレベルでの潰し合い、そこから世界への道を切り拓く、そういった戦いに阿部も加わってほしいところですね。
あと忘れそうになりましたが亀田和毅。以前のような美しいスピードあふれるボクシングは消え、前戦(レラト・ドラミニとの再戦)は頭から突っ込むだけの非常につまらないボクシングでした。
元々、我々世代のボクシングファンは「亀田アレルギー」を持っているものだと思うので、たった1試合で評価が大きく下がってしまうのだと思います。ということでおそらく近くアンジェロ・レオ(アメリカ)との指名戦の話になるのでしょうが、頑張れレオ、と思ってしまうでしょうね。
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