いよいよLIVE BOXING第7弾、当日。
井上拓真の防衛戦、中谷潤人の王座挑戦、そして田中恒成の王座決定戦。
個人的に一番楽しみなのは井上拓真の防衛戦であり、その次に中谷、田中と続きます。
チケットには16:30開場で17:00試合開始と書いてありましたが、実際は17:00開場でしたね。
アンダーカードのデビュー戦同士の試合が終わり、アマプラの中継が開始。ちなみにこの第一試合も良い試合であり、すでに客入りもまあまあだったので非常に盛り上がりましたね。
やっぱり両国は良い会場です。
さてさて、ということで今回のブログは、Amazonプライムビデオpresents LIVE BOXINGの観戦記。
↓プレビュー記事
2/24(土)両国国技館
ジョナス・スルタン(フィリピン)19勝(11KO)6敗
vs
増田陸(帝拳)3勝(3KO)1敗
堤聖也に大善戦した増田陸、復帰戦でジョナス・スルタン戦。
スルタンが世界トップレベルか、というとそうは思いませんが、はっきり言ってデビューたった5戦目で挑む相手ではないことは明白。
堤への善戦で自信をつけたのか、それとも何か急がないといけない理由があるのか。
初回、シャープなジャブの増田。スルタンはのろっとしたリズムから、こちらも攻撃は鋭いですね。
中盤、増田のワンツーが浅くながらもヒット。増田はジャブが非常によく出ている印象で、これは素晴らしい。
とはいえスルタンもやっぱり良い、と思っていたら、後半、増田のボディストレートがカウンターとなってヒット!
スルタンは悶絶してうずくまり、立とうとする意志はあるものの完全に鳩尾にはいっていらしく、そのままテンカウント!!!
増田陸、なんと初回KO勝利!!!!
いやーこれは素晴らしい。ショートの左ボディストレートとは。
やっぱりパンチあるボクサーは怖いですね。堤は本当によく勝った。
WBO世界スーパーフライ級王座決定戦
田中恒成(畑中)19勝(11KO)1敗
vs
クリスチャン・バカセグア(メキシコ)22勝(9KO)4敗2分
これは正直あまり心配事がない、という試合です。田中恒成には期待しかなく、井岡との再戦が統一戦で実現することを願うのみ。
それがもし、4団体統一戦だったらいうことなしですね。
さて初回。
田中のジャブが鋭い。バカセグアはやっぱりバランス悪いですね。ただ、良い左ボディを持っているのと、強振してくるので近い距離では注意が必要です。
2R、バカセグアがステップを踏んで、執拗な左。バカセグアは意外とボディムーブも上手く、田中の顔面へのパンチは思ったほどは当たりません。しかしそれ以上に田中のディフェンスはよく、バカセグアの攻撃はそのほとんどが空を切ります。
田中としてはこのようにバカセグアを空振りさせたいですね。空振りすると、バカセグアはバランスを崩す傾向にあります。
3R、バカセグアがギアアップ。ギアアップ、というかこのままではいけないというところでかなり必死に振ってきているようなイメージ。この振りは非常に大きく、かなり疲れるんではないでしょうか。
大振りということもあるし、ハンドスピードは倍くらい違います。このバカセグアの大振りの後の田中のリターンが良い。
4R、バカセグアはあまりにも当たらないのと、攻撃した後にすぐにリターンをもらってしまうことでちょっと弱気になったのか、下がることが増えている気がします。
バカセグアが勇気を持って連打を繰り出すと田中はサイドに回ってエスケープ、体に当てさせないようにしてバカセグアの攻撃を遮断、これは素晴らしい戦い方ですね。このポジショニングという概念が、勢いで3階級を制覇した頃の田中構成と違うところでしょう。
5R、田中はこのラウンドから近くで戦おうということなのか。ガードを掲げてまずは押し合いから、ボディの打ち合いを仕掛けます。ボディの打ち合いと押し合いを経て、バッティングでの中断を挟みながらも、田中がブロッキングしてからのアッパーが非常に有効、決着は近いように感じます。
6R、またも接近戦。田中の右アッパーと左ボディが良い。バカセグアも時折強いパンチを返していますが、やや疲れもみえます。
田中は一瞬でポジションを変えて、アングルを決めての左ボディ、かなり良いのがはいっているようにみえますが、バカセグアはめちゃくちゃ頑張ります。終盤には力強く反撃、ハートも強いですね。
7Rも接近戦。田中のパンチは非常に速く、左のボディはかなり的確に思いますが、バカセグアは顔面もボディも強いようです。ちょっと引くほどタフですね。メキシカンがここまでボディに耐えられるとは。
8Rも展開は変わらず。しかし後半、田中が左ボディから右を打ち下ろすと、バカセグアは動きが止まります!ここでチャンスの田中は攻め入りますが、バカセグアは田中にもたれかかりエスケープ。しかしここで足が言うことを聞かないのかロープ際でそのまま絡まり、これがダウン裁定。
9R、ちょっと倒すことを意識してしまったか、ここは田中はボデをあまり打てず。顔面へのパンチが多く、それも当たってはいるのですが、やはりバカセグアも折れず。それでもバカセグアはもう限界に見えます。
10R、かなりダメージを溜めているように見えるバカセグアですが、田中はカウンター狙いで手数が少なくなっています。ちょっと倒そうと言う意識が強すぎるか。
この辺りのラウンド、田中の手数が減ったことによりバカセグアにポイントが流れている可能性はありますね。
11Rもシャープだけど単発気味の田中の攻撃。バカセグアはタフで、一発で試合を決めると言うのは難しそうだからこそ、まとめてのTKOを狙って欲しいところ。
バカセグアは頭から入ってくるのと、ショルダーを思いっきりぶつけてくる感じなので、田中としてもやりづらいでしょうね。ただ、田中はよく集中力をキープしており、終盤にはワンツーをヒットしています。
ラストラウンド、ここまで圧倒しつつも、あとはタフなバカセグアを倒せるかどうか。
このラウンド中盤に田中は幾度もワンツーをヒット、おそらく若干のスリッピングアウェーでダメージを逃していそうなバカセグアは果敢に打ち返し、ここも倒れず。
最後まで田中が優勢の中、ゴング。
と言うことで、数ラウンドポイントを失っているジャッジもいましたが、結果的には田中恒成が危なげなくの完勝です。
ただ期待していたのは危なげのない完勝という訳ではなく、やっぱり倒して勝つ姿です。
期待が高すぎた、というのはそうかもしれないですし、このバカセグアはボクシング自体は上手いとは言えませんが、とてつもないタフネスを持っていた、ということも事実だとは思います。それでも、やはり連打でのTKOへ持っていくやり方もあったのではないかとも思います。
勝利者インタビューでは、まさにファンが期待する「4団体統一戦での井岡戦」をぶち上げた田中恒成。井岡vsエストラーダが無事に決まり、田中vsプーマが決まり、井岡と田中がそれぞれ勝利すれば、プラットフォームの問題は若干でるのかもしれませんが、それは十分に可能。
来年あたりに期待したいところですね。
WBC世界バンタム級タイトルマッチ
アレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ)28勝(14KO)3敗5分
vs
中谷潤人(M.T)26勝(19KO)無敗
昨年のKOオブザイヤー、中谷潤人の3階級目の挑戦は、世界中が注目するトピックです。
本人も言っているように今回初めて「王者に挑戦」という中谷ですが、すでに2階級を制覇し、防衛戦もしっかりとこなしているので、その部分の心配事はあまりない。
↓世界が注目、サンティアゴvs中谷のピックアップ記事
ともあれ、海外でのこの興行の見出しは基本的にはサンティアゴvs中谷であり、試合順の発表がクソ遅かったこともありおそらく勘違いをされていると思われます。
それを疑う余地もないほど、評価の高い中谷潤人、3階級目の世界タイトルマッチのゴング。
初回はまずは距離の探り合いから始まります。小さすぎて逆にやりづらいであろうサンティアゴを相手に、早々に距離感を把握したのか中盤に中谷がワンツー。サンティアゴのガードの上ですが、こうしてあたるところを見せておくのは非常に大事ですね。
逆になかなか距離の掴みきれないサンティアゴは届かないジャブくらいしか手が出ませんでしたが、終盤、ようやく前に進みながらの連打。
この勢いこそが、サンティアゴの本領というものです。
2R、やっぱりサンティアゴからは距離が遠く感じるのか、未だ攻め込めず。中谷のジャブのタイミングが良いこともあり、サンティアゴが行こうとしたところにまっすぐのジャブを差し込みますね。
サンティアゴはたまに飛び込みフックを売ってきますが、ちょっとバッティングの危険性がある、ということ以外はさほど効果的ではないようにみえます。飛び込んでなお遠い、中谷の間合い。
しかし終盤、サンティアゴは右ボラードから左をヒット!会場の2階席あたりから「ボラーレ!!」という声に反応したわけではないのでしょうが。ちなみにボラーレは乾杯です(笑)近くの人突っ込んであげてー
3R、とにかくなかなか近づかないサンティアゴ、なす術なしか。強引に入らなければ届きそうにはありませんね。中谷は非常に長いワンツーをヒットするなどして優勢、サンティアゴは前ラウンド同様にボラードから入ろうとするものの、バックステップされて届かず。
同じ手が2度も通用しない、なんてもう漫画のレベル。
4R、サンティアゴがギアアップ。さすがドネアを攻略した王者、自分が何をすべきかわかっています。ここで流れを変えておかないとまずい、という嗅覚が働いたのか、吹っ切れたようなアタックです。
それでもなお、当たるのは中谷の左。サンティアゴが勇敢に攻め入る分、中谷の左がより深く入ってしまうのは致し方ありません。サンティアゴはリスクをとってアタックを仕掛けてきます。
このラウンド終了後の途中採点では、3者ともに40-36で中谷。
5R、とにかく中谷の距離を攻略できないサンティアゴ。
中谷は絶対にジャブを忘れないし、スタンスを広く取って自分の前足を相手の前足によせ、サンティアゴが前に出にくい状況をつくっています。
その上でサンティアゴが攻めてくると、前足を下げるだけで距離を作る。中谷は若干前傾に構えているので、もしかしたらサンティアゴは届くかも、と思って手を出しているかもしれません。それはほんの少し頭をずらせば届かない距離となり、この術中にはまっているような感じで、サンティアゴにとって絶望的な事柄です。
6Rに入ると、今までどっしりと構えていた中谷がステップをとりはじめます。今まではサンティアゴの突進を警戒し、攻められにくいスタンスだったものを、自ら動きやすいスタンスに変更した、ということ。
つまりこれは攻撃姿勢か、と思った瞬間、ワンツーでダウンを奪取!
かなり深く入ったまっすぐの右ストレート、ここから立ち上がったサンティアゴに対して遠くから踏み込んで荒々しく拳を振るうと、最後は右フックでしょうか、サンティアゴが2度目のダウン!!!
これで試合がストップ、中谷潤人、6RTKO勝利!!!
これはちょっと強すぎて引くレベル。。。バンタム級初戦でこのパフォーマンス、はっきり言ってバンタム級初戦の頃の井上尚弥(体調不良のジェイミー・マクドネルを初回TKO)と比べても遜色はないほどではないでしょうか。
元々超やりづらい長身サウスポーという恵まれた体躯を持ち、衰えたとはいえドネアのカウンターにも耐えたサンティアゴをノックアウト。大激戦区のバンタム級に颯爽と現れ、早々に階級最強ではないかというパフォーマンスを示した中谷潤人。
前半でしっかりとボクシングを組み立て、諸々を理解した上で決めるべきところで決めた、みたいな感じ。
これはマジでやばいですね。。。
WBA世界バンタム級タイトルマッチ
井上拓真(大橋)18勝(4KO)1敗
vs
ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)34勝(23KO)3敗2分
さてさて、村田諒太氏は「アンカハスは後半弱い」と言っていましたが、果たしてそうなのか。
確かにエネルギッシュだからこそボクシングはエネルギーを必要とするので、前半ほどの勢いはなくなるかもしれませんが、はっきり言ってそれでも強い。
さらに、ずいぶん前から減量苦が伝えられていたアンカハス、この後半のパフォーマンスこそが減量の影響だったことも十分に考えられます。
セミファイナルでは中谷潤人が素晴らしいパフォーマンスを見せてサンティアゴをノックアウト、では井上拓真はどうか。
初回、まずは立ち上がり、拓真の調子は良さそう。ただファーストヒットはアンカバスのワンツーか、浅いながらもヒットしているようにみえました。
フェイントを多用する拓真、アクションは非常に多く、先に仕掛けられてはいるものの、やはりアンカハスは怖い。比較的フェイントに反応することは少なく、落ち着いており、そこから一気に来るのが非常に怖いのです。互いに相手の入り側に前手のフックを狙っています。
2R、アンカハスのワンツーはよく伸びます。拓真のパンチはあまり届いてないようにみえます。ただ、アンカハスの入り際に打つ右のタイミングは良いので、この右をしっかりあてるということと、その後に連打が出せれば良いかもしれません。
もしかしたらアンカハスが打ってきたらディフェンスに専念するも良いかもしれませんね。
3R、若干距離が近くなったんじゃないでしょうか。これは、拓真が少し距離を積めたのかもしれません。拓真は絶対にもらってはいけないアンカハスの左をダックしてかわしていましたが、中盤に初回よりも深くヒットされています。
この距離は危険、とも思いますが、その後、拓真が右カウンターをヒット。
その後も強いワンツーをヒット、今日の拓真は非常にアグレッシブネスを持っており、さらに、時折非常に鋭く大きな踏み込みを見せています。
このバランスを崩すほどの大きな踏み込みは、これまでの試合であまり見せなかったものかもしれません。
4R。前ラウンドの右カウンターにより、ちょっとアンカハスは強い踏み込みをしづらくなったかもしれません。このラウンド中盤くらいから接近戦。この距離は超危険だが、拓真の右ボディアッパーが入っているような気がします。
ただ、このアンカハスというボクサーは、というかフィリピン人やメキシコ人という攻撃的なボクサーたちは、とにかく体のどこかにあたれば調子に乗って次々とパンチを繰り出すことができるボクサーたち。このアンカハスも例外ではありません。空振りさせたいところ。
5R、ちょっと接近戦でも分が悪いと感じたか、アンカハスはとにかく中間距離からの攻撃を敢行。アンカハスが打ち気に逸るなら琢磨にとっては好都合、いつものボクシングをすればハマります。
そう思った通り、ここにきて素晴らしいカウンターを打ってペースをつかんでいます。
6R、井上拓真はすでにアンカハスの強い踏み込みにも対応しています。拓真自身の踏み込みもいつもより鋭く、アンカハスの頭が動いてないと見るとワンツーをしっかりとヒット、本当によく相手を観察しています。
7R、リターンにしろ先手を取るにしろ、1発で終わらないのが良いですね。アンカハスはちょっと焦りがあるかもしれません。このラウンドは近接戦闘に突入、ここでも拓真がうまい。1発の強さはアンカハスなのかもしれませんが、とにかく接近戦の巧さで大きく拓真、結果、打ち勝つのは井上拓真!!アンカハスは徐々にできることがつぶされていきます。
8Rも打撃戦!アンカハスの右フックはちょっと危険に思います。拓真も左ガードが若干空くタイミングがあるか、被弾もしています。それでもなお、余裕を感じさせるのは拓真のほう。
ポイント的にはどっちに転ぶのかは分かりませんが、この近い距離での打撃戦でも引けをとっていない、というのはでかい。ボクシングの幅としては、拓真の方がありそうです。
9R、拓真はどういう戦いを選択するか。ここは距離をとってスタート、アンカハスが出てくると体を寄せて右ボディ。この右の角度が素晴らしい、と思ったら拓真的にも手応えがあったのか、これをダブル!この右ボディアッパーが強くヒットすると、アンカハスは一拍置いて、ダウン!!!
この右ボディ、カウンターで入っていたらしく、アンカハスは悶絶して立てず!!
井上拓真、9RKO勝利!!!!!
超強敵、井上拓真にとっても「格上」として申し分のない、スーパーフライ級で長期政権を築いていた名王者、ジェルウィン・アンカハスにこの勝ち方!!
もはや誰も王者としての資質を疑う人はいないでしょう。
元々うまかった中間距離でのボクシング、そのディフェンス勘、からの強く鋭い踏み込み。このリスクを取れるボクシングこそが、井上拓真にとって「覚醒」と言えるものではないでしょうか。
もう何年も待ち望んできた、井上拓真の覚醒。この相手にこの勝ち方、というのを持って、この井上拓真もまた、バンタム級最強を名乗れる資格があると思います。
なのでバンタム級最強は、井上拓真、中谷潤人、そして前戦までで素晴らしいパフォーマンスを発揮してきたエマニュエル・ロドリゲスと、そのロドリゲスと互角の戦いを演じたジェイソン・マロニー。つまりは大混戦。
もはや言葉でどちらが強いと言っても無駄なことでしょう。
このトーナメントは、おそらく日本を中心として開催されるはず。
「その時」が来た時、もしかしたらこの4強が崩れている可能性すらある、というのが今のバンタム級。
今日を経て、バンタム級がさらに楽しみになりました。
次のバンタム級世界タイトルマッチウィークは5月。これまた楽しみにしていましょう!!
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