現地時間、9/10(日本時間9/11)は中谷潤人(M.T)が強敵アンヘル・アコスタ(プエルトリコ)を相手に初防衛戦を行います。
その興行のメインは、オスカル・バルデス(メキシコ)vsロブソン・コンセイサン(ブラジル)。この一戦はバルデスのドーピング検査陽性反応により、ケチがついてしまいましたが、結局現地コミッション、WBCもしっかりと認めた「WBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチ」。
バルデスから検出された薬物はフェンテルミンという物質。減量薬として使われるこの薬物は、今回、検出の量が微量で身体能力向上としての価値はなく、また故意の摂取ではないと判断されたために、挙行されます、というのがWBCの言い分。
故意かそうでないか、量の多少は関係ないはずですが、だったらそれぞれの薬物の摂取量も明記する必要があるでしょう。
この苦しい言い訳により、おそらくコンセイサンを応援する人が増えたと思われるこの一戦ですが、私はバルデスを、少なくとも「故意ではない」と信じたい。(信じているわけではなく、ただの願望です。そして試合開催に対しても賛同しているわけではありません。勿論、今回バルデスを応援するという立場にはいません。)何せあのベルチェルトをあの形でノックアウトしたという試合を汚したくない。だからこの一戦を見る時の私の目は、たぶん曇っています。
さて、そんな悲しみを乗り越えるためにはコンセイサンに勝利してもらい、バルデスをこの王座から引きずり降ろしてもらう、というのが一番理想の形だと思いますが、バルデスはもともと評価の高い王者であり、無敗のゴールドメダリスト、コンセイサンをもってしてもかなり攻略は難しい。
ともあれ、バルデスに本当に身に覚えがなければ、この騒動でメンタル面においていくらかのダメージを受けているでしょう。そこをコンセイサンが突けるかどうか。
長い前置きですが、今回のブログはなんだかんだとゴチャゴチャしているスーパーフェザー級世界王座たちの動向についてです。
↓プレビュー記事。いよいよですね。
WBA王座
現在、レギュラー王者にロジャー・グティエレス(ベネズエラ)、暫定王者にクリス・コルバート(アメリカ)。
このふたりに対戦指令が出ており、王座を一本化する方針です。
スーパー王者だったジャーボンタ・デービス(アメリカ)はこの通達を受けて王座を返上、ライト級かスーパーライト級で戦う方向性のようですね。
グティエレスvsコルバートは交渉期限が現地時間で9/15とのことなので、もうすぐ試合が決まりそうです。
パワーに勝るグティエレス、スピードに勝るコルバートとストロングポイントが明確なこの一戦は、非常に楽しみですね。コルバートが優位、グティエレスはなかなか当てられない展開が続きそうですが、グティエレスの勝利を期待しています。
果たして、今年中に開催されるのか??タイミング的には、ギリギリかもしれませんね。
WBC王座
前王者、ミゲル・ベルチェルト(メキシコ)を見事なアウトボクシングで翻弄し、素晴らしい左フックで仕留めたバルデス。あの一戦の感動を返してほしい。
前述の通り、ロブソン・コンセイサンを相手に初防衛戦に臨みます。
ベルチェルト戦は、アウトボクシングに加え、上体を柔らかく使ったディフェンス面で大きな向上が見られましたね。チーム・レイノソに加わった大きなメリットというのが、あのディフェンス力でしょう。(デメリットは、言うまでもない。)
このドーピング問題は、バルデスが勝利した場合、この試合が終わったあともゴタゴタするんじゃないか、とも思っていますが、如何に。もしかしたらチーム・レイノソに加わりさえしなければ、バルデスの言うことに耳を傾けたかもしれませんが、あのチームには疑惑が多すぎます。
とにかくWBCは、「クリーン・プログラム」なるものをわざわざ打ち出しているのだから、それに則るべきであり、則らないならば破棄してしまったほうがよい。WBCという団体の正常化を望むのみですね。
↓私の感動ぶりが笑 観戦記
IBF王座
本来であれば8/20にドバイで、尾川堅一(帝拳)とシャフカッツ・ラキモフ(ロシア)との間で決定戦が行われる予定でしたが、ラキモフが負傷を理由に延期。
その後、ラキモフの負傷の具合が思った以上だったのか、尾川の相手がアジンガ・フジレ(南アフリカ)に変更となり、現在のところは日時場所が未定ながら王座決定戦が開催されるとのことです。
ラキモフ相手よりも、フジレ相手のほうが尾川にとっては良いと思われますし、個人的にもラキモフは(前戦、王者ジョジョ・ディアスが体重超過の上、ドロー)同情してしまうところがあり、尾川応援に思い切り振りきれないでいましたので有難い。
尾川は2017年、テビン・ファーマー(アメリカ)と同王座決定戦を戦い、勝利するもドーピング検査で陽性となり、王座を剥奪されたボクサー(試合はノーコンテストに)。バルデスだってここで王座剥奪の憂き目にあったとしても、這い上がってくれば良いという話だと思いますが。
いずれにしろ、尾川はこの場所まで戻ってきてくれました。
正直、世界初挑戦(ファーマー戦)前のような仕上がりを、復帰以降は見れていません。この王座決定戦において、ここ数年で一番の仕上がりを期待しています。
ラキモフが撤退→別の相手をたてての王座決定戦ということで、おそらくこの一戦はそう遠くないうちにまとまるんではないでしょうか。
WBO王座
https://www.boxingnewsonline.net/shakur-stevenson-jamel-herring-cant-beat-me-he-knows-what-it-is/
王者はジャメル・へリング(アメリカ)、暫定王者にシャクール・スティーブンソン(アメリカ)。
へリングは2019年に伊藤雅雪(横浜光)から王座を奪取、正直、当時はここまで生き残っているとは思えませんでした。
しかし、この長身サウスポーは予想以上にしぶとく、そのスキルを活かしてここまでサバイブ。
特に前戦は数々の実績を残してきたカール・フランプトン(イギリス)を6Rで沈め、引退に追い込みます。へリングの試合の多くを見てきたわけではありませんが、この試合はへリングのベストバウトに数えられる試合だと思います。
シャクールは2021年6月、井上尚弥vsマイケル・ダスマリナスの一週間前に登場し、ジェレミア・ナカティラ(ナミビア)と暫定王座決定戦を戦って勝利。
もともとWBOフェザー級王者だったシャクールは、階級アップに伴い返上すれば自然と指名挑戦者となれますが、へリングとの予定が折り合わなかったためなのか、確か結構直前で暫定王座決定戦になったと記憶しています。
ともあれ、このへリングvsシャクールというのは規定路線だったわけで、シャクールは最短距離でスーパーフェザー級の王座へ向かい、それを回避する術はへリング側には王座返上以外にはい、という一戦。
ともにトップランクに所属するボクサー同士の団体内統一戦は、他に阻むものもなく、すんなり現地時価で11/13という日程で対戦合意。
シャクール・スティーブンソンの大いなる才能は誰しもが認めるところではあるものの、まだまだ試練めいたものがない、というのも現状です。このジャメル・へリングが、勝てはしないまでもシャクールに大きな試練を与え、シャクールが新たな扉を開いてくれることを願います。
↓へリングのベストバウト!?
大きなライト級の木の下で
超大激戦区、ライト級のひとつ下の階級であるスーパーフェザー級は、大混戦。シャクール・スティーブンソン、オスカル・バルデスを除けば、誰しも十分にチャンスがある、といっても過言ではありません。
シャクールもバルデスも、下の階級から上げてきたボクサーであり、ここにナチュラルなスーパーフェザー級ボクサーがどう絡んでいくか。特にバルデスは、今戦の出来次第で、いくらでも評価を落としてしまう可能性だってあります。
シャクールについても、前戦の体つきをみれば、スーパーフェザーにフィットしてきた感がありますが、前戦、思い切りの良いパンチを振るってくるナカティラを相手に安全策を講じ、その耐久性にはやや不安が残るのではないか、と思います。まあ、当たれば、という話なんですが。
ちなみに、このスーパーフェザー級という階級は、個人的に日本ボクシング史上最も好きなボクサー、内山高志が君臨した階級。今後も、強い王者たちと強い挑戦者たちがしのぎを削り、この様々な国の強豪ボクサーたちが集う階級がもっともっと注目されてほしい、と思っています。そしてその中に、日本人ボクサーにも入っていってもらいたい。
日本王者、坂晃典(仲里)にも絡んでいってもらいたいところですが、まだもう少し時間がかかりそう。
個人的に期待しているのは、日本でも戦ったジョー・ノイナイ(フィリピン)。世界を股にかけて戦い、先日も印象的な勝利を記録したノイナイが、どこかアウェーの地で世界タイトルを戴冠することを密かに期待しています。
↓ノイナイの痛快KO、観戦記。