昔から世界で最も強豪が揃う階級の一つである、ウェルター級。
現在でも、PFPランキングに入っている二人の無敗の王者を中心に、20代のプロスペクトたちの評価も高い、非常に盛り上がっている階級です。
そしてこの度、この階級が大きく動くような発表がありました。
WBC・IBF統一王者であるエロール・スペンスJrとWBAスーパー王者であるヨルデニス・ウガスの3団体統一戦が来年春に行われるだろう、というビッグニュース。
今回のブログでは、まだ正式発表には至っていないものの、プロモーターの垣根のない、おそらくすんなり行われるであろうこの一戦と、ウェルター級についてです。
WBAの承認
なんだか1ヶ月に1回くらい、ウェルター級について書いている気がします。すみません。
とにかく人気の高いこの階級は今も粒揃いですね。
そして今回、ウェルター級の記事を書かねばと思ったのはこのマイク・コッピンガー氏のツイート。
Source: Errol Spence Jr., and Yordenis Ugas are finalizing a deal for a welterweight title unification fight that will land in March or April on PPV. The plan calls for Eimantas Stanionis, who stepped aside, to fight Radzhab Butaev in the co-feature. Full story coming to ESPN
— Mike Coppinger (@MikeCoppinger) 2021年12月19日
これは、エロール・スペンスJrとヨルデニス・ウガスの統一戦をWBAが承認した、と書いており、指名挑戦者エイマンタス・スタニオニス(リトアニア)には、レギュラー王者ラジャブ・ブタエフ(ロシア)への挑戦をオーダーした、とのことです。
このことは、意外と前言撤回のウルトラC、という行動にあたります。
WBAの変遷
WBA王座のここ最近の変遷をまとめると、2020年8月、ジャマル・ジェームス(アメリカ)とトーマス・デュロルメ(プエルトリコ)との間でWBA暫定王座決定戦が争われ、ジェームスが勝利。ちなみにこの時、WBAウェルター級にはスーパー王者としてマニー・パッキャオが君臨していました。
↓ジェームスvsデュロルメの観戦記
パッキャオはその約1年前にキース・サーマン(アメリカ)とのWBA王座の団体内統一戦に勝利したことでスーパー王者となっていましたね。なので元々パッキャオが持っていたレギュラー王座もこの段階では空位。
ではなぜ、ジェームスvsデュロルメが暫定王座戦だったのか。
それは、翌月の2020年9月に、ヨルデニス・ウガスvsアベル・ラモス(アメリカ)のWBAレギュラー王座決定戦がすでに決まっていたからです。
↓ウガスvsラモスの観戦記
この頃のWBAは、とにかくなりふり構わずスーパー、レギュラー、暫定、ゴールド等々と王座を増やそうと躍起になっていた時期ですね。
ということで、2020年8月と9月、ほぼ同時に誕生したレギュラー王者と暫定王者。
そして2021年1月、WBAはスーパー王者であるパッキャオを休養王者に認定。サーマン戦以降、試合を行なっていなかったパッキャオは梯子を外され、レギュラー王者だったウガスをスーパー王者に、ジェームスをレギュラー王者にそれぞれ昇格。
恐るべきWBAは、ここでももしかすると新たな「暫定王者」を設けたかったのではないか、と勘ぐりたくなります。
しかし結局新たな暫定王者は設けられず。これは、2021年8月にWBAが王座削減に動き始めた、ということと無関係ではないのだと思っています。今は徐々に正常化してきたとはいえ、「スーパー」と「レギュラー」両立の階級はまだあります。
さて、スーパー王者となったウガスは、色々あって休養王者であるマニー・パッキャオとのビッグマッチの権利をゲット。パッキャオの「ラストファイト」の相手を務めることになりました。このことは、ウガスにとって非常に幸運だったと思います。
↓パッキャオvsウガスの観戦記
この一世一代の大勝負に勝利したウガス。実際はまだ初防衛をクリアしただけの新米王者のはずですが、そこまでのキャリアも相まって非常に大物感が出ていますね。
その後、WBAはスーパー王者、ウガスに対してエイマンタス・スタニオニス戦、そしてレギュラー王者ジャマル・ジェームスに対してはラジャブ・ブタエフ戦をそれぞれ指令。
レギュラー王座のほうは、王者ジェームスが2021年10月の防衛戦でラジャブ・ブタエフに9RTKO負け、王座を失います。
↓ジェームスvsブタエフの観戦記
現在の王者はスーパー王者、ヨルデニス・ウガス、レギュラー王者がラジャブ・ブタエフ。うガスvsスタニオニスという一戦は、12月上旬に対戦合意、入札回避という報道がなされましたが、何故かここにきてWBAはウガスとスペンスの統一戦を承認、割りを食った形となったブタエフは、本来ウガスへの指名挑戦者だったエイマンタス・スタニオニスとの指名戦をオーダーされています。
3団体王座統一戦
ということで決まったWBAスーパー・WBC・IBF世界ウェルター級統一戦。
スーパースター、エロール・スペンスJrとヨルデニス・ウガスの一戦です。
スペンスは2017年、評価の高いケル・ブルック(イギリス)を11Rで倒し、IBF王座を獲得しました。当時のケル・ブルックはゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)への「無謀な」ミドル級挑戦で初黒星を喫した後でしたが、ウェルター級ではもちろん無敗、そのブルックに対してあの勝ち方。。。と言われるようなセンセーショナルなKO勝利。
その後、マイキー・ガルシア(アメリカ)、ショーン・ポーター(アメリカ)、ダニー・ガルシア(アメリカ)といったビッグネームから勝利をもぎ取り、評価を確定。
現在はリング・マガジンのPFPランキングでも6位と、全階級を通じてのトップボクサーと認識されています。
対してヨルデニス・ウガスは、マニー・パッキャオ(フィリピン)を降して名を売ったばかりのボクサー。しかし、過去、フィジカルモンスター・ショーン・ポーターをフィジカルで押して下がらせたという事実を持つ恐ろしいボクサーで、パッキャオ撃破で自信も深めていることでしょう。
スペンスはポーター戦後、交通事故に遭っており、ダニー・ガルシア戦で復帰、元気な姿を見せてくれましたが、本来パッキャオを戦うはずだった8月、網膜裂孔を発症。これはある種、交通事故での後遺症とも言えるかもしれません。
↓私も網膜剥離&網膜裂孔を発症したことがあります。
その網膜裂孔からの復帰戦でウガス、これはなかなか怖い選択ではありますが、地力はおそらくスペンスの方が上でしょう。
苦労人、常にBサイドであるウガスを応援したいところですが、ここはやはりスペンスの勝利が堅そうです。
そしてスペンスが、「4団体統一」、WBO王者よ、出てこい!と言ってくれさえすれば、全ては解決するのです。
WBO王者はPFPキング
3つの王座を獲得したスペンスが目指す先は、一つしかないはずです。そう、WBOのタイトルを保持するテレンス・クロフォード(アメリカ)戦。
なかなかビッグマッチが決まらないクロフォードは、とうとうトップランクを離脱。
PBCファイター、スペンスとの対戦に向けて動き出した、ということは明白ですね。
クロフォードは前戦、誰も倒せなかったショーン・ポーター(アメリカ)にストップ勝ち、底しれない強さを見せつけてくれたばかり。
↓クロフォードvsポーターの観戦記
はっきり言って、ウェルター級最強はクロフォードでほぼ決まり。スーパーライト級に続いて、2階級での4団体制覇を成し遂げる日が来るかもしれません。
しかしそれもこれも、スペンスがまさかの「階級アップ」を言い出さない限りは、というところです。
目指す先は一つしかない、とこの段の冒頭に伝えましたが、本当はあります。
誰も望まない、スーパーウェルター級への進出です。可能性はゼロではありませんが、こんなにも露骨にクロフォードから逃げる、ということはあるのでしょうか。
このウェルター級王者のPFPランカー対決は、是非とも実現してもらいたい。
勝った方がカネロを抜いて、真のPFPキングということで全く問題はありません。
その他にも続々と。。。
スペンスvsウガス、ブタエフvsスタニオニス。
この二つだけでも非常に興味深いマッチアップなのですが、ここ最近のウェルター級戦線のマッチアップはやばいの一言。
まずはキース・サーマン(アメリカ)vsマリオ・バリオス(アメリカ)の元王者対決。
元WBAスーパー・WBC世界ウェルター級統一王者であるキース・サーマンが久々のリング復帰(2019年7月のマニー・パッキャオ戦以来)。2年半以上のブランクを経て、元WBAレギュラー世界スーパーライト級王者のマリオ・バリオスを迎えます。
日程は2/5、アンダーカードも充実しているこの興行は非常に楽しみな興行ですね。
そして、期待のバージル・オルティスJr(アメリカ)はイギリスのマイケル・マッキンソン(イギリス)との一戦。
18勝(全KO)無敗、というロマンの塊、オルティスは、現在4団体で上位にランクイン。マッキンソンは、21勝(2KO)無敗、という、真逆とも言える戦績で、KO率100%のオルティスとKO率10%のマッキンソン、この対決は興味をそそりますね。
激闘型のボクサーであるオルティスは、相手が出てきた時にこそ真価を発揮するボクサー、もしマッキンソンが戦績から推察されるようなヒット&アウェイの塩漬けボクサーであれば、かなりの苦闘を強いられる可能性があります。(マッキンソンの映像はまだ見ていません。また近くなったら見てみます。)
試合は来年の早い時期、DAZN、とのことです。
その他にも前戦で歴戦の雄、トーマス・デュロルメをまさかの初回KOで退けたジャロン「ブーツ」エニス。
そしてクリス・アルジェリを痛烈なノックアウトで屠ったコナー「デストロイヤー」ベン。
その他にも小原佳太に勝ったクドラティーリョ・アブドカホロフ(ウズベキスタン)、そのアブドカホロフをほぼ完封したコーディ・クロウリー(カナダ)。
WBOの指名挑戦者決定戦が回ってきそうなダビッド・アバネシヤン(ロシア)。
数え上げればキリがないほどのボクサーたちが割拠。
クロフォード、スペンスの2強は1強にまとまるのか。そしてクロフォード・スペンス後のウェルター級の覇権はどこに行くのか。本当に興味が尽きませんが、まずは2022年春頃(スペンスvsウガスは4月頃とのこと)までに行われる、スペンスvsウガスを楽しみに待ちましょう。
。。。2022年春、井上尚弥の3団体、もしくは4団体の統一戦、ともすればずれて開催されるGGGvs村田諒太、盛りだくさんですね。