10月に入りました。
9月中旬には元スーパーバンタム級の統一王者、スティーブン・フルトン(アメリカ)がフェザー級で復帰。
先週末はフェザー級のビッグプロスペクト、ブルース・カリントン(アメリカ)がスライマン・セガワ(ウガンダ)との世界上位ランカー対決をかろうじて制しました。
フェザー級で期待されたアメリカ人ボクサーたちの厳しい戦いは、この階級の群雄割拠さを物語っています。
この階級は今、混沌としています。
絶対王者はおらず、スタイル的にも様々であることからその判断もしづらい。まさに戦国時代といって良い階級です。
この階級が落ち着くにはもう少しかかりそうなので、今回のブログではこのフェザー級という魔境について書いていきたいと思います。
リングマガジンランキング
いつも私がアテにしているリングマガジンランキング、今回ばかりはアテになりません。上記のランキングは日本時間で9/29現在のものですが、はっきりいってこの時点で省かれるボクサーが多いはず。
まず1位のリー・ウッドと10位のジョシュ・ウォーリントンはすでにこのフェザー級ランキングから外されているべきボクサーです。
ウッドはもう1年試合をしていないし、スーパーフェザー級転向を表明してフェザー級の王座を返上しているし、そのウッドに負けたウォーリントンはスーパーフェザー級戦でつい先週、アンソニー・カカスに負けています。まあ、これはそろそろ更新されるのでしょう。
そのほかの2位〜9位に関しては、ランキングをつけるとすれば非常に難しいのかもしれません。
WBA王者:ニック・ボール
「レッキング」(破壊者)ボールとはなかなか良いニックネームです。ニック・ボール。
今週末にロニー・リオスを相手に初防衛戦を行うボールは、ビートルズの故郷である港町リバプールの出身であり、レイ・バルガスと勝利に近いドロー、レイモンド・フォードにドローに近い勝利を挙げたボクサーです。
リオスを相手に良い勝ち方ができず、またも接戦となれば「善戦マン」の烙印を押されてしまう可能性があります。誰が相手でも、抜け出せないレベルとなり、今後接戦を落としまくる可能性だってあります。
自信をつけて素晴らしい勝ち方を期待しているし、ボールからすればリオスは戦いやすいボクサーのはずですから、きっと強さを見せつけてくれるはずです。
↓プレビュー
WBC王者:レイ・バルガス
WBC暫定王者:ブランドン・フィゲロア
WBCのフェザー級王者というのは、年に1度しか戦ってはいけない、という決まりがあるようです(嘘)。
2022年7月、マーク・マグサヨを相手にタイトルを奪取、かろうじて2階級制覇を達成したバルガスは、2024年3月にニック・ボールを相手にドロー防衛。ちなみに両方の試合でダウンを奪われている上、その間にスーパーフェザー級進出を試みて見事に失敗。オシャーキー・フォスターを相手に初黒星を喫しています。
そろそろ陥落のしどきです。
さて、このWBCタイトルには暫定王者がおり、これはバルガスがスーパーフェザー級に進出するために防衛戦ができなかったため、設けられたものです。これを獲得したのがブランドン・フィゲロアであり、マグサヨとの暫定王座決定戦は2023年3月に行われています。
なのでこのバルガスvsフィゲロアをやるチャンスはいくらでもあったわけですが、いまだに実現せず。
フィゲロアはこの団体内王座統一戦が実現しないことから、2024年5月に暫定王座の防衛戦を挟んでおり、ジェシー・マグダレノを9RKOで退けています。
激闘型のフィゲロアの選手寿命はそんなに長くないと思うので、早いところこの試合を実現してもらい、フィゲロアがバルガスのハートをブレイクするところを見たい。
一応、6月頃にWBCがこの試合をオーダーしていますが、それから4ヶ月、おそらくまだ音沙汰がありません。
WBO王者:ラファエル・エスピノサ
ニック・ボールは身長157cmですが、このラファエル・エスピノサの身長は185cmです。
その差はなんと28cm、この2人が同じ階級というのはやっぱり見てみたいファイトの一つです。
ラファエル・エスピノサは2023年12月、当時フェザー級最強と称されたロベイシー・ラミレスが「アポロ・クリードのように」選択した挑戦者であり、そこで「ロッキー・バルボア」となったボクサーです。確か当時のエスピノサのランキングは14位とか15位だったと思いますが、とてつもないビッグアップセットでした。あ、ロッキーは初挑戦ではタイトル獲得していないので、ロッキー以上に劇的です。
このタイトルショット以前は「誰ともやっていなかった」エスピノサは、初防衛戦を楽勝でクリアしましたが本当の評価はこれからのボクサーです。現在WBOから指名挑戦者であるロベイシー・ラミレスとの再戦をオーダーされており、これは12月に起こるとされています。エマニュエル・ナバレッテvsオスカル・バルデスの再戦のアンダーカードに組み込まれるのでは、という噂ですが、メインよりもこちらの再戦の方が個人的には興味深い。
IBF王者:アンジェロ・レオ
エスピノサがラミレスを破ったのと同様に、IBFもアップセットで新王者の誕生となりました。ロベイシー・ラミレスが敗れてから、フェザー級最強はルイス・アルベルト・ロペスだとされ、この破天荒なボクシングをする王者は、敵地で戦うことも厭わないマッチョな王者であり、非常に人気を博しました。
ハイペースで試合を行う王者でもあり、ロペスには王座統一の期待もかかりましたね。
ただ、先を見すぎて足元が疎かになってしまったのか、アンジェロ・レオに不覚をとってまさかの10RKO負け。この試合のレオは見事でしたが、レオが階級最強かと言われればちょっと違和感があります。その理由はやはりスーパーバンタム級でフルトンに負けているからで、しかもその負け方というのがフルトンにアウトボックスされたわけでもなく、近接戦闘、つまりはレオの土俵でフルトンが戦っての判定負けだったからです。
最強に勝利したから最強というわけではない、ボクシングはジャンケンのようなものです。
だからほんの少し、このレオの強さに懐疑的な目を向けてしまっている自分がいます。ラファエル・エスピノサとアンジェロ・レオ、この二人はもしかしたら狙い目の王者なのかもしれません。
本領はこれからですが、ProBoxプロモーション所属のアンジェロ・レオは、大手プロモーターほど試合を組むのが難しくない相手です。IBFが指名戦をオーダーした暁には、日本で試合が行える可能性もありますね。
コンテンダー
WBAは1位にブルース・カリントン、2位にスティーブン・フルトン、3位にルイス・ネリと続きます。カリントン、フルトンは勝つには勝ったからランキングは下がらないのではないかと思います。10/1に発表されているはずだから、更新されているかもしれません。
4位にはミルコ・クエジョ、これは14勝(11KO)無敗という24歳で、今年3月にスライマン・セガワをカリントンより明確に降しているボクサーです。もう少しキャリアを積んでから世界挑戦の方が良いような気がしますが、すでにタイトルを狙える位置に来ている強いボクサーです。
5位、6位がオタベク・ホルマトフとレイモンド・フォード、かつて王座決定戦を争い素晴らしいファイトを展開した二人。7位にカルロス・カストロです。
WBCはトップコンテンダーがロベイシー・ラミレス、2位がカリントンですが、暫定王者にフィゲロアがいるのでまずバルガスはフィゲロアとやってほしいですね。さほど顔ぶれは変わりませんが、5位にナサニエル・コリンズという英国ボクサーが入っています。
IBFは1位に先日の挑戦者決定戦を勝ち残った亀田和毅、3位にはジョナサン・ロペスというどこにでもいそうな名前のボクサー。17勝(12KO)無敗という戦績で、リカルド・メディナ、エドゥアルド・バエスらに勝利しています。弱冠21歳。
WBOは1位にロベイシー・ラミレス、2位にカリントン、3位にフルトンと上位陣はあまり変わらず、4位にアーノルド・ケガイ。
日本人コンテンダーたち
ここ最近、日本人コンテンダーたちもいよいよ世界の足がかりを掴んできているように思います。
一番世界に近いのは亀田和毅で、IBFのトップコンテンダーであると同時にWBOでも5位。次はIBFで6位、WBCで8位につける阿部麗也、ロペスは相性が悪すぎましたが、次のチャンスを狙える位置にはいたい。
松本圭佑もIBF7位、WBC9位と徐々に順位を上げており、まだもう少し世界挑戦にはかかりますが、ここから国内のサバイバルマッチに突入していくのでしょうか。
その松本と国内ライバル対決があるのかないのか、そもそも次の試合はいつなのか、という堤駿斗、ここでの足踏みは勿体無いですが、仕方のないことでもあります。
OPBF王者、中野幹士は1発強打、そしてWBOアジアパシフィック王者の藤田健児は和製ロマチェンコ。同じ帝拳ジム所属のためぶつかることはないですが、この両対象のアジア王者は日本王者松本にとっての壁ともなり得る存在で、こういうサバイバル戦が日本で組まれるのであれば、非常に楽しみなマッチアップとなります。
これらの日本人ボクサーたちが世界タイトルマッチにたどり着くのが先なのか、それともモンスターがフェザー級に来るのが先なのか。いずれにしろ、この国内フェザー級戦線を勝ち残り、世界タイトルへの切符を掴むボクサーがいたとするならば、vs井上尚弥との日本人対決というのも現実味を帯びてくるのかもしれません。
そうなれば国内のボクシングはまた一層盛り上がりますね。
来年、再来年、もしかしたらあっという間に勢力図が変わるかもしれないフェザー級のトップ戦線。結果、どのような状況になるのかを楽しみにしましょう。
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