前日(1/29、日本時間1/30)は世界戦ながらもよくわからないピックアップの一戦でした。
WBA世界ヘビー級正規王座の決定戦、2年半ぶりのリングでトレバー・ブライアンが王座を獲得。
↓観戦記
それとは別興行ですが、サドリディン・アクメドフ(カザフスタン)のボクシングが見れた事が一番の収穫。
そして本日は、打倒サウル・アルバレス(メキシコ)の最右翼、IBF世界スーパーミドル級王者、カレブ・プラントが登場です。
↓プレビュー記事
1/30(日本時間1/31)アメリカ
IBF世界スーパーミドル級タイトルマッチ
カレブ・プラント(アメリカ)20戦全勝(12KO)無敗
vs
カレブ・トゥルアックス(アメリカ)37戦31勝(19KO)4敗2分2NC
↓公式ハイライト
しかしPBC興行、非常に見たい興行が多いですよね。WOWOWでは日本人絡みだったり、超注目のボクサーしかやってくれないので、どこかちゃんと見れるプラットホームが欲しいところですね。
さて、この一戦はプラントがいかにトゥルアックスを料理するのか、というのが焦点。プラントとしては、カネロ戦にたどり着くまで、負ける事はおろか評価を下げるような試合をしないことが肝要です。
初回、ファーストヒットはプラントのボディジャブ。やはりプラントはスピードが速く、同じカレブでもトゥルアックスとは雲泥の差。大きな動きはないものの、既に能力の差が出てしまっています。
2R、様子見を終えたプラントは、このラウンドはコンビネーションを放っていきます。ハンドスピードも速いですが、踏み込みも速いですね。トゥルアックスはプラントが距離を潰してきた打ち終わりを狙うしかほぼ策がないように見えます。自ら攻めてはいなされ、ジャブにはジャブのカウンターを取られ、なかなか苦しい。
3R、トゥルアックスが押せば引くプラントですが、サイドへの回り込みが巧み。この展開は変わらなそうです。そしてプラントは、右ボディや左ボディ、返しの左フックは強く打ちますが、右ストレートはほぼ手打ち。スピードだけで打っているように見えます。
4R、プレスをかけるトゥルアックス。しかし速いプラントを捕まえられず、打ち終わりにカウンターを起点として攻め込まれる始末。
終盤、トゥルアックスのアッパーがクリーンヒット!ここまででジャブ以外のヒットは初めてかもしれません。
プラントはあまり大きく動く事なく、トゥルアックスのパンチをかわし、トゥルアックスの攻撃をノーダメージで凌ぎます。
その打ちはじめや打ち終わりにカウンターを決め、完全にペースを掌握しています。一発にだけ気をつければ良いという展開。
6R、トゥルアックスがプレスを強めてプラントを追い立てます。プラントはサークリングしながら、相手の出鼻をくじくようにトゥルアックスが打つ前にコンビネーションをヒットさせます。
7R、やりたい放題のプラント、やっぱりジャブが素晴らしい。右をフェイントに使った逆ワンツー、いきなりの下から突き上げるようなジャブ。
ことごとくトゥルアックスにヒットします。
しかしやはり右拳を強く打つようなことはせず、これでは痛めつける事はできても、しぶといトゥルアックスを倒すところまではたどり着かないかもしれません。
8R、トゥルアックスが番狂わせを起こすには、くっついて乱打戦に持ち込むしかありません。余裕を持ちすぎたプラント、ロープ際でトゥルアックスを誘いますが、ここでトゥルアックスの右オーバーがヒット!追撃はさせませんでしたが、こういうのは危ない。
このラウンド中盤にも、トゥルアックスは右オーバーを素晴らしいタイミングで当てますが、プラントは首も強いですね。全く意に介しません。
終盤、プラントのボディが効いたようにも見えたトゥルアックス。プラントはここから詰めきれるのでしょうか。
9Rも流れは変わらず、前ラウンドのような気が抜ける場面もなかったプラント。低く構えた左手から、素早いジャブ。そのジャブをパーリング、またはグローブをはさもうと顎の前に置けば同じモーションでロングの左フック。中間距離では話になりません。これはトゥルアックスに限った話ではないかもしれませんね。
10R、プラントの技巧は近づいた時にも発揮されますが、左のダブルが非常に速い。ガードの間隙を縫って入ってくるこの左は対応が難しいでしょう。
終盤はプラントがラッシュ。ここまでのポイントはおそらくほぼプラントに流れており、あとはプラントがトゥルアックスを倒せるかどうか。
11R、本来であればガムシャラに攻めなければいけないトゥルアックスですが、ジリジリとプレスをかけるものの自らが自信を持ってパンチを打てる距離まで到底たどり着きませんね。
まだトゥルアックスの距離ではないところで焦って手を出してしまうと、簡単にカウンターを取られてしまいます。
ファイナルラウンド、プラントはフィニッシュを狙ってか、これまで以上にアグレッシブ。ワンツー左ストレート、右から入る逆ワンツーが何度もトゥルアックスを捉えるものの、コンビネーションの最後のパンチ(=一番当てたいパンチ=一番強く打つパンチ)は、全て左。
ここがKO率が伸びない原因のような気がしますね。
基本、コンビネーションパンチャーであり、連打でのストップ勝ちを目指すスタイルは、数を打つ分、一発の破壊力には欠けてしまいます。堅実ではあるものの、プラントは目指すところに辿りつけるのでしょうか。
規定の12Rを終え、三者ともにフルマークの支持をうけたカレブ・プラントが勝利。
妥当な勝利ではあるものの、ここまで圧倒するならストップで勝ってほしかったのが正直な気持ちではあります。
一発のパンチングパワーには欠けるものの、やはりそのボクシングは素晴らしい。ハンドスピードが速く、距離感がよく、ディフェンス勘も良いプラントは、負けにくいボクシングをします。
ただ、目指すべき相手がPFPキング、サウル・アルバレスとなると、やはり少しむずかしい感じはしますね。
サウル・アルバレス(=カネロ)は、メキシカンビーフの恩恵なのか、非常に頑丈な上にディフェンスが良く、フィジカルも強い。
更にはパンチングパワーも、前戦でカラム・スミスの腕をぶち壊したほどなので、はっきり言ってそのボクシングに死角は見当たりません。
もう一つ、カネロ判定と言われる判定もあり、カネロには判定での勝利は殊更難しい。
プラントは、カネロ相手には「判定勝利」に徹する他なく、そうなると厳しい闘いが待っていそうな感じがします。
スピードのあるジャブ、左フック、飛び込みの左フック、ワンツー左ストレート、逆ワンツー。。。非常に器用に左を使いこなすプラントですが、右をもっともっと強く打ち、それを当てる術を身につければ、可能性はあるかもしれません。
さて、ということで今回は12Rにわたり、プラントの技巧を堪能させてもらいました。
トゥルアックスは意地で倒れず、カミカゼアタックもしなかったので、フルラウンドになったのかもしれません。プラントにとっては、圧勝でしたが、倒しきれなかった事は課題かもしれません。
スーパースター・カネロを擁し、統一へと向かっていくしかないスーパーミドル級。主役カネロが一つずつベルトを吸収していくストーリーだとして、プラントはいつ、カネロと当たるのか。
できれば、もう少しプラントに成長の時間を与え、しっかりとカネロ対策をしてもらったところで当たってもらいたい、というのはわがままでしょうか。