日本時間では、2/23(日)にベテルビエフvsビボル2、2/24(月・祝)にPrime Video Boxing。
見るべき試合が多すぎて、これはもうちょっとなんとか調整できないものかと思いますし、なんとも辛いことに両日とも終日仕事が入ってしまっています。(代休なし)
とりあえず睡眠時間を削ってでも見なければならないいくつかの試合、まずはPrime Video Boxingから、中谷潤人vsダビド・クエジャル、堤聖也vs比嘉大吾をプレビュー。

2/24(月)Prime Video Boxing
WBC世界バンタム級タイトルマッチ
中谷潤人(M.T)29勝(22KO)無敗
vs
ダビド・クエジャル(メキシコ)28勝(18KO)無敗
中谷は節目となる30戦目。日本でプロデビューできる17歳という年齢からプロで活躍している中谷は、非常に濃密なキャリアを積んできています。
格闘技は空手でキャリアをはじめ、ボクシング開始後は故・石井広三氏のもとでボクシングを学び、中学卒業後にアメリカにわたり、ルディ・エルナンデスに師事。
2015年、17歳でプロデビューしたのち、翌年の新人王トーナメントにエントリー、圧倒的な強さで東日本のトーナメントを制します。その後全日本新人王でのちの世界王者、矢吹正道に勝利して全日本新人王となり、翌年2017年には新設された日本ユース王座決定トーナメントに出場。王座決定戦ではのちの世界王者、ユーリ阿久井政悟を破って優勝、日本ユースフライ級王座を獲得。
翌2018年に日本フライ級の挑戦者決定戦を制して指名挑戦権を獲得、ときの王者の返上にともない2019年に日本王座決定戦に出場シてこれを獲得しています。
ハイペースで試合を組む中谷は、同年に元世界王者ミラン・メリンドを撃破、翌2020年にジーメル・マグラモとの王座決定戦に勝利してWBO世界フライ級王座を獲得しています。
コロナ禍で試合ペースが落ちましたが、アメリカでアンヘル・アコスタを倒して初防衛、日本で山内涼太(角海老宝石)を倒して2度目の防衛をクリアしたのち王座を返上、テストマッチを経て2023年5月、アンドリュー・モロニーとのWBO世界スーパーフライ級王座決定戦に出場します。
終始ペースを握っての最終ラウンド、左オーバーハンドでのノックアウトシーンは、軽量級にも関わらずこの年のKOオブ・ザ・イヤーに選ばれるという快挙を成し遂げ、アメリカでの知名度がここで格段に上がりました。
その後初防衛をクリアした後にこのタイトルを返上、2024年にはWBC世界バンタム級王者アレハンドロ・サンティアゴに挑戦。ドネアを破って王座についたサンティアゴを全く歯牙にかけず、6RTKOの快勝で3階級制覇を成し遂げています。
フライ級、スーパーフライ級時代よりも1段階強くなった感のある中谷は、バンタム級で3戦して3勝、3KO。決着ラウンドも6R、1R、6Rと後半までもいっていないという無双ぶりで、当然この階級ナンバーワンの評価を得ています。
離れてよし、くっついてよし、多彩なKOパンチを持っている中谷は、長身にしてサウスポーという誰もが嫌がる恵まれた体躯を持ち、細身の体からは想像もできないような強いフィジカル、そしてタフネスを持っています。今のところ、弱点らしいものは全く見当たらない、そしてこれからがプライムタイムという日本を代表するボクサーです。世界中から、井上尚弥との対戦を熱望する声があるのは客観的に見て非常に頷けることですね。
さて、ダビド・クエジャル。「ジェネラル」というニックネームを持つこのクエジャルは、メキシコでは中谷と同等に期待を寄せられているボクサーだと思います。
オーソドックスですが174cmと中谷と同じくらい長身のボクサーで、離れて戦うこともできるしくっついて戦うこともできるボクサー。非常に総合力は高いと見えます。これまでの最大の勝利は、元王者のルイス・コンセプシオン戦で、大激闘の末8RTKOという素晴らしい勝利を得ています。
ただ、中谷ほど考えてボクシングをやっている感じはまだしません。彼はまだ23歳で、28戦という素晴らしい経験を積んでいるものの、その内容の濃さにおいて中谷に及ばないのは仕方のないことでしょう。
このクエジャルはチーム・レイノソに所属しており、チーフトレーナーを務めるのはあのホセ「チェポ」レイノソです。エディ・レイノソのお父さんで、サウル・アルバレスに「カネロ」の名をつけた名トレーナー、彼をしてこのクエジャルは「世界王者になることは当たり前、ボクシング界のスターになる」と言わしめています。
それだけ才能のあるボクサーなのでしょう、良い距離感を持っており、近接戦闘でも長い手を折りたたんで器用にアッパーを打つ姿は、やはりメキシカンのそれだと感じますね。
名トレーナーに見出された若き才能、これははっきり言って侮ることはできません。少なくとも、日本で、飛ぶ鳥を落とす勢いの王者、中谷のオファーを受けたということは、確実に勝てる試合をこなすことしかできないボクサーとは一線を画すし、勝てる算段があっての来日なのでしょう。
中谷圧勝、楽勝というのが日本国内のムードであり、海外オッズも中谷-700、クエジャル+500と中谷が大きく優位。しかし、これは日本人の目から見れば思ったより競ったオッズかと思われます。
中谷の勝利は固い、と個人的にも思いますが、中谷が「次」を見据えすぎると良くない相手のようにも思います。なかなか危険な相手であるこのクエジャル、リングマガジンランキングでは8位にランクイン。評価の高いこのクエジャルに良い勝ち方をして、早朝のアメリカ二衝撃を与えてもらいたいものです。
WBA世界バンタム級タイトルマッチ
堤聖也(角海老宝石)12勝(8KO)無敗2分
vs
比嘉大吾(志成)21勝(19KO)3敗1分
ダビド・クエジャルは強豪とはいえ、これまでのレジュメを見た限りではやはり中谷勝利は固い。ただ、このWBA世界バンタム級タイトルマッチは比嘉大吾の気持ち次第で結果の予想が非常に難しい試合であり、かつ、最も好ファイトになる可能性が高い試合です。
日本ボクシング年間表彰には、武居由樹vs比嘉大吾、井上拓真vs堤聖也がともに年間最高試合としてノミネート、ともに好勝負を作り出せるアグレッシブネス、倒せる力を持っているため、この二人の試合内容というのは非常に期待ができます。
さて、二人が戦ったのは2020年10月26日のこと。驚くべきことにこの試合はライブ配信がなく、現地に行くことができなかった私は録画配信での視聴でした。
↓一戦目の観戦記
勝者もなく、敗者もいなかったこの戦いは、堤が世界タイトルマッチを獲得し、その挑戦者に一度は引退を決断シた比嘉大吾が挑む、という構図で日の目を見ることになります。
4年半も前の話であり、この「元世界王者、比嘉大吾とのドロー」という結果はおそらく堤に自信を持たせ、さらに堤の実力を完全に確定させることになった、と言えます。そこからの躍進ぶり、勢いはもちろん堤が勝っており、昨年10月には95年世代最強の一角、井上拓真を攻略して見事な王座戴冠。
対して比嘉大吾は、パッとしない試合もいくつか続きながらもしぶとく生き残り、長く世界タイトル上位に居続けたナワポーン・カイカンハを撃破したあと2024年9月にWBO王者、武居由樹に挑戦。3-0の判定ながらも大いに物議を醸す判定で敗れたものの、まだまだ世界タイトルショットを戦える実力があることを示してみせました。
ただ、やはりこの試合のキーポイントになったのは、武居と比嘉のタイトルショットにかける意気込み、言ってしまえば気持ちの差だったのかもしれません。
この試合の比嘉大吾の仕上がりは素晴らしいものでしたが、やはりどこかで弱さを見せる場面も散見され、もうあと少し、向上できるような雰囲気もありました。それだけに、あれで引退は本当にもったいないと思っていた次第。
なのでこの試合は、比嘉大吾の気持ち、覚悟が武居戦以上になるという前提で、比嘉大吾の勝ち筋が見えてくるような気がしています。
その「気持ちで相手を上回る」ということが、おそらく最も難しい王者であるのが堤聖也。
井上拓真を相手に勝てたのは、その気持ち、覚悟といった部分が非常に大きいですし、それこそが堤の魅力だとも思えます。
もちろん相手にとってやりづらい技術、パンチングパワー、インテリジェンス、その全てが武器だと思いますが、何よりも堤の武器はハートにあるでしょう。ボクサーとして最も重要で、他のすべてで劣っていてもその全てをひっくり返せる最強のステータス、それが気持ち。(と、昭和生まれのボクシングコーチは思うのです。)
連打型、アッパーが得意で、回転力のあるパンチャーでる比嘉大吾。トリッキー、とも言われるボクシングですが、時に集中力が切れることもあります。
堤も連打型であり、回転力もありますが、おそらくパンチの質が比嘉とは異なり、またかなり愚直なボクシング。スイッチヒッターであることで戦術の幅は広いですが、ハンドスピードはさほど速いわけではなく、様々な部分をインテリジェンスで補っているようなイメージ。
おそらく、再戦となれば堤が強い。
そこをもしひっくり返せるとするならば、比嘉大吾の気持ちが、堤にどれぐらい近づけるのか、もしくは上回れるのか、ではないでしょうか。
結局はおそらく互角、互いに攻撃力はありますが、ディフェンス技術はあり、そしてタフネスもある両者。一つだけ言えることは、アクション満載の好ファイトになる、ということだけです。
そして結果は神のみぞ、知る。
どちらも応援したい思いで、どちらにも負けてほしくない一戦ではありますが、今回ばかりは決着がつくことを望みます。
配信情報
このほかのアンダーカードはまた次回。
この興行は2/24(月)16:30の開始で、配信開始は17:00からです。那須川天心vsジェイソン・モロニーの試合がセミファイナルのようですね。他に赤井英五郎が出場する6回戦ともう一つ4回戦が1試合、合計5試合の放送だそうです。全6試合なのでもう1試合も放送してあげれば良いのに。
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