もっと早く書くつもりが、時間が全然なくて遅くなってしまったLemino Boxingのプレビュー記事。
↓vol.1は小林vs高田、下町vs平野
下町vs平野は比較的実力差がハッキリしている、とも取れる試合ですが、平野は無策では挑まないでしょう。中間距離が得意な王者に対して、同じような距離が得意と思われる平野はどのように戦うのか。
そしてオープニングファイトの小林vs高田、これこそが日本のミニマム級ファイトであり、次に世界に行くのhどちらなのか、を決める戦いでもあります。重岡優大が王座返り咲きを目指し、そしてオスカー・コラーゾが王座統一を果たした今、ミニマム級の関門も非常に狭く、また、高い。非常に興味深い一戦です。
そしてその小林vs高田にも勝るとも劣らないのが王者同士のノンタイトル戦となる奈良井翼vs渡邊海。

60.0kg契約10回戦
奈良井翼(RK蒲田)14勝(10KO)2敗
vs
渡邊海(ライオンズ)13勝(7KO)1敗1分
日本スーパーフェザー級王者、奈良井翼。そしてWBOアジアパシフィック・スーパーフェザー級王者、渡邊海。
この戦いが王座統一戦ではない、ということに関してどのような理由があるのかは分かりませんが、そこを勘繰るのは無粋でしょう。
奈良井にとっても渡邊にとっても、これは非常にリスクのある試合であり、本当によくこの試合を実現したな、と思います。井上尚弥のアンダーカード、このような大きな興行でなければなかなか成り立つことのないマッチアップ。
高田勇仁もそうですが、とにかくライオンズジムの強気のマッチアップぶりは素晴らしく、大橋ジムと同様に「負けてもそれを糧に這い上がれば良い」という匂いがプンプンしているので非常に好きです。
前戦でアジアパシフィック王者となった渡邊は、非常に華のあるボクサーで、これまで幾度も驚くようなマッチアップを乗り越えて来ています。
2022年の全日本新人王決定戦はドローながらも優勢ということで獲得した渡邊は、その後3連続KO勝利。この中には「漢」中居龍(角海老宝石)戦も含まれていますが、このタイミングでの中井との一戦は正直時期尚早かと思っていました。その中井をなんと2R、素晴らしいカウンターショットでノックアウトした姿は、いまだに記憶に新しい。
その後英洸貴(カシミ)にスプリット判定で初黒星、しかしこれも敵地石川県に乗り込んでの試合だったのでまさに侠気が溢れています。
その後もユース王座戦でホープたちとの対決を経て、これまた厳しいかと思われたWBOアジアパシフィック王座決定戦で鈴木稔弘(志成)をなんと1RでTKO、見事アジア王座を初戴冠。
渡邊海というボクサーは、その厳しいマッチメイクとともにインパクトのあるノックアウト勝利を決め続けてきたボクサーであり、そのパフォーマンスは注目度と比例するのではないか、と思うほどです。
そして奈良井翼、こちらも倒しっぷり、ハードなマッチメイクにおいて引けをとっていません。
2019年にスーパーバンタム級でデビュー、新人王トーナメントの途中でウェイトが作れなくなりリタイア、その後は2階級あげて再度新人王トーナメントに挑みます。このトーナメントで奈良井は無類のパンチャーぶりを発揮し、全勝全KOで全日本新人王となります。
しかしその後のユース王座戦で亀田京之介にまさかの2R KO負け。これは非常に残念な敗北で、ハードパンチャーにありがちな打たれ脆さを露呈した試合でもあったと思います。
その後復帰戦をTKO勝利でクリアした奈良井は、日本王座に挑戦。当時の日本王者、坂晃典との倒し倒されの激闘の末6RTKO負け、非常に面白い試合ではありましたが坂にしても奈良井にしても非常に心配になる試合でもありました。
亀田戦、坂戦での敗北により、ディフェンスの強化を目論んだと思われる奈良井は、復帰から2戦を判定勝利。その後挑戦者決定戦を初回TKOで飾り、坂を破って王者となっていた原優奈(真正)に挑戦5RTKOで日本王者となりました。
初防衛戦は福井貫太(石田)を判定勝利で破っています。
いっときの危なっかしさから落ち着いたボクシングを見せるようになったと思われる奈良井。先に当てた者勝ち、というスタイルから、安定感のあるボクシングの変化はユーリ阿久井を思わせるような進化、その途中のように思います。
対して渡邊は非常に冷静なスタイルであり、印象的な倒し方のほとんどはカウンターによるもの。
奈良井が攻めて渡邊が狙う、という展開が考えられますが、この場合、自分の土俵に持って来れるのは渡邊ではないか、と思います。なので戦い方、先にどのようにアクションを起こすのか、また起こさないのか、に工夫が必要なのは奈良井の方ではなかろうか。
この辺りの奈良井の戦略に対し、渡邊がどうなるのか、まだ成長途中にあるであろう2人がどのように絡むのか、これは非常に楽しみな一戦です。
OPBF東洋太平洋・WBOアジアパシフィック・ウェルター級タイトルマッチ
佐々木尽(八王子中屋)18勝(17KO)1敗
vs
坂井祥紀(横浜光)29勝(15KO)14敗3分
武居由樹(大橋)が怪我により防衛戦をキャンセル、この試合がセミファイナルとなりました。
世界でも注目されるLemino Boxingのセミファイナル、ウェルター級の世界上位ランカーである佐々木尽の試合は多くの海外ボクシングファンの目に触れるのではないか、と思います。
なのでここはアピールのしどころ、というのが佐々木ではありますが、相手は坂井祥紀です。
坂井は非常に固いガードを持っており、2人は過去に多くのスパーリング経験があるということから、坂井が佐々木のパワーやタイミングにびっくりする、ということはなさそうです。そしてこの坂井が戦績通りのボクサーではない、ということを海外の解説者が知ってくれていれば良いのですが、果たしてこの戦いは海外のファンにどのように映るのか。
前戦で豊嶋亮太(帝拳)に敗れた坂井ですが、内容は互角というか私には坂井勝利に見えました。なのでもちろん、坂井祥紀はウェルター級の日本トップボクサーです。
それでもやはり勢いは佐々木にあるし、やはり2023年に佐々木が残したインパクト(豊嶋に初回TKO勝利、小原に3RTKO勝利)は非常に大きい。
必然的にこの試合は「佐々木は坂井をノックアウトできるのか」という見方にはなってしまうのかもしれませんが、坂井にも頑張ってほしい。
ともかく、佐々木がこの試合に勝つならばもう流石に戦う相手は日本にいません。どこか日本ではないところで戦い、インパクトのある勝利をいくつか残してからの世界挑戦が理想のように思いますが、佐々木の2025年は如何に。
【宣伝】
日本で手に入りにくいボクシング用品のセレクトショップやってます。
ぜひ覗いてみてください。