信太のボクシングカフェ

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ボクシングが大好きです。大好きなボクシングをたくさんの人に見てもらいたくて、その楽しさを伝えていきたいと思います。

階級の壁とは何か。「タンク」デービスvsマリオ・バリオスの勝者はどこへ向かう?

※当ブログでは商品・サービスのリンク先にプロモーションを含みます。ご了承ください。

6月の最終週は、日本のボクシングファン大注目のビッグマッチ!

かつてのPFPキング、そしてテオフィモ・ロペスに敗北を喫した今でも、未だ多くのファンがPFPキングに推すワシル・ロマチェンコに、日本期待の中谷正義が挑むという一戦。

日本中のボクシングファン(一般層まで、この偉業が届かなかったことは非常に残念ですが)にとって特別な一日となったこの日、そのトップランク興行とおよそ同時間帯に、アメリカで大人気犯罪者、ジャーボンタ・デービスが3階級同時制覇に挑むマリオ・バリオス戦を迎えました。

今回のブログでは、このShowtime興行の観戦記です。

 

↓ロマチェンコvs中谷の観戦記

boxingcafe.hatenablog.com

↓デービスvsバリオスのプレビュー

boxingcafe.hatenablog.com

デービスについては、前回は井上尚弥vsジェイソン・マロニー戦と同時間帯にレオ・サンタ・クルスと戦った一戦に続き、今回もWOWOWが生配信してくれました。非常にありがたいですね。

6/26(日本時間6/27)PBC興行

WOWOWは、現地映像をそのまま垂れ流しのようですが、まずはバティル・アフメドフ(ロシア)vsアルジェニス・メンデス(ドミニカ共和国)。

バティル・アフメドフ(8勝7KO1敗)は、今回メインで登場するマリオ・バリオスと王座決定戦を行い、2度のダウンを喫して王座を取り逃したアフメドフですが、バリオスと同等の力はあると見られています。

当然この試合は調整試合の域を出ない復帰第二戦。サウスポースタンスから非常に強いフィジカルと、硬質なパンチを武器にプレスをかけ、メンデスにパンチを打ち込んでいくアフメドフ。メンデスは下がりつつ、所謂フィリーシェルで対応をしていますが、やはり地力の差は明らか。

 

随所で巧さを見せたアフメドフ、テンポよくメンデスにパンチを打ち込んだ後、メンデスは8R終了後に棄権。バティル・アフメドフ、8R終了TKO勝利。

次のカードはカルロス・アダメス(ドミニカ共和国/19勝15KO1敗)vsアレクシス・サラザール(メキシコ/23勝9KO3敗)。WBO世界スーパーウェルター級暫定王座決定戦を、パトリック・ティシェイラ(ブラジル)と戦った、アダメスがAサイド。

サラザールは手足が長く、スピードもあるボクサーですが、アダメスにはパワーがあり、サラザールは打ち合いたくなくて身体を折って横を向いてしまいますね。

多分イラついたアダメス、サラザールのバックをとってレスリング状態、そこからパンチを打ち付けるという行為。これにレフェリーは2Pの減点を指示。このままこれをやっていると反則負けになりそう。。。

と思いましたが、3R、残り10秒のところでアダメスの左フックが炸裂、レフェリーはTKOを宣告。ボディへの左フックを打つというフェイントを入れて、顔面に持っていった技ありの左フックでしたね。

 

さて、いよいよセミファイナル!!

エリクソン・ルビン(アメリカ)23勝(16KO)1敗

vs

ジェイソン・ロサリオ(ドミニカ共和国)20勝(14KO)2敗

世界王者とはなっていないものの、非常に評価の高いプロスペクト、エリクソン・ルビン。そして、元世界王者で、前戦、チャーロにその王座を奪われてしまったロサリオ。

スーパーウェルター級、至高のサバイバルマッチと言っても良い一戦。これは非常に興味深いですね。

ジャーメル・チャーロに負けた者同士、これに勝てば来月に4団体統一戦を控えるジャーメル・チャーロへのリベンジに一歩近づきます。

さて、ゴング。

初回はオーソドックスのロサリオとサウスポーのルビン、ともにジャブの差し合いからスタートです。ロサリオがプレスをかける時間が長いですが、ルビンは前に出るロサリオに対してコンビネーションと手数で対応。なかなかヒリヒリした展開です。

 

2R、ルビンのジャブはよく出て、スピードもあります。ロサリオはやや攻めあぐねている感じがしますが、近づいてからの左右のボディは良い。少し手数が少ない気もします。

3R、1分過ぎ、接近したところでルビンの右がロサリオにヒット。距離で外すルビンと、当たる距離の攻防を目指してガードでしのぐロサリオ、このディフェンスの差が出たかもしれません。

終盤にもルビンは左アッパー、左ストレートを的確に決め、最終盤にロサリオのガードの上からルビンは右フックを強振、その後足にきているルビン!決着が近いか??

4R、ダメージはあるでしょうが変わらずプレスを続けるロサリオ。当たれば倒れそうなダメージをかかえるロサリオに、ルビンは下がりつつもワンツー。

 

ロサリオは苦しい展開が続きますが、残り30秒ほどのところでロサリオの軽い左フックがヒット、なんとここでルビンは効いてしまいます!ここからロサリオはラッシュ、明らかに効いているルビン!残り時間は少なく、ここは決着がつかず。

とんでもない展開になってきました!

5R、ガードを固めて前進するロサリオ、下がりながらジャブとストレートを打ち込むルビン。ともにダメージは抱え、スピードもパワーも落ちてきているように見えます。

しかし後半、ルビンはダメージから回復してきたか、鋭い左ストレート、右フック。回復してきたかもしれません。

6R、やはりサークリングしながら、力強いパンチを放つルビン。完全にルビンのパワーは復調しました。ボディを含めた多彩なコンビネーションでロサリオを痛めつけたルビン、1分過ぎにダウンを奪います。

ボディに左右を打ち、上をフォローしたこのパンチで、効いているのはボディでしょう。立ち上がったロサリオに対してルビンは攻め、またもボディでダウンを奪います。

 

そして結果、ロサリオは立ち上がりましたがレフェリーは試合をストップ!

ルビンにとっても、かなり苦しい一戦だったと思いますが、お見事でした。しかし、ジェイソン・ロサリオ、以前チャーロに敗れたときも確かボディジャブで痙攣するほどのダウンを喫していましたね。何か内蔵の疾患や、問題を抱えていなければ良いのですが。

ボディが弱点だとわかれば、今後ロサリオと対戦するボクサーは非常に闘いやすくなります。元世界王者という肩書がある分、引く手あまたとなってしまう可能性もあります。ボクシングという競技は残酷です。

今後、ロサリオがどのような判断をするのかには注目したいと思います。

さて、ルビン。このルビンも何でもない左フックを効かされた場面もあり、打たれ脆さのあるボクサー。ただ、このロサリオを、チャーロよりも早くノックアウトしたことは評価すべきことでしょう。

チャーロとの再戦が決まれば、勿論チャーロ優位は免れませんが、ルビンのそのパワーから、少しは期待の持てるボクサーです。次戦、チャーロとの再戦となるのでしょうか。その前に、チャーロが今度の4団体統一戦後、階級を上げれば、世界タイトルのチャンスはグッと近づくことになるでしょう。

 

WBA世界スーパーライト級タイトルマッチ

マリオ・バリオス(アメリカ)26勝(17KO)無敗

vs

ジャーボンタ・デービス(アメリカ)24勝(23KO)無敗

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そしていよいよメイン。4団体統一が成されたはずのスーパーライト級に残る、WBAレギュラー王者、バリオスの防衛戦。相手は現WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者にして、WBA世界ライト級レギュラー王者である、ジャーボンタ・デービス。

デービスは轢き逃げ等14つの犯罪容疑により、7年の懲役刑を食らうかもしれないという、ボクサーではなく人として崖っぷちに立たされています。今回、どのようにしてこの一戦を行えるのか、は全くもってよくわかりませんが、ともあれその才能を惜しむファンも多いでしょう。なぜ神は、デービスのような人間に、あれほど強大なボクシングの才能を与えたのか。

ともかく、その辺りはボクシングファンの間でも定番のネタ化しているかもしれませんが、その才能、パワー、ボクシングセンスは間違いなく本物です。

 

今回は、体格差を考えると基本的には「無謀なチャレンジ」でもあります。

ギジェルモ・リゴンドーがロマチェンコに挑んだ時。マイキー・ガルシアがスペンスに挑んだ時。ケル・ブルックがGGGに挑んだ時。どれも無謀だと思われましたが、今回のデービスvsバリオスは無謀とは思われていないどころか、オッズはデービス優位。

限りない可能性と、その限りない可能性をあっという間に閉じてしまう、という可能性を秘めたボクサー、ジャーボンタ・デービスの登場です。(個人的に、ボクサーとしてのデービスは大好きだと一応ここで書いておきます。)

バリオスも、デービスも、トランクスもガウンも非常に派手。この一戦に掛ける意気込みが伝わってきます(?)

初回のゴング。序盤はやはり様子見から入ります。バリオスのジャブは非常に鋭い。調子は良さそうですね。デービスはそのバリオスのジャブに合わせて大きく踏み込み、パンチを当てようと試みます。しかし、やはり遠い。

終盤、デービスがボディジャブを放つとレフェリーはすかさずローブローの注意。それに言い返しているデービス。言い返す意味は、ほとんどない笑

 

インターバル中、首からたくさんのネックレスを下げたメイウェザーが映ります。肩は凝らないのか。

2R、バリオスがプレスを強めます。デービスはやはりやりづらいのか、それとも距離を測っているのか、ややディフェンシブ。

しかし突如ステップインして左ストレートを放つと、その威力とスピードに会場が沸きます。

3R、デービスはバリオスの打ち終わり、一瞬の踏み込みでパンチを当てようとしています。プレスをかけて距離を詰めていくのは体格に勝るバリオス。変な構図です。デービスはサークリング、それも明らかにカウンター狙い。

中盤、デービスをコーナーにつめてコンビネーションを放ったバリオスが会場を沸かせます。

4Rも同様の展開で、デービスはディフェンシブ。カウンターを狙いすぎるあまり手数は出ず、逆にバリオスは攻めやすくあんり、ジャブやストレートを浅くながらヒットできています。

 

デービスはどうしたのでしょう、やはり体格差というのはデービスでも難しいのか。

ところで、3Rほどからデービスがリングサイドにチラチラよそ見をしているのも気になります。メイウェザーの方を見てるのでしょうか??

5R、インターバルでメイウェザーに発破をかけられたか、デービスがプレスをかけ始めます。ガードを固めてジリジリとプレスをかけつつ、先程のラウンドまでのように大きくバックステップを踏むこともなく、このプレッシャーにバリオスが下がり始めます。

前に出ることによってデービスの手数も増え、怖さも出てきたような感じ。近い距離での打ち合いは非常にハイレベル、ともにいくつかのクリーンヒットを奪います。白熱してきました。

6R、前ラウンドから、「タンク」デービスが「タンク」らしさを発揮しています。あとはブンブン振り回しさえすれば完成です。

前進するタンク、パンチの反応はよくバリオスのジャブもよくかわしています。逆にバリオスはほとんどジャブしか出なくなっており、自分から攻め込むということはあまりできていません。

 

終了ゴング後、パンチを放ってしまったタンク、レフェリーに注意も受けていないのにレフェリーに謝っています。こういうところは非常にかわいい笑。人間社会のルールは守らないが、ボクシングのルールはちゃんと守ろうとしています。

7R、デービスが少しプレスを弱めたように見えますが、もしかすると押してみたり引いてみたり、手を出さずに固まってみたり、カウンターを狙ってみたりと少し試しているのかもしれません。

このラウンド、デービスは攻める時は大きく攻めて、守る時は灰ガードで固まる、という攻防分離のスタイルを見せます。

8R、そういえばいつの間にか身長差をあまり感じなくなっています。バリオスが低くクラウチングに構え、タンクは前傾かと思いきややや後ろ荷重、ややアップライト。

この後ろ荷重は決してディフェンシブな方ではなく、前に出る一瞬の推進力を強くするためでしょうね。常にカウンターの準備をしています。

などと考えていたところで、バリオスがボディへの右ストレートをヒット。これは良いパンチ。しかし続いて、タンクが得意の飛び込みの右フックでバリオスに襲いかかり、これをまともに浴びたバリオスはダウン!!これは見事なガゼルのようなパンチ。

 

立ち上がったバリオスに襲いかかったタンクは、今度は右フックから左ストレートをクリーンヒット、またもダウンを奪います。残り時間は1:30、まだたっぷりと時間があります。ここで仕留められるか。

追いかけて強振、強振、振り回すタンク!ガードを固めてしのぎ、そしてしっかりと打ち返すバリオス!このバリオスも素晴らしい、気持ちが強い。

デービスは得意のフック系のパンチに併せてアッパー、ストレートを効果的に使い、バリオスは左目下から出血。しかしこのラウンドをサバイブし、次のラウンドに望みをつなぎました。

9R、打ち疲れか、それともカウンターでクリーンなノックアウトを狙う作戦なのか、デービスはまたも沈静化。ガードを固めてカウンターを狙います。ここでまたもリングサイドに目をやり、やや注意力散漫に見えるデービス。

デービスはこのラウンド休んでいるのかもしれませんが、後半にはバリオスにコーナーに詰められ、クリーンヒットこそ少ないですが非常に見栄えは良くありません。

 

インターバルでは、セコンドでもないメイウェザーがめちゃくちゃ声をかけていますね。

10R、またもプレスをかけはじめたデービス。しかし、休めたのはデービスだけではありません。8Rのダメージから完全復活したバリオス、手数でデービスを攻め立てます。

しかし、中盤にはデービスの飛び込みの右フック、左ストレートと今日当たっているパンチでバリオスを下がらせたデービス、このラウンドはしっかりとバリオスを追いかけ、後半は危険なタイミングでの打ち合いもあり、会場は大盛りあがり。

やっぱり、デービスのパワー、そしてフィジカルもバリオスを上回ります。

11R、チャンピオンシップラウンドに入り、タンクはバリオスを倒そうとしているのか、判定で良いと思っているのか。このラウンド、タンクは積極的に攻めますが、バリオスの反撃も怖い。

タンクの入り際にバリオスが右ストレートをヒットすれば、タンクは飛び込みながらの右フック、左ストレートで応戦。良い試合です。

 

そして追いかけたタンクが放った左ボディショットで、バリオスはこの試合、3度目のダウン!立ち上がったバリオスに追い打ちをかけると、レフェリーが試合をストップ!!!

ジャーボンタ・デービス11RTKO勝利!世界3階級「同時」制覇!

序盤、「おや?」と思いましたが、結局はタンクがタンクらしさを発揮して、最後は見事な左ボディアッパーで仕留めました。

まあ、何というかいつもタンクの試合は見ていておもしろくて、ハラハラドキドキしてしまいますね。

前戦では、スーパーフェザーのウェイトを作れるのか、そのウェイトをつくってしっかり動けるのか、ということでハラハラしましたし、今回もそこから2階級上げて、テストマッチなしの挑戦だったので、オッズ優位とはいえども普通に考えればかなり難しい挑戦。

それでもタンクは自身の良さを存分に発揮して、いずれも衝撃的なノックアウトで勝利を手にしています。ユリオルキス・ガンボア戦はなにかの間違いだったのでしょうか。

 

マリオ・バリオス、まだまだ試されていないボクサーではあるものの、打たれ脆いということはないと思います。頑丈で、タフというわけではないですが。フィジカルも、スーパーライト級の世界王者としては強い方ではない、とも思います。

ただ、今戦もそうでしたが、ジャブやストレート系のパンチはよく、入ってくる相手に対してもそれは有効でしたし、もっと良かったのは自ら攻めた際のコンビネーション。4団体統一王者、ジョシュ・テイラーとは比べるまでもないかもしれませんが、好ボクサーでしたね。

ともあれ、ジャーボンタ「タンク」デービス、次戦は誰と戦うのでしょうか。

スーパーフェザーなのか、ライトなのか、スーパーライトなのか。この階級の選択によって、どのボクサーとの闘いがおもしろいのか、というのも変わってきますね。

さすがにスーパーフェザー級はキツイでしょう、とも思いますが、前回しっかりとウェイトを作っているだけに、モチベーションの上がる相手であれば可能でしょう。

最も現実劇なのはライト級、テオフィモ・ロペス、デビン・ヘイニー、ライアン・ガルシアといったライバルの他、ワシル・ロマチェンコだっています。

以前、どこかの記事で書きましたが、ロペス、ヘイニー、ガルシアよりも、個人的評価はこのデービスが上です。ボクシングスタイルも好きです。

 

3階級同時制覇となると、スーパー王座を保持しているスーパーフェザー級よりも、レギュラー王座を保持しているライト級とスーパーライト級の指名期限が早いはずです。どうせ厳密にはやらないのでしょうが、全部持っておきたいのであれば指名戦をしっかりとこなすべきでしょう。

そもそもタンクにタイトルが必要か。はっきり言っていらないと思います。

タイトルなんてかかってなくてもタンクの試合はおもしろいし、そもそも次戦なんてできるのかもわかりません。

もし収監されるのであれば、タイトルと一緒に、そのボクシングの才能を天に返上してもらいたい。いやほんとに。

 

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