今、17階級のうちで最もスッキリしている階級はスーパーバンタム級で、絶対王者井上尚弥が君臨、ランキングを見渡してみてもおそらく負けは見えません。
ヘビー級もスッキリしている階級の一つで、オレクサンドル・ウシクがすべての強敵を打倒してしまったから、残るはライジングスターに託すのみ。
そんな中、フェザー級やスーパーライト級のように混沌とした階級もあり、このあたりの階級で最強は誰だ、と語るのは非常に面白いことです。
そして週末、暫定ながらも世界タイトルマッチを控えるスーパーウェルター級もそのような階級の一つ。
ヨエニス・テレスと戦うアバス・バラオウというボクサーについて私はほとんど知りませんでしたが、海外のファンの反応を見ると評価されているボクサーらしく、楽しみにしている、という声が多いように感じます。
ということで今回のブログは、スーパーウェルター級の世界戦線について。

個人的な推しは、バフラム・ムルタザリエフ
リングマガジンランキングでは5位に甘んじ、指名戦の厳格さでおなじみのIBF王者ながらも、なかなかリングに立つ機会を得られないバフラム・ムルタザリエフ(ロシア)。
チェチェン紛争の中で育った、という記事をどこかで読んだ覚えがありますから、我々には想像もつかないほどの出自です。
ムルタザリエフを知ったのは2024年4月で、ジャック・クルカイ(ドイツ)戦。この戦いはクルカイの地元であるドイツ開催であり、初防衛戦となったティム・チュー(オーストラリア)戦ももちろんチューのための試合だったわけですが、その2つの試合を見事なノックアウトで終わらせたムルタザリエフ、破格のパワーを持っているボクサーです。
超絶技巧を持っているわけでもなく、追い足も持っているわけでもないですから、もしかするとどこぞのボクサーにボックスアウトされてしまうかもしれません。
しかしそれを補ってあまりあるパワーを持つムルタザリエフは、とにかく膂力があり、タフでもあります。
チュー戦からもうすぐ1年、ここにきてようやく2度目の防衛戦が決まりそうです。相手はジョシュ・ケリー(イギリス)、これはIBFの指名戦として行われるようです。
本来はIBFの指名挑戦者はエリクソン・ルビン(アメリカ)でしたが、ルビンはバージル・オルティス(アメリカ)戦を選択。1位のルビンに代わって(2位は空位)、3位のケリーに白羽の矢がたった、ということです。
ムルタザリエフにとってはこのジョシュ・ケリーというボクサーは天敵とも言えるボクサーかもしれませんね。とにかくスキルがあり、パンチを外すのが得意なケリーは、さほどテクニック的には優れていないムルタザリエフを空転させることができるか。そしてムルタザリエフはとにかく強引にでもパンチを当て、勝利を手にすることができるか。これは興味深い戦いとなりそうです。
交わらないフンドラとオルティス
WBCの正規王者、セバスチャン・フンドラ(アメリカ)と暫定王者のバージル・オルティスJr.(アメリカ)。
結局この二人は交わることなく月日を重ね、暫定王者誕生からもう1年もの歳月が流れてしまいました。
前戦、ティム・チューを返り討ちにしたフンドラは、次は10月、キース・サーマン(アメリカ)戦です。3ヶ月に1度のスパンでリングに上がる、というのは非常に恵まれています。
そしてオルティスも10月にリングに上がる予定でおり、こちらはIBFの指名挑戦者、エリクソン・ルビン戦です。
ちなみにムルタザリエフはフンドラとやりたいと言い続けていた時期がありましたが無視され、そしてオルティスの方にはやりたい、と言っていないにも関わらずオスカー・デ・ラ・ホーヤが「バージルはムルタザリエフと戦うべきではない」と発言しており、告白してないのにフラれたみたいな状態になっています。ムルタザリエフ、全然モテませんね。
ともあれ、フンドラにしてもオルティスにしても独自路線を突き進んでいるイメージで、プロモーター間の壁が低くなったとて、PBCファイターであるフンドラと、GBP所属のバージル・オルティスJr.が交わることはまだ先になりそうです。
ブーツが来て、もっと若いプロスペクトが来た
更に同じく10月、おそらくフンドラやオルティス登場の1週間前(二人は10/18の別々の興行と伝えられています)、ジャロン「ブーツ」エニス(アメリカ)がスーパーウェルター級に来ます。
対戦相手はウイスマ・リマ(アンゴラ)、強いボクサーだと思いますが名はなく、ここはエニスの衝撃的な154デビューが期待されます。
かつて同じ時期に台頭し、比べられる事が多かったバージル・オルティスJr.とジャロン・エニス。いよいよ、というところでオルティスが難病を発症したことでこの2人は比較されなくなって、数年が経ちました。
いつかこの試合が実現するといいな、と思います。
そしてWBOの王者、ザンダー・ザヤス(プエルトリコ)はまだまだ未知数ではありますが、だからこそ今のうちに強敵との戦いが見たいボクサーです。
ティム・チューとの再戦を優先したがために、当時WBOの指名挑戦者だったザヤス戦を受けず、WBO王座を返上したセバスチャン・フンドラ。
この空位となった王座ををザヤスはホルヘ・ガルシア・ペレス(メキシコ)と争い、初のタイトル奪取。ブライアン・ノーマンJr.を抜いて、現役最年少世界王者となりました。
ザヤスの次戦はまだ噂も出ていませんが、王座戴冠が7月だったので、初防衛戦は今年中にやれるのか、年をまたぐのか、というところ。
評価の高いベテラン勢にもチャンスあり
個人的には実は一番期待していたのはティム・チューでした。村田諒太の上位互換のようにも見えるあのストロングスタイルは、井上岳志のフィジカルが全く通用しなかった、という現実を知り、世界の広さを感じたものでしたね。
しかしそんなチューもムルタザリエフに負け、フンドラに2度負け、その商品価値は著しく下がった、とみて間違いはないでしょう。ここからは苦難の道のりですが、ファンベースはしっかりとしているので、長谷川穂積のような大復活劇を期待したいところです。
その他にも、テレンス・クロフォード(アメリカ)、バージル・オルティスJr.に連敗も、大いに苦しめたことで評価が落ちなかった、むしろ上がったんじゃないかと思えるイスライル・マドリモフ(ウズベキスタン)や、同じくオルティスへの大善戦で敗れども株を上げたと言えるセルヒー・ボハチュク(ウクライナ)、もちろんエリクソン・ルビンだってオルティスを喰う可能性を持ったボクサーだと思います。
こう見ると非常に層は厚いですね。
ムルタザリエフは、IBFの指名挑戦試合をクリアした暁には、王座統一戦を望んでいます。ムルタザリエフ、そしてその陣営の力のみでは絶対に成立しないマッチアップですが、現在はトゥルキがいますから、サウジあたりで実現するかもしれません。
まずは週末のヨエニス・テレスのパフォーマンスを楽しみにしつつ、スーパーウェルター級「どう戦わば」を妄想してみるのも良いかもしれません。
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