本日はRING Ⅳ、「Night of Champions」。
クアドラプル・タイトルショットはサウジアラビア、リヤドで開催されます。
今回のブログは、この興行のうち、サム・ノークスvsアブドゥラ・メイソン、そしてバム・ロドリゲスvsプーマ・マルティネスの観戦記。
↓プレビュー

11/22(日本時間11/23)サウジアラビア
WBO世界ライト級王座決定戦
サム・ノークス(イギリス)17勝(15KO)無敗
vs
アブドゥラ・メイソン(アメリカ)19勝(17KO)無敗
無敗プロスペクト同士の世界王座決定戦。この文字列だけでも、この先のボクシング界を考えるとワクワクするものです。
スクリーンや光の演出はおそらく凝っているのでしょうが、ハコは大きいとは言えず、やはり寂しさの漂うリヤドの会場。結局リング再度には招待者らしき人たちが陣取っている分、アメリカのビッグマッチと比べるとその盛り上がりには大きく欠けますね。
さて、いずれにしろ、注目のゴング。
初回、低く構えてプレスをかけるノークス。メイソンも広いスタンスから一気に踏み込んで左ボディストレート。
序盤は身体能力とスピードにまさるメイソンにリードされるのは仕方のないであろうノークスですが、初回から早々にメイソンをロープに詰める場面をつくり、さらにメイソンが打ってくるところに右のフックをあわせる等、対応しています。
これはガードの上を叩きましたが、この同時打ちこそが対メイソンにおいて勝利をたぐり寄せられる作戦の一つでしょう。メイソンはこういう時に打たれてこれまでにもダウン経験があります。
2R、ノークスもジャブを多用し始めます。メイソンの左に対しては必ず右を返すを徹底、しかし変わらずメイソンは速く、ジャブが良いですね。
中盤、メイソンは変化をつけた右からまっすぐの左ストレートをヒット!ちょっと動きが止まったか、ノークスはその後メイソンの追撃を許しています。
しかし明らかなタフネスを持つノークスはそのダメージを誤魔かすと、自らも大きく踏み込んで右ストレートを届かせます。両者譲らない素晴らしいパフォーマンス、ノークスが奥手でボディを叩けば、メイソンも左のボディアッパーをリターン。
3R、ノークスが攻め込んできたところにメイソンのショートの左!これでノークスはダメージを被って後退!ちょっとダメージのありそうなノークスですが、ここはどっしりと踏ん張ってエスケープ、やっぱりノークスは近くでガチャガチャやりたいですね。
このラウンドで左目尻をカットしたノークス、開き直ってかとにかくメイソンに体を寄せていきます。嫌がる素振りを見せるメイソン、つまりはこのゼロ距離の戦いこそ、ノークスの勝機ということでしょう。
4R、メイソンは細かなコンビネーションを使い始めました。この回転力のあるコンビネーションはメイソンの武器の一つ。ノークスも頭から突っ込んで相手の腕を抱え込んでのショートパンチ、接近戦のダーティ寄りのテクニック。レフェリーは注意しません。
後半、体がぶつかったところで体勢を崩したメイソンにノークスは右をコネクト。やっぱりフィジカルはノークスか。パンチのアングル、セレクト、的確制はメイソンで、この後ボディアッパーを含めたコンビネーションをヒットしています。
5R、近い距離でのバチバチの打ち合い。DAZNで発表された非公式採点、今回はマイク・コッピンガー氏ですね。ここまではフルマークでメイソン。
但しメイソンも被弾は多いし、ことこの5Rにおいては幾度かメイソンはカウンターショットを喰らい、顔を跳ね上げられています。
しかし後半は強打をまとめて反撃したメイソン、このメイソンも気持ちが非常に強い!
6R、とはいえ、打ち合いは危険と判断したのはメイソン陣営にとって当たり前のこと。このラウンドに入ると比較的大きめに足を使い始めたメイソン、速いジャブ!
ストレートが活きる距離、がメイソンの距離、この距離で左ストレートを3連打。ノークスはちょっと突進力が衰えた、というか、メイソンにサイドにうまく回られているか。
7R、若干距離をとってスタートしたメイソンですが、このラウンドは中盤、ノークスに付き合ってしまいます。そうなるとやはりノークスの好打が当たり、ノークス側が湧きます。
もらい方が良いのか、もらう準備をしているのか、今日のメイソンは非常にタフで、ラウンド後半には強打で応戦。おそらく、元々打たれて脆いボクサーではなく、これまでのダウンはイケイケすぎて、反撃を想定していなかったために起こった、ということなのでしょう。
後半は力強い左を打ち込んでいくメイソン、ノークスは体全体を使って拳を打ち込んでいきますが、ダメージも疲労も溜まってきたかもしれません。
8R、このラウンドはノークスが近づく事が難しいラウンドで、中間距離からメイソンの左のボディショットが炸裂。これは手応えがあるのか、このパンチを幾度か打っていますね。
このボディアッパーを打ち続けると、ノークスが後退。ちょっとダメージあるか、メイソンのボディに対してちょっと体が折られています。
9Rは序盤からメイソンが打ち合いにシフト。近い距離での奥手のアッパーはタイミングがよく、ノークスはなかなかここに対応できず。体を預けながらもパンチを繰り出していくノークス、ここは自分の距離だと言わんばかりの巧い戦い方ですが、ここに付き合ってくれるメイソンを圧倒することはできません。
10R、大きく足を使っては鋭く踏み込むメイソン、ノークスは突進するも突破口を見いだせず。ノークスにつられて、なのか、メイソンもいつもよりも力を込めて打ち込んでいるようで、いつもの高速コンビネーションは出ていません。
バチバチの打ち合いから中盤、メイソンのボディでノークスが後退!頭を低くして踏ん張るノークス、今度は顔面への左ストレートを浴び、さらにまたボディショットで後退。
メイソンはKOチャンス!ですがここもなんとかサバイブを試みるノークス、足は揃った状態ながらもメイソンも力任せになってしまい、倒しきれず。
11R、ジャブで攻め入るノークスですが、ボディへの警戒が強く、思い切った攻撃はできず。近い距離ではがっちりとメイソンの腕をホールド、自分のターンでの波状攻撃は良いですが、これはメイソンが近い距離を保ったままにしてくれているから、という感が否めません。
ちょっとメイソンはノークスに付き合いすぎかもしれません。
ラストラウンドは下がりながらのカウンターに切り替えたメイソン、ですがやはり中盤からは近い距離で打ち合います。被弾もあるからでしょう、Fanzoneの採点ではここまでほぼ互角。コッピンガー氏の採点ではメイソンがリードを広げている、という状態ですね。
メイソンは明らかにノークスのパンチに耐えられており、ノークスは明らかなダメージを負っているこの状況では、メイソンの勝利は固いはず。
最後まで緩める事なく打ち合った両者、ラストラウンドのゴングを聞きました。
若き二人のファイターは、真正面からフルラウンド戦い抜きました。素晴らしいファイトですね。ただ、真正面から正直すぎる戦いだったがゆえに、それぞれに被弾が多かったイメージで、特にアブドゥラ・メイソンに至っては気負いがあった気さえします。
判定は、117-111、115-113×2、3-0の判定でアブドゥラ・メイソン。
判定が読み上げられた際にすでにノークスは拍手。潔くて良い。
思った以上にポイント差は競っていたイメージで、これはメイソンの被弾によるところは大きいでしょう。
しかしこの試合に気負ってしまうのはある種致し方のないことで、わずか21歳、ここからビッグなチャンピオンになってくれることを期待しましょう。
WBA・WBC・WBO世界スーパーフライ級王座統一戦
ジェシー「バム」ロドリゲス(アメリカ)22勝(15KO)無敗
vs
フェルナンド「プーマ」マルティネス(アルゼンチン)18勝(9KO)無敗
さて、続いて登場はジェシー・ロドリゲス。対戦相手は日本でもお馴染みのフェルナンド・マルティネスです。
バムの来日を心待ちにする我々日本のボクシングファンは、ここでしっかりとプーマに勝ってもらいたいところです。
初回のゴング。
アルゼンチンスタイルのプーマはまずグイグイとプレス。バムはそれを足で捌きジャブ。プーマのジャブに対してサウスポースタンスから速い右フックをリターン、非常にリラックスしているように見えます。
1分が過ぎた頃、早々にエンジンの回転数を上げたプーマ、右のボディを当てるとバムはバランスを崩してマットにグローブをタッチ!しかしダウン判定はありません。足でも絡んだのでしょうか、それでもスリップのボディランゲージもなく、レフェリーは全く無視、というか気づいていないのか。
いずれにしろパワフルな連打を放っていくプーマ、ちょっとバムはこのチャージに困っている感じか。
プーマの突進をサイドにかわして前にころんだプーマ、そこから立ち上がってからは得意の素早いサイドステップからの右フックをヒット。
2R、ジャブを突いて丁寧な戦い方のバムに対して、プーマはフルスイング。完全に体が回転してしまうようなパワフルな連打を繰り出しますが、バムのボディムーブ、ステップ、ブロッキングに対して効果的ではありません。
バムはディフェンスもすごい。プーマの体全体を使ったスイングに対してもさほど軸を乱されることなく、逆にコンビネーションでプーマの軸をぶらしています。
3R、苛烈な攻めを見せるプーマ、素早いサイドへ回るバム。バムは非常にスムーズで、流れるようなサイドステップからコンビネーションの強弱を使い分け、ブロッキングしては完全に先読み、ガードの場所にプーマが打ち込むみたいな状況をつくりだしています。
パワーもバムが上なのか、バムの打ち込みに対してプーマのリターンは若干遅れてきています。
終盤にも4パンチコンビネーションを打ち込んだバム、すでに圧倒しているように見えます。
4R、プーマはもうちょっと待った方が良いかもしれません。当たっているパンチのほとんど、いやすべては同時打ちのタイミングで、自ら攻めてはすでに見切られている気がします。
バムの回転力は回を重ねるごとに増してきており、プーマの顔面がよく左右へ振られています。
5R、バムがプレスをかけてプーマが下がり、下がったところから勢いよく踏み込むプーマ。しかしこのタイミングは完全に学習されており、ここでバムのカウンターが待っています。
この下がった後のプーマのリターン、というのは相手にとって嫌なことなのですが、これがバムに通じません。
6R、力を込めて左右を振るうプーマ、これが全く通じません。恐るべしバム、プーマの強打をすべて無効化しつつ、アングルを変えつつ自らのパンチを打ち込んでいます。
近い距離からも絶妙なバックステップ、というかやや左斜後方に移動することで距離をつくり、そこにパンチを打ち込む。距離感にも非常に優れています。
7R、プーマの闘志は衰えていませんが、完全にバムの手のひらの上。プレスをかけるのはバムの方で、元々バランスの良い方ではありませんが大きくバランスを崩され、自らのフルスイングでもバランスを崩しています。
8R、フィジカルでも押し返されてしまうプーマ、ここまで差があるのか、ということに驚きです。完璧なゲームメイクを遂行するバムは盤石で、後はこのタフなプーマをフィニッシュまで持っていけるか、という状態まできています。
ここでも雑にはならないバム、丁寧なヘッドムーブとブロッキングでプーマのフルスイングを無効化すると、まっすぐのストレートとボディ。これはもはやプーマにとって絶望に近い。
9R、バムはフィニッシュを狙うか、プレスを強めてやや大きなパンチを打ち始めています。これはもちろん両刃、こうなるとプーマにもチャンスが出てきます。
ただ、これはプーマにもう逆転の力がないと判断したのかもしれません。後半、おそらくダメージから足に力が入らなくなってきたプーマは、バムの左がかすめたあとぐらり。
このあともハートを見せるプーマではありますが、終わりは近いかもしれません。
10R、パンチは当たらず、体を寄せていくことしかできないプーマ、強引に攻め込んだところで右をかわされ、バムの左カウンターショット!
仰向けに倒れたプーマ、レフェリーはテンカウント!!!
ジェシー・ロドリゲス、10RKO勝利!3団体統一!!
圧倒的でした、ジェシー・ロドリゲス。
エネルギッシュなファイターであるフェルナンド・マルティネスを相手に被弾を最小限に抑え、素晴らしいディフェンステクニックを見せつつも手数でもフィジカルでも完全に上回り、想像以上のフィニッシュシーンを見せました。
これまでいくつも「これがバムのベストバウトか」という試合を更新してきましたが、今回もまた、自身の最高のパフォーマンスを更新したのではないか、という思いです。
これはやばい、バム・ロドリゲス。
未来のPFPに偽りなし、今年はとてつもないビッグイヤーになりましたね。
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