あっという間にもう一週間を切ってしまいました。
今年5月に東京ドームでルイス・ネリ(メキシコ)を退けた我らがP4P、井上尚弥はこの後順当にいけば年末に今年3度目のリング登場となり、非常にアクティブな活動を見せています。
P4Pのトップボクサーが年3度のリング登場、というのはなかなか稀なことで、クロフォードやウシクは当然そんなことはしません。その前のカネロ・アルバレス(メキシコ)はスーパーミドル級を制した時、2021年に3度のリング登場があるものの、その前のローマン・ゴンサレス(ニカラグア)やゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)は当時そこまでアクティブに活動はできていませんでした。
当然のことながら、P4Pのボクサー相手に勝ち目が少ないと見るコンテンダーも多く、それを乗り越えてくるのは単純にお金の話になってきます。
なので、ここまでの戦いに恵まれるのは、その実力でP4Pにランクされる他、大きな資金力が必要になります。
今回の戦いでその資金力を持つもの、衰えたりとは言えどもジャパンマネーの源は、NTTドコモです。ドコモがチケットの買い方をややこしくしている、配信を皆に届かないようにしている、とも言えるので、これがサステナブルな活動なのかは良くわかりません。
とはいえ、この井上尚弥という稀代のボクサーが、試合枯れすることなく年に3度も戦えるのはこの大企業あってこそ。今はただ、これを享受しましょう。
ということで今回のブログは、井上尚弥vsテレンス・ジョン・ドヘニーのプレビュー記事。
9/3(火)有明アリーナ
世界スーパーバンタム級4団体統一タイトルマッチ
井上尚弥(大橋)27勝(24KO)無敗
vs
TJドヘニー(アイルランド)26勝(20KO)4敗
井上尚弥を含めて、2階級において4団体制覇を達成したボクサーは3人。テレンス・クロフォード(アメリカ)、オレクサンドル・ウシク(ウクライナ)。
このうちクロフォードは階級を変更し、ウシクは先月、IBF王座を返上しました。
さらにもう一人の4団体統一王者、カネロ・アルバレス(メキシコ)もIBF王座を剥奪され、8/27(火)現在、地球上で4団体統一王者は井上尚弥ただ一人です。
特にIBF王座について保持することは非常に難しく、指名戦を戦うことができなければすぐに剥奪されるという状況であり、そこに忖度はあまり感じません。ちなみに年末にIBFのトップコンテンダーであるサム・グッドマン(オーストラリア)との対戦がまとまらなければ、井上の王座も危ういのかもしれません。
さて、ともあれ、井上はこの4団体王座の2度目の防衛戦です。
昨年7月、当時階級最強の呼び声の高かったスティーブン・フルトン(アメリカ)とのWBC・WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチを8RTKOで圧勝、スーパーバンタム級デビューにしていきなり2冠を獲得。
その年の年末、ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)をビッグアップセットで破り、WBA・IBFの2冠を獲得したマーロン・タパレス(フィリピン)を10RKOで退け、早々に4団体を制覇しています。
このタパレス戦は苦戦などとも言われましたが、タパレスのあの戦法をものともせず結局はストップしてしまうあたりはさすがofさすがというところ。
そして今年の5月、マイク・タイソン(アメリカ)以来のボクシング興行となった東京ドームでのボクシング興行において、ルイス・ネリ(メキシコ)を6RTKOで屠り、見事4団体王座の防衛に成功しています。
そのリングでIBFの指名挑戦者であるサム・グッドマンがリングに上がるも、その対決は実現せず、おそらく次点の対戦相手候補であったTJドヘニーと戦うことになったのが今回の防衛戦です。
TJドヘニーというボクサーは私にとっては非常に不思議なボクサーです。
初めて見たのはおそらく皆さんと同じで2018年8月、岩佐亮佑(当時セレス)が持っていたIBF世界スーパーバンタム級王座に挑戦した時。
ドヘニーはデビュー以来オーストラリアで戦っていたので、東洋・太平洋圏を出ないボクサーでした。愛称は「Power」でしたし、KO率も高かったと記憶していますが、岩佐戦当時はさほどパワーを感じることはなく、どちらかというとごまかしがうまく、試合巧者である印象を受けましたね。
岩佐戦前の対戦相手としても世界的に名のある強豪との対戦経験はなく、たとえ岩佐の初防衛戦(エルネスト・サウロン)があまり良いパフォーマンスではなかったとしても、岩佐の勝利は固いのではないか、と思っていました。
しかしこの戦いでドヘニーは勝利を収め、見事世界王者に。母国アイルランドでも「アップセット」と紹介される勝利でした。
ただ、この時のドヘニーがとてつもなく強く映ったか、というと全くそんなことはなく、どちらかというと岩佐の不甲斐なさが際立った試合だったとも言えます。少なくとも当時はそう見えました。
後半、スタミナが切れかかっているドヘニーに攻め切ることはできず、ドヘニーも単発を打ってはクリンチで休むという内容。これは覚悟の差だったのか、準備の差だったのか。
初防衛戦では高橋竜平(横浜光)を相手に迎え、アメリカでの試合。この試合は格の違いを見せつけた結果となりましたが、2度目の防衛戦では当時のWBA王者、ダニエル・ローマン(アメリカ)との王座統一戦に臨み、判定負けを喫して王座陥落しています。
その後ヘスス・マルティネス(コロンビア)というどこにでもいそうな名前のボクサーを相手に再起を飾りますが、イオヌト・バルタ(ルーマニア)、マイケル・コンラン(アイルランド)といった当時のプロスペクトたちに完敗、見事なまでのアンダードッグ転落を見せてしまいます。
その後もサム・グッドマンの踏み台となってしまったドヘニーは、「元世界王者」の肩書を持つ、ちょうど良いアンダードッグに成り下がってしまった、そしてその肩書がある限り、今のドヘニーは重要があるのだろう、そう誰もが思っていたのだと思います。
そしていよいよドヘニーが2度目の来日を果たします。
時は2023年6月、今から14ヶ月前です。
当時のWBOアジアパシフィック王者、中嶋一輝(大橋)の相手、これは明らかに中嶋に箔をつけるための戦いに呼ばれたドヘニーは、大方の予想を裏切ってまさかの4R TKO勝利。
それならば、と大橋陣営が用意したチャレンジャー、ジャフェスリー・ラミド(アメリカ)もまさかの初回TKO勝利で屠り、突如として日本のリングで輝くボクサーとなりました。
ロートルと思われたボクサーがここまでの輝きを放つことは非常に稀なことであり、それが2戦連続となるともはや奇跡です。
そんな奇跡の男ドヘニーは、東京ドーム興行でルイス・ネリのリザーバーとして準備、この興行のアンダーカードでブリル・バヨゴス(フィリピン)を4R TKOで仕留めています。
サム・グッドマンに敗れてから日本のリングで3連続KO勝利。失うものが何もないとばかりに大きく降ってくる左のオーバーハンドと鋭い踏み込みは明らかな脅威であり、誰が相手であろうとも倒すことができる可能性を秘めています。
一発のパワーを比べれば、ルイス・ネリ以上であり、もしかすると井上尚弥過去最大のパンチャーなのかもしれません。
それでも被弾は多く、すでに37歳という年齢でもあります。
岩佐戦ですでにスタミナ難があったと思われるドヘニーは、今回も速攻勝負こそが唯一の勝ち筋でしょう。もう6R以降は希望が持てなさそうです。
ただ、実際はドヘニーはしたたかさを持ったボクサーで、決してパワーだけではありません。中嶋戦では幾度も素晴らしい反応、スウェーを見せてもいますし、岩佐戦ではクリンチワークやスタミナ切れを起こしてからのサバイバル術を見せています。
井上尚弥相手にそんなものは通用しない、ということは簡単です。
それでも何が起こるかわからないのがボクシングであり、井上尚弥といえどもドヘニーの一発を食えばわかりません。
お前はどっちの応援なんだ、と思われるかもしれませんが、やはり「アップセットは起こりうる」、「たとえ相手が最強であっても」ということは、ボクシングに携わる人は忘れてはいけないことであるし、捨ててはいけない希望でもあります。
(というのは自分がセコンドについた最近の試合で大いに感じ入った事です。)
そんなわけでドヘニーの奮戦に期待もしつつ、それでもやはり我らがモンスターの圧倒的強さを楽しみに待ちましょう。
配信情報と今後のスケジュール
この興行は、もちろんLeminoで生配信。
そしてもちろん、無料です。いつものことで麻痺していますが、これはとんでもない事ですよ。
配信は9/3(火)15:15〜となっており、試合開始時間は15:30からです。
ど平日の15:30からという、配信で見るとしても少なくとも午後休を取らなければならない、これはボクシング愛を試されているとしか思えませんね。
会場で見る、となれば有給休暇は不可避であり、さらに地方のファンが会場で見るとなれば一泊、翌日も有給休暇を取らなければなりません。
これはなんとかしてほしい所ではありますが、致し方のないことなのでしょうか。
私は仕方ないので有給休暇を取得し、そんな2日連続で休めるほど偉い身分ではないので車で帰ります。(電車では日帰りが無理なので)これだけは本当になんとかしてほしい。
ともあれ、Leminoはこちらから。
ちなみに、Leminoではファイナル・プレスカンファレンス、そして前日計量も中継してくれます。私はこのあたりにさほど興味はないのですが、興味のある方もいるでしょうから日程をまとめておきます。
最終記者会見
前日計量
いずれもLeminoで生配信です。
↓それでも最も注目すべきはセミファイナルです。
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