9月14日、井上尚弥というボクシング界最大のメガスターの前で、武居由樹がその真価、いや、「進化」を問われます。
前戦で見せた、わずか1ラウンドでの圧巻のKO劇。あの左は、彼の破壊力が世界トップレベルであることを改めて満天下に示しました。会場が沸き、誰もがその強さに酔いしれたあの夜。しかし、あの早すぎる決着で、我々ファンが本当に見たかったものは、果たして見えたのか。
多くのボクシングファンの脳裏には、まだあの試合が焼き付いているはずです。そう、比嘉大吾との死闘。遠距離では無類の強さを誇る武居が、クロスレンジでの執拗な打ち合いに巻き込まれ、大苦戦を強いられたあの夜です。
今回、武居の前に立ちはだかるのは、WBOが指名した最強の挑戦者、クリスチャン・メディナ。彼こそ、比嘉戦で露呈した武居の”課題”を、的確に突けるボクサーと言えるでしょう。
ということで今回のブログは、武居由樹vsクリスチャン・メディナのプレビュー記事。
9/14(日)名古屋・IGアリーナ
WBO世界バンタム級タイトルマッチ
武居由樹(大橋)11勝(9KO)無敗
vs
クリスチャン・メディナ(メキシコ)25勝(18KO)4敗
今回の挑戦者、クリスチャン・メディナは、決して無名のボクサーではありません。日本のボクシングファンならば、その名前と実力をすでに知っているはずです。そう、2023年8月、当時IBF世界バンタム級の挑戦者決定戦で西田凌佑と拳を交えた、あのメディナです。
あの試合で彼は西田の卓越したボクシングスキルの前に大差の判定で敗れました。しかし、彼はあの試合で二つの重要な資質を証明しています。一つは、西田の的確なカウンターショットを浴びながらも最後まで戦い抜いた、驚異的な「タフネス」。
そしてもう一つは、劣勢でも決して心を折らずに前に出続けた、メキシカンらしい「ファイティングスピリット」です。最後の最後までキレのあるパンチをスイングしていた姿は、マチズモそのものでしたね。
↓観戦記
そして、このメディナの戦い方こそが、武居にとって最も厄介なスタイルなのです。
比嘉大吾戦で武居が苦しんだのは、1つはジャブ、そしてもう一つがクロスレンジでの消耗戦。メディナは、西田を相手にするとジャブであしらわれてしまった感がありますが、クロスレンジでのボディショットはすごく良かったと思います。
このクロスレンジでの戦いにおいて、武居を苦しめるに十分な資質を持っているのではないか、と思うのです。
問われる「進化」
あの比嘉戦で、我々が目にしたのは明確な”課題”でした。遠距離から一気に間合いを詰めるあのワイルドでスピーディなステップイン、からの飛び込みの右フック。しかしそれに反して、接近戦ではお世辞にもバランスが良いとはいえず、クロスレンジの押し合いで強いとも言えません。
※フィジカルは間違いなく強いはずで、接近戦での身体の使い方に課題がある、という認識です。
前回のKO勝利では、その答え合わせはできませんでした。だからこそ、今回のメディナ戦で我々が注目すべきは、武居の「進化」を測るのは以下の事柄です。
まずは細かなステップとバランスを崩さないボディーワーク。
大きくリングを回る、ジャンプするような動きをする武居ですが、接近戦では足が止まってしまう傾向にあります。近い距離で細かくサイドに回ることができるのならば、接近戦でももっと楽に戦えるはずです。
そして前述の通り、そのボディムーブはバランスが良いとはいえず、身体をくの字に折り曲げてしまうため、その後の反撃はしづらくなってしまっています。
この近い距離で、どっしりと構えて相手を迎え撃つことができれば、もともとのパンチングパワーも相まって相手にとっては脅威でしょう。
離れれば体ごと飛んできて、近づけばコンパクトなパワーショットがある。これが、これまでの武居をみるに理想ではないでしょうか。
なので今回の試合で見たいのは、この近い距離でのパワーショット。
比嘉戦以降、近距離でも威力を発揮できる左のショートやアッパー、右フックといった新しい武器をどれほど磨いてこれたのか。そしてこの距離で、タフなメディナを打ち倒すことができるか。
クリスチャン・メディナとの戦いは、これらを検証するに最高のリトマス試験紙となり得ます。
おそらくメディナが理想とする展開は、ただ一つ。序盤からプレスをかけ、武居に大きく距離を取らせない状態をつくり、ブロッキングで耐え抜き、とにかく距離を詰めることです。クリンチも多用しながら、ひたすら武居に得意なボクシングをさせず、体力を削る。そして中盤以降、相手の足が止まったところで勝負をかけるという、泥臭い消耗戦です。
一方で武居が今回理想とするのは、単なるKO勝利ではないはずです。証明すべきは、比嘉戦からの「進化」。序盤から強打をちらつかせつつ足を使い、メディナのプレスを冷静に捌き、自分の距離を維持すること。侵入しようとするメディナにカウンターを合わせ、ダメージを蓄積させ、中盤以降に仕留める。たとえ圧勝するにしても、その勝ち方にこそ、彼のボクサーとしての成長が示されます。
フィニッシャーである武居のパンチが、序盤にクリーンヒットすると試合はまた一瞬で終わってしまう可能性もあります。そのあたりはメディナも織り込み済みでしょうから、序盤はあまり動いてこず、ある程度慣れる時間とする可能性もありそうです。
この序盤に武居がメディナを倒せなかったならば、勝負は中盤以降、その時点でメディナがまだ削られておらず、元気なままなのか、武居が完全に距離を支配し、挑戦者の心を折り始めているか。
これにより、その後の展開は大きく変わってくるはずです。
もちろん、かのメがマッチを期待する日本のボクシングファンにとっては、メディナがどんなに強敵だろうとも武居にここで土がつくなんてことはあってはならないことです。
ただ、この試合は決して楽勝な試合ではなく、指名戦だけあって非常にヒリヒリとした戦いです。
当然我々の望みはただ1つ、武居由樹がバチッと倒して勝つことですね。
配信情報
この試合は井上尚弥vsムロジョン・アフマダリエフというビッグマッチのセミファイナルで行われます。
井上vsMJという光が強すぎて、霞んでしまうのは本当にもったいないマッチアップです。
この興行はLeminoで無料生配信とのことです。
この試合を有料にすると大バッシングが起きるからでしょうか。。。果たして井上尚弥がいなくなった後、Leminoがやっていけるのか心配です。
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